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愛欲

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第五章

「そういうことも考えるとな」
「衰えたか」
「完全にな、本当に中学の時はな」
「やりたくて仕方なかったよな、御前」
「それがだよ」
 不惑に近付いた今はというと。
「ここまで弱くなるなんてな」
「そんなことも思わなかったか」
「ずっとだと思ってたよ」
 その性欲が、というのだ。
「まさかこんなことになるなんてな」
「御前もそうなんだな」
「ああ、俺もな」
 かく言う御門もだった、彼も焼酎を飲みつつ苦笑いで言う。仕事帰りのそれも家庭を持っているサラリーマン独特の雰囲気を醸し出しながら。
「最近な」
「さっぱりになったか」
「御前と同じで二週間に一回だな」
「そしてその一回でもな」
「二回いけたらよくてな」
「三回がやっとだな」
「かみさんは嫌いじゃないのにな」
 これは聡も同じだ、二人共それぞれの妻は愛しているのだ。
 だが、だ。その性欲はなのだ。
「さっぱりなんだよ」
「衰えたな、それはまた」
「本当にそう思うぜ」
 聡は達観している顔で御門に言った。
「俺もな」
「お互い歳は取りたくないな」
「折角結婚してもな」
「すぐに衰えるかな」
「十代の時は結婚出来なくてな」
 それでなのだ。
「結婚してちょっとしたら衰えるのか」
「人生は無常っていうけれどな」
「本当にそう思うぜ」
 こうしたことを話しながらだ、二人は背中に哀愁を漂わせて焼き鳥で焼酎を飲みだ、その中でこうも言った。
「大蒜も頼むか」
「焼いたあれだよな」
「ああ、それだよ」
 まさにそれをとだ、聡は御門に言った。
「頼むか?」
「夜の復活の為にな」
「食って頑張ろうぜ」
「そうだな」
 御門も聡のその言葉に頷いてだった、そのうえで。
 実際に大蒜も頼んだ、あの頃に戻りたい為に。


愛欲   完


                                 2014・8・25 
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