ロックマンX~5つの希望~
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第四十六話 鬼
前書き
イエティンガーを撃破したルナの前に現れたのは…。
ルインは次の出撃に備えて武器の最終調整をしていた。
基本的な整備はダグラス達がしてくれているが、やはりこういうのは自分がやらなければならない。
一通りの調整を終えて一息つくと、レイヤーが話しかけてくる。
レイヤー「お疲れ様です、ルインさん……あの……」
自分の仕事に一段落がついたのかナビゲーター席を離れルインの傍に来たレイヤーが遠慮がちに声をかけてきた。
ルインスが向かい合う相手を武器からレイヤーに移して促すと、言い淀んでいたレイヤーが切り出す。
レイヤー「…最近、ルインさんが沈んでいるような気がして……」
ルイン「え?」
ポカンと目を見開きながらレイヤーを見つめる。
ルイン「心配してくれてるの?」
レイヤー「はい…オペレーターとしてハンターチームの状況は、あの……知っておいた方が、良いかと……」
ルイン「…………」
ルインはしばし悩むように目を閉じていたが、やがて口を開いた。
ルイン「あはは、後輩に心配かけるようじゃ、私もまだまだだね……うん、そうだね……エックスが意識不明で…いきなりこんなことになっちゃったから、多分…気が動転してたんだろうね…VAVAに…もしかしたら今回の事件の黒幕のシグマ…まるで昔に戻ったかのよう…」
レイヤー「あの、ルインさんはあのVAVAとは先輩後輩の仲だったと聞いているのですが?」
ルイン「うん。新人時代にとてもお世話になったの。私の力はあの人のおかげが大きい」
実際ルインのバスターによる戦闘はVAVAと同じだ。
中~遠距離用の装備を至近距離で使いこなすことは自身さえ破壊しかねない危険な戦法だが、ルインはそれを完全にこなしている。
ルイン「またVAVAと戦うってのは少し複雑だけどね。でも逃げるわけにはいかないよ。今度こそ全てに決着をつける」
ルインの纏う空気が歴戦の戦士に相応しいそれに変わり、レイヤーはしばらく言葉を無くしたが、少しの間を置いて軽い礼をする。
レイヤー「……話していただいてありがとうございましたルインさん」
ルイン「いや、レイヤーだってもう仲間なんだから……少しずつでも私達のことを知ってもらいたいんだ」
レイヤー「…………はい。お邪魔してすみませんでした。私も仕事に戻ります」
ルイン「うん」
ルインはレイヤーの後ろ姿を見遣るとトレーニングルームに向かう。
雪の上に横たわるルナは、救援が来るまで待っていた。
勿論、DNAデータの回収も忘れずに。
ルナ「紙一重の差だな…」
雪が降る空を見上げながら呟いた。
生と死を分かつ、とてつもなく厚い紙一重だった。
呟いた途端、上空から凄まじい威圧感を感じた。
ルナ「…VAVA…!!?」
VAVA「久しぶりだな、小娘」
暗い黄緑のアーマーを纏い、キャノン砲を担いだ戦士。
彼は空に浮かびながら、倒れたルナを見下ろしている。
ルナ「妙なとこで会うな…てめえとは……アクセルをどうした…答えろ…」
叫ぼうとするが、身体を蝕む激痛がそれを許さない。
しかし、気力という名の力を持って、VAVAに立ち向かう。
VAVAはバイザーの下で笑みを浮かべながら彼女に言う。
VAVA「まあ、そう急ぐな…。直に会わせてやる。今、丁度目覚める頃だろう」
使命と本来の力を取り戻した漆黒の銃士が、もうすぐ覚醒する。
ルナはその事態を知る由もなく、眉を顰めながら詰問する。
ルナ「てめえの目的は……何なんだ……かつてお前を倒したエックス達への復讐か…?それとも戦いたいだけか…?もし、そうなら…血に飢えた殺戮者と変わらねえな…」
VAVA「殺戮者か…そうだな。血と硝煙を求め、現世という無限地獄をさ迷う鬼に違いないな。だが、それでいい。俺はそれでいい。それが“俺”なのだからな」
それだけ言うとVAVAは空へと消えた。
ルナ「待てよ!!アクセル…アクセルを返せよ!!」
力を振り絞って叫んだ時には既にVAVAはいなかった。
ルナは呆然と、空を仰ぐしかない。
地上から遥か遠い月。
シグマパレスの一室で、アクセルが鎖に繋がられたまま眠っていた。
苦悶の色はない。
静かに、安らかに眠っていた。
しかし、アクセルのボディは普段の漆黒ではなく、純白のボディとなっていた。
そのボディはとても美しく、凄烈な色を放っていた。
ゆっくりと瞳が開かれていく。
普段のエックスとルインに似た翡翠の色ではなく、まるで血を思わせるような紅に代わっていた。
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