魔法科高校~黒衣の人間主神~
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九校戦編〈上〉
美月サイド×神霊魔法と水晶眼
発足式が終わった後からは、校内は九校戦に向けた準備が行われていた。俺は選手として出るし、深雪達もそれぞれの種目に分かれてから練習を行っていた。出場種目も決まってからは、毎日閉門時間ギリギリまで練習したり使う予定の競技用デバイスを数分で調整出来る事は人間業ではないと言っていた。あとあの時見せたシステムと言うのは架空のシステムで、本当は数分で済ませるのでは面白くないと烈=九島老師が言ってたと言ったらとても驚いていた。あれがただの幻術で精神干渉系統のを、俺と護衛達以外は機器の中に入ったと思わせるという事をしたと言ってから本来の技量を見せたら早すぎて何も見えないと言われた。
「まあキーボード打ちは、ゼロが補佐してくれるから数分で終わらせるからな」
「それが一番凄いと思ったんだよね~」
「一真さんは魔法のアレンジ方法もかなり知っているし、昨日とは違っているような気がする。無駄なところを一切無くしたところだから、使いやすくなった気がする」
とまあこんな感じで俺達は屋外グラウンドで、それぞれを補佐する蒼太と沙紀に俺が考えたトレーニングメニューでそれぞれ鍛えている。一方美月は一人俺達とエリカにレオを待っていた。二人とも運動部所属なので、色々と下働きを仰せつかっているようだ。文科系クラブは美月だけなので、いつも帰る時は待ってもらっている。九校戦発足式の時は美月にとっては、ドキドキものだった。席は自由、と言っても一科生と二科生は前と後ろという暗黙のルールを踏み倒すには大きな勇気が必要であった。美月だけでは到底無理だったがエリカがいなければ、他のクラスメイトが一緒でも到底無理。引っ込み思案という自覚があるだけで余計友人が眩しくて、また羨ましく思えてしまう。
「(でもエリカちゃんは何故あんなに一所懸命だったのかな・・・・・?)」
美月自身は、エリカに引っ張られての行動だった。彼女自身は一真を応援したいという気持ちは美月にも強かったが、後ろの方で拍手しているだけで自分なら満足だったと、あの時の事を振り返って、美月はそう思ったがそう考えていた事が、全て一真には聞かれているという事は知らない。心の声が聞こえてきたから、俺が聞きたいからそうしている訳ではない。エリカは愉快犯的なところがあるので、一科生のエリート意識を逆撫でしてやりたいという動機もあったと思うが二科生で一年生が蒼い翼特別推薦枠で選ばれた一真がいないはずだったところに現れたのはとても驚いた。全校生徒全員が驚愕であり、一科の逆恨みしようとしていた生徒は風紀委員に拘束されていた。面倒事は首に突っ込むのは好きなエリカでも、面倒事を自分から積極的に企図する方ではないと美月は見ている。自分達だけならともかく、他のクラスメイトまで動員した熱心さは、単なる悪戯心だけでは説明できない気がする。
「(やっぱりエリカちゃんって、一真さんの事・・・・なの、かな・・・・・?)」
・・・・の部分は俺でも理解できる部分だが、エリカと一番仲が良いのはレオでもあるし定期試験で理論三位取った吉田ともどこかしらの縁がありそうだ。一真に対するエリカの感情は恋愛ではなく、ライバル心という感じに思えたのかもしれない。エリカが剣術が得意なのは知っているがその上が一真だからだ、一年で一番強いのは権限持ちの一真と深雪だろう。とそう思ったら何かを感じ取った美月だった、何らかの波動を感じ取ったので思い切ってメガネを取ってみた。美月のメガネのレンズはオーラ・カット・コーティング・レンズという、度の入っていない特殊な眼鏡で、霊子放射光過敏症を抑えているらしいがそれを取って感じた波動の方を見た。そしたら色の洪水が押し寄せて来たと思えば視界に様々な色調の光が溢れるが、目を痛めつける刺激で少しの間耐えたのだった。
「今の霊子は?とても眩しいけど、あっちは実験棟かな。気になるから行ってみよう」
まだ一真やエリカ達もまだ九校戦に向けて働いているので、まだまだ暇になるので美月は霊子の波動を感じた方向に行ってみた。俺は精霊によって導かれて行くので、指導を蒼太と沙紀に任せてから俺は実験棟に向かった。今は学内だし、自分で守れるくらいだからと指示しといて深雪達の指導を頼んだ。そしたら外で待っているはずの美月が実験棟に向かったのを見た俺は、精霊に事情を聞いた俺は気配を消してから美月を尾行したのだった。ついでにレオやエリカが待ち合わせ場所に来ているを見た俺は、美月を呼び出そうとしてついて行った。
美月はメガネを外したまま、波動があった方向へと向かっていた。美月にとってメガネを外す行為は、暗室からいきなり電気をつけた状態となるくらい眩しく感じる。見えないようにしてたのが見えるというのは、自分でもコントロール出来ない感覚がもたらす過剰情報に処理する視覚神経と脳が悲鳴をあげる。普通の人間なら意識を失う状態となるような、情報量の暴虐も美月にとっては生まれた時から付き合って来た「もう一つの世界」と認識されている。人の目はしばらく待てば慣れるが、強い光に適応した瞳やメガネのレンズでカット出来る事もあるが21世紀半ばから視力矯正治療が普及し近視は過去のものになりつつある。だから近視というのは死語なのかもしれない。美月も二~三回瞬きをしたら普通の魔法師が見ている何十倍のサイオン光と、並みの魔法師では色を見分ける事が難しいプシオン光に目を馴染ませた。実験棟の中に入ったら外の熱気とは違う何かが漂っていた。
「さっきの波動はこっちから来たよね、それにさっきは外にいたのにこの冷気は魔法?」
歩いていると、美月は理性は引き返せという感じだったが今までで一番強い波動を感じたので好奇心で行ってみたのだった。異常があれば教師や上級生が気付くはずだが、魔法科高校だから普通科学校よりも怪談話は向かない方だ。警報も出されていないから、美月の感じている異変は何らかの魔法が発動している現象なのか現代魔法では検知しない本物の怪奇現象か。ゆっくりではあるが、前へ前へ進んでいく美月を尾行している俺であった。導かれると何らかの匂いを感じた。
「この香りは、魔法薬学の実験で嗅いだ事がある匂いだ」
この匂いは鎮静効果を持つ複数の香水をブレンドした香りで、美月がここまで来たのは波動は薬学実験室へと続いていた。異常な霊子放射光は、生徒の誰かが実験をしているからなのか、怪奇現象ではないと美月も理解できた。ホッと一息ついたが、他人の魔法実験を行っている場合は招かれず立ち入ってはならないというのは、魔法実験の実習で最初に教わる注意事項である。発動中の魔法と招かれざる闖入者の魔法演算領域の干渉により、思わぬ魔法暴走が生じる危険性があるからだ。特に未熟な魔法師か術者の心を乱す行為をすると大きな危険があるからだ。
「誰かが魔法実験しているから、さっきのような波動があったのかな?」
美月の目の前には、扉の上に薬学実験室と書かれていたが閉ざされた扉を静かに開けたのだった。物音を立てないように見たら、思わず驚いてしまうところだったのを呑み込んで見たら実験室の中では光の球が見えたのだった。空中を踊り回っていたが、一つ一つの光は「力」があり「意思」があるのを感じた。自然界のエネルギーの分布は均質化されてなく、一方でもなく散ったり集まったり絶えず流動している事を美月は「見て」知っていた。泡となり漂う姿は見た事があると美月は思った。
「(あれはもしかして精霊・・・・?)」
あれが精霊というのだろうかと思ったが、その精霊を使役しているように見えた術者が見えた瞬間に呟いた。
「吉田君・・・・・?」
警戒心忘れてそう呟いたが、名前を呼ばれた方は驚きながらも美月の方向を向いた。ここは誰も来ないはずの場所で、誰も見ていないはずの「術」を見られた方としては。
「誰だ!」
条件反射に等しい一言だった。そこに込められた反射的な怒りに「光」たちの「意思」が反応した。美月が悲鳴をあげて押し寄せる光の球に目を閉じた。一方俺は美月の近くにいたが、術者が見る精霊が美月に攻撃しそうにしていたので俺はすぐに無効化の壁を美月の前で張って無効化した。その無効化という突風で美月はしゃがみ込む。
「一真さん・・・・」
瞼を開けるとそこには恐らく無効化の力で守ってくれたと感じた美月がそう呟いた後に、俺は前に進んだのだった。そして両手を上げるのだった。
「・・・・落ち着け幹比古。今ここでお前とやり合うつもりはないから、その殺気を閉じろ」
俺は何も持っていないという証拠で、両手を挙げる。それは魔法師じゃなくとも共通する事だったが、戦意がない証となる。幹比古がハッとした時に俺的には殺気という風が無くなった事で俺が見える精霊たちが、鎮静させる風をこの部屋中に満たしたお陰でスッカリと落ち着いていた幹比古と美月だった。
「・・・・すまない、一真。僕もそんなつもりじゃなかったけど、この風はいったい?」
その姿は居場所をなくした子供のようであったが、美月は立ち上がって先ほど見えたのではない風で安心するのだった。
「これについては後で教えるが、お前も気にするな。元はといえば術者の心を乱した美月が悪い、まあ名前を呼ばれただけで心を乱す事はまだまだ未熟という証拠だな」
「ふえっ?私ですか!?」
「まあ半分はな、でもまあ術者の心がすぐ乱れた幹比古も悪いと思う。声をかけられたくらいで、乱すようじゃ精霊は使役してくれないぞ?」
優れた術者は声をかけられたくらいで、心を乱す事はない。まあ俺もそうだが、俺の最後の言葉で幹比古が反応したのだった。
「精霊を使役って、一真は精霊が見えるのか!『正確に言うと精霊魔法系のではないがな、俺の場合は。そっちでは違う言い方なんだろう?』一真の言う通り精霊魔法の事を家では天神地祇の教義に従って神祇魔法と呼んでいるけどね」
術者が関わる言葉については、しっかり自己主張していたけど。精霊魔法と俺がやる精霊は違う事だ。精霊魔法は古式魔法の一種。一般に精霊と呼ばれる独立情報体を介してエイドスに干渉する魔法の事を魔法学では広く「精霊魔法」と分類する。精霊の事をSB(Spiritual Being)と略す事もあるけど、学問的には通常「精霊」と呼ばれているが、俺の場合は直接精霊と会話する事も可能だし、基本元素である炎、風、地、水の四つの精霊王と会話も出来るし、それを攻撃に回す事が出来る。四大精霊達の力を借りて使う事を俺らでは精霊術師と呼んでいる。俺としてはエレメンツ使いでもあるからか、普通に使える事もあるが精霊や精霊王と話したりする事は俺ぐらいだろうな。
「俺は幹比古のような精霊魔法を使う術者ではないが、エレメンツ使いを言えば分かるかな?俺や蒼い翼関連の者達は、精霊術者とも言うが精霊魔法を使う者と精霊術者では全く違う。それにここら辺には人払いの結界が張ってあるのを、風の精霊が教えてくれた。俺の掌に風が竜巻のように舞っているのが、俺流で言う精霊だ。幹比古は人払いの結界内に踏み込んで来られたらさすがの俺でも驚くさ」
「なるほどね、精霊は魔法の者と違う者としか知られてないけど一真はその一人だったとは。だから精霊が使役していると見えたのか、それに術についても風の精霊で探索させるなんて・・・・。君は色々な面で非常識なんだね、それか僕の理解を超えているのかもしれない。精霊魔法以外で精霊を使役している何て誰も思わないさ」
「俺は周辺からは劣等生や優等生ではなく、規格外だと言われる事が多い。風を使った飛行をしたり、水を使ってから凍らせる事も出来る。まあいくら見られたくないとはいえ、学校の実験棟に人払いの結界を張っておく方が非常識だと俺は思うが?」
「はははは、今更だけど違いないね」
俺と幹比古の笑いで張りつめた空気が、俺の鎮静する風によってこの部屋の中にはすっかり冷静となった幹比古と美月がいたけどね。
「今のは喚起魔法か?それと俺がやった風は浄化の風と言ってな、蒼い風とも言うが不運を祓う事も出来るし、悪霊とかも祓う事が可能だ」
「浄化の風!聞いた事あるけど、誰がやっているのかまでは知らなかったよ。まあ隠しても仕方がないけど、水精を使って喚起魔法の練習をしていた」
俺の問いに相当驚いていたけど香木を焼べていた卓上炉を片付けながら幹比古は答えた。美月は幹比古の隣で、灰の落ちた机に雑巾をかけようとしていた。幹比古は当然遠慮したが、生真面目な美月はこういう所は頑固なとこだった。だが俺の水術と風術の組み合わせで水の竜巻で机下にあったのが、あっという間に消滅したように見えた二人とも。
「水精か・・・・俺は精霊魔法も知識としては知っているし、俺的には水の精霊というよりプシオンの塊しか見えなかった。俺的に言うとこれが水の精霊と言うが、美月にはどう見えた?一応俺と見方が違うと思うから一応聞かせてくれ」
「えっ?あっ、私は青や水色や藍色という青系統の色調をした光が見えただけですから。一真さんのような透明なのではありませんよ?」
「色の違いが見えた!一真のそれは僕も透明に見えるけど」
そう言った幹比古は、真っ直ぐに美月の目を見ていた。そうして近付いていき、あと少しでキスできそうな近距離まで近付いていたので俺は咳込みをしたのだった。おいおい、俺がいないところで興奮するとはな。幹比古にとっては、美月の目を覗きこもうとしていたようだが美月側にとっては顔を赤くしていたのだった。
「合意の上なら席を外すが、そうでないと問題だぞ?」
「わわっ!」
「きゃっ!」
呼吸すら忘れていたかの如く、無言で固まっていた二人であったが俺の咳き込みで我に返ったようだった。
「・・・・ごめん」
「い、いえ・・・・こちらこそ」
あまりよく分からないやり取りだったが、幹比古が謝罪をしたのは分かるが普通ならセクハラまがいの行為はビンタ一発ぐらいの文句なところ。だが美月は謝る必要が無かったからか、まだ頭の中でパニックにしている様子であったからか美月の頭上に手を置いたのを見た幹比古は静かに見ていた。そしたら冷静に戻ったところで俺に質問されたけど。
「今の術はいったい?」
「ん?ああ美月にしたのは仙術というもんだ、幹比古も古式魔法を推奨する者だから聞いた事ぐらいはあるだろう?」
仙術という言葉に反応した幹比古だったが、美月にエリカとレオが待ち合わせ場所に来ていると教えてやった。そしたら時計を見た美月は、いつの間にかその時間に経ったという事で時間差だと思う。あとは俺が言う精霊とは色は術者が理解するんじゃなく、精霊自身から色を出す事だと言ったら精霊魔法を使う幹比古や色が見えた美月も透明な球にしか見えないと言ったので、炎・風・地・水の順番に表示させたら理解したようだった。
「幹比古、美月の目について何か知っているようだな。もしかして水晶眼と言うのかな?」
「さすが精霊を使役している一真は何でも知っているんだね、その通りで精霊の色を見分けられる人がいるなんて思わなかったから。凄く驚いていたんだけど、一真の仙術で落ち着けたよ。水晶眼の持ち主かなと思ったから、いても立ってもいられなくなったのさ。改めてごめん、言い訳かもしれないけど決して不埒な真似をしようとしたんじゃないから」
「もういいですよ吉田君。私も驚いただけですから、でも恥ずかしかったんですから、もうこれきりにしてくださいね」
「ホントにごめん」
先程のセクハラ紛いは、平和的解決にしたそうだから問題はなさそうだ。一応風紀委員だからなのか、未遂で終わったとしても厳重注意くらいだと思うが今回は初犯だし水晶眼の事で確認したかったのだろう。
「それより俺と幹比古だけが知る情報ではないから、差し支えが無ければ美月にも教えても構わんだろう。美月も水晶眼と言わてもよく分かってないそうだし」
「そうだね。僕もそんなに秘密という訳ではないから、精霊は色があるというのは一真も知っていると思うけど色で精霊を見分けている。でもそれは本当の意味で見えている訳ではないんだ。精霊の色は決まったものではなくて、術の系統、式の流派によって、術者が『見る』色は変化するものなんだよ。例えば一真の場合は魔法ではないけど炎は赤、風は白、地は黄土色、水は青と言った感じで僕も水精は青色をしていたりする。欧州には、水精の色は紫だと明言する流派もあるんだ。大陸系の流派では、黒に近い紺色だとするものもあるのさ。場所と使役する者によって、精霊の波動に違いがあると分かって来た事だけど。術者の認識の仕方が違うから、違う色に『見えて』いるんだ」
「まあそうだろうな、・・・・ふむふむなるほどな、だから幹比古は魔法力を失ったと錯覚しているのか」
俺は納得したと思ったら、俺は水の精霊王であるガッドからある事が伝わってきたので、俺は独り事のように呟いていたら幹比古と美月は見えない誰かと話していると見えたと思ったら幹比古が魔法力を失ったと一真の口から出たので驚いていた。あとは術を介して波動を解釈している事で、色を識別していると理解はしている。
「ん?幹比古何驚愕な顔をしているんだ」
「一真はなぜ僕が魔法力を失ったと知っているんだ!?」
「落ち着け幹比古、今ここにお前で言うなら広域気象操作が可能な神霊・・・・美月に分かりやすく言うと大規模独立情報体を喚起する技を競う儀式を一年前吉田家で行った事だ。幹比古の兄は大気流動の大規模独立情報体「風神」の喚起に成功したんだ。喚起というのは、呼び出して活性化させる技を競う魔法儀式で幹比古は「竜神」という吉田家最終目的である水の大循環の独立情報体を呼び出そうとしたが失敗してからサイオンの枯渇を起こし気を失ったのさ。で、今現在の幹比古の状態は魔法発動が遅くなっているという感覚に取り付かれているから魔法が上手く出来ないと錯覚していると思われる。恐らく「竜神」との接触時に向こう側からの干渉で無理矢理魔法演算を加速させられた時の感覚を引きずっているのさ。ちなみに幹比古が言う竜神というのは、俺で言うなら精霊王か高位精霊と言われていて、水の精霊王はガッドという。だからガッドが今俺の隣で幹比古の状態を正確に教えてくれたのさ」
俺の長い説明の後に、隣にいるガッドを幹比古や美月でも見えるように召喚したら女性だったのかとても驚いていた。ちなみに風神は俺的に言うと風の精霊王はサイフィスと言うとまた召喚したら女性だった。古式魔法の術者が精霊を見るのは、波動を色で解釈しているが術者が精霊に色を付けている。幹比古達の術者の認識する精霊の色は画一的という感じで、幹比古の流派ではほぼ俺が見ている色のようだ。頭の中で分類して色を塗っているから、色調の違いが生じるはずもない。水の精霊はどんなものでも青一色であって、認識システム上、水色や藍色とか見えるはずがないと言う。
「なるほど、だから僕の事故の時や現状を精霊が話しているなら納得できるよ。恐らくだけど彼女は水精の力量の違い、性質の違いの色調の違いとして知覚している。本当に、精霊の色が見えているんだ。そういう眼の事を、僕たちの流派では『水晶眼』と呼んでいる。他流派では別の意味で使われる事もある単語だけど、僕たちの流派では『神』を見る事の出来る眼、とされている。精霊の色を見る事が出来る者は、精霊の源であり集まりである、自然現象そのものである『神霊』を見て、認識して、そのシステムに介入するための鍵を見つける事の出来る存在だと伝えられている」
「まあ俺も精霊の色を識別しているし、実際精霊の力を使ってやっているからな。まあつまりだ、そういう眼の持ち主は神霊というシステムにアクセスする為の巫女と言えばいいのか。それに精霊魔法の術者にとっては美月の眼は喉から手が出るほど欲しい人材という事なんだな?」
そう言ったら頷いたけど、幹比古は一年前の事故が無ければ『神』を御する能力があるが今はないに等しい。自惚れて有頂天になり、強引に彼女を自分の物にしたと思うが今の幹比古にとってはそんな欲はない。でも他の術者に神の術法へ繋がる鍵の存在を教える気は無いと言うが、目の前に神がいるのは知らないだろうな。他の術者が神祇魔法の奥伝を極める姿を指をくわえて眺めているとしても、美月の水晶眼や俺の精霊術については他言する気はさらさらないと聞いて俺は一息ついた。
「俺が精霊を介して攻撃したり、神霊=精霊王での力を出す事などは俺も言わないよ。エレメンツ使いの一つとして言っているからたぶん平気だけどな。それより幹比古の魔法についてなんだが、よかったら俺が何とかしてやろうか?」
「本来ならあの事故の後で、ずっと魔法力がないと思っていたけどそれが錯覚だと知った上で一真にお願いがある。僕の魔法力を復活させたいんだ、お願いしてもいいかな?」
俺はもちろんと言いながら、幹比古でいう竜神=ガッドに干渉しても魔法演算が加速しないような方法で練習をしていた。その時は俺も少ししたら深雪の方に行かないといけないので、本来は運転手の結衣を来させてから精霊魔法についてを練習していた幹比古とそれを見るように美月も幹比古の練習に付き合っていた。吉田家の術式はいくつか無駄があると言ってから、少しアレンジをさせてから実験棟で古式魔法をやっていた。その間は俺も深雪たちと毎日のように九校戦の練習をしたりしていたのだった。
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