劇場版・少年少女の戦極時代
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天下分け目の戦国MOVIE大合戦
舞と咲、戦極時代へ
《バトル中に行方不明になった、鎧武、バロン、龍玄。このアーマードライダーたちの行方は、1週間経った今でも分かっていない。ビートライダーズ・ホットラインは、目撃情報を集めて――》
咲はいつもの野外劇場で、スマートホンで“ビートライダーズ・ホットライン”を視聴して、溜息をついた。
この1週間に挑まれたインベスゲームは、全て断った。それでも食ってかかるチームとは、ダンスで勝負した。
「どいつもこいつも! 小学生なら勝てるって思ってんのがタンラクテキよね」
「まずお客が小学生中心ってとこ忘れてるよな~」
純粋なダンス勝負だけなら、リトルスターマインはどのビートライダーズにも勝てない。ゆえに少年少女は客である児童に判定させることで、挑戦者を退けてきた。ホームの力、偉大なり。
「あ」
「どした、ヘキサ」
「上の兄さんからメール。この時間、まだ仕事中なのに、めずらしい……帰り、おそくなる? これだけ?」
すっく。咲は立ち上がって、野外劇場のステージから飛び降りた。
「どこ行くの、咲?」
「チーム鎧武のガレージ」
咲がガレージ前に着いた時、舞は階段の上でスマホ片手に、憂い顔で溜息をついていた。
「舞さん」
「――あ、咲ちゃん…」
舞はスマホを持ったまま階段を降り、咲の前まで来てくれた。
「紘汰くんからレンラク、あった?」
「ううん。咲ちゃんのほうは?」
咲は首を振った。二人分の溜息が同時に落ちた。
咲は舞と並んで歩き出した。
「ふたりとも、どうしちゃったんだろうね」
「裂け目の向こう側に行ったのは確かだけど、そうそう裂け目なんて都合よく開い、て……」
「舞さん?」
舞が指さしたのは、ガレージとガレージの間の細道の奥に開いた、裂け目。
咲と舞は裂け目の前まで走って行った。
「この向こうに、紘汰とミッチが……」
咲は舞を見上げた。舞の覚悟完了までは早かった。二人の少女は手を繋ぐ。
「「せーの!」」
咲と舞は裂け目に飛び込んだ。
彼女たちが抜けた先は、あの不思議な“森”だった。だが、いつもの“森”とは異なる点が一つ。
雨が、降っている。
(そういえば、会場で紘汰くんたちがとびこんだ裂け目も、向こう側、雨降ってなかったっけ?)
考えていると、舞が急に咲を引っ張って近くの木の幹に隠れた。
何事かと顔だけを幹からそっと出し、そこにスーツ姿の男が立っているのを見た。
「あっ」
「え?」
「な、なんでもない」
(あの人、ヘキサとミッチくんのお兄さん……名前、貴虎、さん、だっけ)
貴虎が歩いていくのは、普段の裂け目とは色が異なるそれ。裂け目は全体的にオレンジ色に光っており、上側に青い宝石が付いていた。
貴虎はオレンジ色の裂け目を躊躇なく跨いで入った。
(もしかして貴虎さん、こっち側に来ちゃった紘汰くんたちを連れ戻しに来たのかも。そうよ。クリスマスゲームの時だって、半分以上のライダーがあの人にやられた。今回もそうじゃないなんて言い切れない)
「舞さん、あたしたちも行こう」
「うんっ」
咲たちはオレンジ色の裂け目の前まで来て、再び手を繋いだ。
「「せーのっ」」
そして、同時にジャンプし、裂け目を跨いださらに向こうの世界に降り立った。
彼女たちが降り立ったのは、車一台なら通れそうな獣道の上だった。周りは森だが、先ほどまでいた“森”とは違う、普通の木々が立っていた。
「あ。あれ、鳴子かな」
咲も気づいた。木と木の間に紐を結んで、木の板をずらっとかけた物が、点々とある。ちょい、ちょい、と鳴らない程度に指でつついてみる。好奇心だ。
「うちの神社にもあったなあ……やだっ。もしかしてイノシシとかクマでも出るんじゃっ」
「え、まじ!?」
驚いた拍子に鳴子にぶつかった。鳴子は高く大きな音を森に反響させた。
「咲ちゃん、驚きすぎ~」
「ごめんなさい……」
「うーん、でもほんとに猛獣避けなら、早めにこっから出ないと……」
舞が言っている途中、ざ、ざ、ざ、と足音がいくつも聞こえてきた。
戦国時代の足軽のような格好をした男たちが現れ、細長い槍を咲と舞に向け、囲んだのだ。
舞が咲を抱き締めながら後ずさる。
(ほんとはこういう使い方しちゃだめなんだろうけどっ)
咲はごそりと体をよじり、戦極ドライバーとドラゴンフルーツの錠前を取り出した。
舞の腕から出て、舞を背中に庇う態勢に入った。そして、ドラゴンフルーツの錠前を開錠した。
「変身!」
《 カモン ドラゴンフルーツアームズ Bomb Voyage 》
白いライドウェアの上から、炎の形をした果実が被さり、鎧となって咲を装甲する。
「ちょ、いいのそれ!?」
『相手、オトコだし武器持ってるし、せーとーぼーえーセイリツってことで!』
DFボムを最低威力に設定し、真上に投げた。ぱんっ、と空中で爆ぜるDFボム。これが威嚇となって足軽が去ってくれることを切に祈った。
しかし、足軽たちの反応は、月花の予想の斜め上を行った。
「武神!?」
「新しい武神だ!」
「この女、武将か!」
「え、なに、ええ!?」
『もー! せっかくオンビンにすませようと思ったのにー!』
「いや変身してる時点で穏便じゃないよ咲ちゃん!」
月花はDFバトンを足軽たちに投げつけ、舞の手を取って走り出した。
しばらく獣道を走り、舞の息が上がり始めた。
月花は立ち止まり、適当な茂みに舞を押し込んだ。
「咲ちゃん!?」
『あたしが引きつけとくから、見つかっちゃダメだよ!』
例の足軽たちが追ってきた。月花はわざと彼らが近づくのを待ち、その上で、アームズの力で出せる全速力で走り出した。
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