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ホモセクシャル

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第五章

「今では差別主義者こそが悪だったとわかっています」
「日系人を収容所に送り込み差別していた人達こそが」
「日系人の人達は戦場でそれを証明してくれました」
「差別主義者達は戦場に出なかった人も多かったので」
 レイシストとはそうしたものだ、口では醜い糾弾をするが自分は戦おうとはしない。そうした卑劣な者達なのだ。
「それで、ですね」
「この醜い問題も乗り越えようとしています」
「そして、ですね」
「この問題もです」
 同性愛の問題も、というのだ。
「どうあるかですね」
「そのことですね」
「私は今も考えています」
 それが顔に出ている、はっきりと。
「キリスト教の教義では間違っています」
「それは絶対ですね」
「しかし合衆国は思想信条の自由を認めていて」
「そして、ですね」
「地獄に落ちる罪でも神は救いを与えてくれます」 
 神曲からだ、今度の言葉は。
「ですから」
「同性愛はですね」
「何があろうと否定するものなのか」
 それは、というのだった。
「私は今真剣に悩んでいます」
「では、です。牧師様の前にそうした方々が来られればどうされますか」
「同性愛の二人がですか」
「その時はその方々にどう言われますか」
「わかりません」
 これしかなかった、今の彼の返事は。
「その時にならなければ」
「そうですか」
「その時の私は正しい言葉を言えるのか」
 正しい考えに至ってだ。
「自信がありません」
「どういったものが正しい考えなのか」
「それもわかりません」
 全く、という口調での言葉だった。
「答えが見付かりません」
「キリスト教の考えでは出ますが」
「しかし恋愛にルールはないという言葉もあり」
「そして思想信条の自由もですね」
「合衆国においてこのことは絶対です」
 こう言うのだった。
「ですから」
「答えが」
「若し私が神に仕えず」
「合衆国市民でなければ」
「これ程悩まず考えなかったでしょう」
 こうナンシーに話す。
「答えはより簡単に出ていました」
「是にしても否にしても」
「出ていました」
 その答えが、というのだ。
「そうなっていました」
「ですが牧師であり合衆国市民があるが故に」
「答えは出ません」
 その立場故に、というのである。
「どうしても、しかし」
「それでもですね」
「若しシスターが仰る様に愛し合う二人が出て来た時には」
「その時にはですね」
「私は答えを出さればなりません」
 こう言うのだった。
「必ず」
「苦しいですね」
「今すぐにでもそうした人達が来られるかも知れませんが」
 その時には、というのだ。ジョーンズ自身も。
「決めなくてはなりません」
「絶対に」
「はい、絶対に」
 こうナンシーに言うのだった、そして彼はまだ考え悩み続けた。いかし答えは容易には出ずそのままであった。
 ジョーンズの同性愛について考える日々が続いた、彼は必ず決断を出す日が来ることがわかっていてそのことに怯えていた、だが。
 そのことを彼自身はどうすることも出来なかった、そして遂にだった。
 礼拝堂で掃除をしているジョーンズのところにだ、ナンシーが来てこう言った。 
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