インフィニット・ストラトス ―蒼炎の大鴉―
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
特訓
日曜日、キャノンボール・ファストが近付く中、俺と兼次は第一アリーナに来ていた。
俺と兼次は確信していた。キャノンボール・ファストの時、ファントムタスクが何らかの行動を起こすことを
「兼次、俺を殺す気で来い」
「最初からそのつもりだ。お前こそ手加減すんじゃねえぞ」
「ああ」
対ファントムタスクを想定した模擬戦。やることはシンプル、相手を殺す気で戦う。ただそれだけ
お互いがスラスターを吹かし、戦闘が始まる。
超音速で動き回りながらビームライフルを向け、予測軌道上にビームを1発。
兼次は肩部スラスターの噴射で躱し、反撃としてビームライフルを撃ってきた。
それを腰部スラスターの逆噴射で回避しながらファンネルを発進する。2基の大型ファンネルは兼次にまとわりつくように接近しながらビームの散弾を浴びせていく。
だが簡単に被弾を許す兼次ではなく、細かいスラスターの噴射で躱しながら、避けきれないものはシールドで防いでいく。そしてそれをしながらもこちらに反撃してくる。
やはり兼次は強い。2年間の操縦経験があるからこそ今は互角だがいずれすぐに抜かれる。
交錯するビーム、いつくもの弾痕が穿たれるアリーナの床、飛び回る2機のIS。その戦闘は常人に理解できるものではないだろう。
そろそろキツい。被弾が増えはじめてきた。
なら…全開しかない。
NEWTYPE-INJECTION-TRACE-REFORMED-OLDTYPE
関節部や胸部ダクトから蒼炎が吹き出し、バイザーが赤く染まる。
Side兼次
和也…ナイトロを使ったか。
ただでさえ鋭かったデルタカイの機動がさらに鋭敏なものになる。
機動性はさらに上昇し、ビームの出力も上がっている。
モンド・グロッソの織斑先生の機動さえもこいつに比べたらまだ生易しいとさえ思える。
俺はあとどれくらい強くなればこいつに追い付けるんだ…?こいつは性能で劣ってる機体で俺と互角なんだぞ。
でも…負けられないな。
メガシールドをバックパックに装着し、第2形態になる。これならなんとかなるはずだ。
ファンネルラックからビームサーベルを取り出しビーム刃を発振、さらに右腕ガトリングと左腕予備ビームサーベルからもビーム刃を発振、腰部増加装甲の隠し腕も展開しビーム刃を発振、計6本の青いビーム刃をドライブした状態でデルタカイに向かって最大でスラスターを噴射、彼我の距離を一気に詰める。
むろん迎撃は来る。デルタカイはシールドの武装をビームガトリングガンに換装、ビームライフルもバースト射撃ができるものに即座に変更し多量のビームを浴びせながら距離をとろうとする。
俺はそれをファンネルバリアで防ぎながら接近した。
そして遂に追い付いた。
腕部4本のビーム刃で切りかかる。
だがここで和也は予想外の動きをした。
Side和也
流石に後方への噴射では最高速は出ないか。
少しずつだが兼次は距離を詰めてきている。
迎撃のビームはファンネルバリアで防がれ牽制にもならない。
そして格闘戦の間合いまで詰めた兼次は4本のビームサーベルで切りかかってくる。
一か八かだがやる価値はある。
腰部スラスターを斜め45°で噴射、Hi-νの頭上をすり抜けるように回避した。
振られた防ぎビーム刃はこちらのビームライフルとシールドの先端を切り裂いたもののデルタカイ本体は無傷でやり過ごした。
そして無防備を晒す背面。
俺はシールドをパージ、ライフルを換装し、背中にビームを撃ち込む。
ビームライフルから吐き出されたメガ粒子はバックパックに取り付けられたメガシールドを破壊、さらにバックパック本体に損傷を与えメインスラスターとスタビライザーを粉砕した。
機動性が少しは落ちたか。最も、Hi-νにはまだ臀部と脛部のスラスターが残っているためまだ普通に動ける。
シールドエネルギーもまだ十分残っているだろう。戦いはまだ続く。
Side兼次
斬撃が躱され、その一瞬を突いた正確な射撃によりバックパックに甚大な損傷、機動性低下。流石だよ、和也。
おそらく和也は次に移行している。機動性の落ちた機体でどこまでやれる?
だが幸いなことにファンネルバリアとして展開していたファンネルは6基とも健在。こいつでやれるか?
肩部スラスターを展開し、右に吹かせながらファンネルをデルタカイに向けて機動させる。
さらにサーベルを格納しビームライフルを展開、バーストモードに変更しビームを放つ。
いくらデルタカイでもこれなら少しずつだが削れる。そう確信した。
Side和也
兼次のやつ、作戦を変えたか。
接近戦を挑んできた兼次は今度はビームライフルで引き撃ちをしながらファンネルで攻撃するという戦法にシフトした。
ばら撒かれるビームがそれを証明していた。おそらくビームライフルは完全な牽制、あくまで本命はファンネルだ。
さて、どう動くのが一番いい…?
ここは…ファンネルから落とすべきか。
プロトフィンファンネルを展開、付きまとうファンネルにビームの散弾を浴びせる。
破壊できたのは2基、まだ4基残っている。
ビームガトリングガンを単体でコール、両手に装備しダブルトリガーでビームをばら撒き残りを全て落とす。
これでこいつにの残されたのはビームライフルとハイパーメガライフル、それにビームサーベルと右腕ガトリング。内この距離で有効なのは2挺のライフルのみ。
これで決着をつけるぞ。
ロングメガバスターとビームライフルに換装、スラスターを最大で噴射しながらビームと実弾を放つ。
むろん大半は躱される。それでもいくらかは直撃していく。
弾は装甲を穿っていく。それでもあいつは反撃を止めない。
だが…信念だけでは勝てんさ。
胸部に命中したロングメガバスターの高出力ビームがHi-νにとどめをさした。
なんとか勝てたか。
ナイトロの蒼炎が掻き消え、バイザーが元の緑に戻る。
俺はアリーナのピットに戻る。そこには楯無さんと簪がいた。
「見てたのか」
「うん」
簪が答える。
「ギリギリの戦いだった。今回は勝てた。だが次は勝てるとは限らない」
「……」
「……」
「まだ…強くなる必要がある。でなければ…ファントムタスクから会社を…大切な人を守れない」
「……」
「……」
俺はアリーナをあとにする。流石に疲れた。
今の俺は…どこまで強化されている…?
そして、どこまで強化すればいい?
Side兼次
負けた…か。
大半の武装を失い、装甲もズタボロ。完膚なきまで叩きのめされた状態だ。
あいつに追い付くには、あとどれほど強くなればいいんだ…?
ページ上へ戻る