バンドマンは一途
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第一章
バンドマンは一途
ロックは最早どの国にもある、それはニュージーランドでも同じだ。
チャーリー=オズボーンはオークランドで漁師をしながらバンドをやっている、その音楽のジャンルがロックだ。
その彼がだ、バンド仲間達とライブの後の打ち上げのパブにおいてビールを飲みながらこう言うのだった。
「彼女欲しいな」
「ああ、もう二年か」
「二年になるよな」
メンバーもビールを飲みつつ彼に応える。
「御前が彼女と別れてな」
「それから二年だよな」
「ったく、どうなんだよ」
苦い顔でだ、チャーリーはその日に焼けた顔で言うのだった。コーカロイドの顔であるが日に焼けていてしかも髪と目が黒いのでアジア系に似た感じにも見える。背は高く漁師の仕事で身体は結構引き締まっている。
その彼がだ、スペアリブでビールを飲みつつこう言うのだ。
「何でオーストラリアに行くんだよ」
「だから大学はだろ」
「あっちに行きたかったんだろ」
「それでオーストラリアに行ってな」
「御前ともな」
「まあ振られたとかじゃないけれどな」
振ってでもない、チャーリーが。
「そうしたことじゃないけれどな」
「ああ、それでもな」
「あの娘と別れたことは事実だな」
「そのは事実だな」
「紛れもなく」
「隣の国だけれどな」
オーストラリアはニュージーランドの隣国だ、それで付き合いは深い。ついでに言えば同じ英語を使っていて言葉も通じる。
しかしだ、それでもなのだ。
「海が間にあるからな」
「鮫がこれでもかっているな」
「海蛇も未確認動物もいるな」
未確認動物の噂も多い海である、その海は。
「あの海が間にあるからな」
「行き来はな」
「中々厄介だよ」
「あそこは」
「だから会えないからな」
それで、とだ。チャーリーはビールの苦さとは別の苦さで顔を顰めさせてそのうえで仲間達に言うのだった。
「自然消滅だよ」
「御前はハイスクール出てすぐに仕事はじめたからな」
「今の仕事な」
「魚獲ってな」
「それで食ってるからな」
「ああ、俺は頭が悪いからな」
つまり学校の成績が悪かったからというのだ。
「大学なんてな」
「想像もできねえ」
「行くこともだよな」
「そんなの考えもしなかったからな」
それで、というのだ。
「だから就職してな」
「バンドもしてるんだな」
「そういうことだな」
「そうだよ、俺は漁師兼ロッカーなんだよ」
それが彼だというのだ。
「このオークランドのな」
「オークランドから出ずにか」
「このままやっていくんだな」
「オークランドの漁師なのにオークランドを離れてどうするんだよ」
笑ってこうも言うのだった。
「そうだろ、だからな」
「それでか」
「あの娘ともか」
「別れるしかなかったか」
「そう言うんだな」
「ああ、エミーのことは仕方ないんだよ」
彼女の名前も出すのだった。
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