オズのムシノスケ
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第六幕その十
「起きてくれるかな」
「・・・・・・・・・」
やはり起きません、三度目もかけましたが。
それでもでした、やはり猪は起きません。それで教授はこう言いました。
「ふむ。ボタン=ブライトと同じだね」
「起きないですね」
「眠り草の影響でもない様だし」
「じゃあ象さんと一緒で」
「満腹になったのか何かでね」
それで、というのです。
「寝ているみたいだね」
「そうですね」
「それではね」
「無理に起こすよりも」
「やり方を考えよう、北風と太陽のね」
「太陽ですね」
「それでいこう。だからね」
それでだというのです、そして。
教授はドロシーにお顔を向けてです、こう言いました。
「美味しいものを沢山出してくれるかな」
「ご馳走をなの」
「そう、それをこの猪君の顔の前に持って来てね」
「そうしてなのね」
「起きてもらおう」
そうしようというのです。
「ここはね」
「わかったわ、じゃあ猪の好きなものをね」
「猪の好きなものは芋だよ」
それだというのです。
「それを出そう」
「うん、それじゃあね」
こうしてでした、ドロシーはテーブル掛けを懐から出して地面に置いて拡げてです、そこに沢山のお芋を出しました。
それを寝ている猪の顔のすぐ傍に置くとでした。
猪はゆっくりと目を開けました、そうしてこう言いました。
「美味しい匂いがするね」
「ああ、起きたね」
「あれっ、教授?」
猪は教授のお顔を見て言いました。
「お会いしたのははじめてだったかな」
「うむ、その様だね」
「またこんな場所で会うなんてね」
奇遇だというのです。
「いや、思いも寄らないよ」
「私もだよ。ところで君は何故ここで寝ているんだい?」
「ああ、僕寝ていたんだ」
「ここは道だからね」
教授は象に言ったことを猪にも言います。
「寝るのなら道以外の場所で寝てくれるかな」
「そうだね、その方がいいね」
「その通りだよ。芋は君にあげるとして」
その山の様にあるジャガイモのことも言うのでした。
「とにかくね」
「まずはここからどいて」
「そうしてくれるかな」
「わかったよ。 僕もここで寝るよりもね」
道の上で寝るよりもというのです。
「草の上で寝る方がいいからね」
「ではね」
「そっちに移って」
こう言ってでした、実際にです。
猪はのっそりと起き上がってでした、そのうえで。
まずは道からどきました、芋は皆が持ってです。猪がまた寝そべったその顔の近くに置きました、そうしてです。
教授は猪にです、あらためて尋ねました。
「君は何故道の上で寝ていたのかな」
「うん、実はね」
「実は?」
「最近あまり寝ていなくて」
それでだというのです。
「というか寝ていなかったんだ」
「どうして寝ていなかったんだい?」
「遊びに熱中していたんだ」
「それでだったのかい」
「うん、ずっと寝ていなくて遊んでいる最中に」
「寝てしまったんだね」
「道の上でね」
それで道の上に寝ていたというのです。
「お散歩をして遊んでいる最中にね」
「そうだったのか」
「そうなんだ、最近色々な遊びを楽しんでいて」
「寝ていなかったのか」
「夜も昼も。それこそ食べるか飲む時以外は全部遊んでいたから」
だからだというのです。
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