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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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九校戦編〈上〉
  九校戦内容確認

「そういや、もうすぐ九校戦の時期じゃね?」

俺が考えていると、いきなりレオがそう言ったので頷いた俺と蒼太。でもその時期は、普通に本社で働いてるから、直接行ったりする視察とかは他の者に任せている。俺は映像報告とリアルタイムで、観戦したりしている時もあったが、その時は家でゆっくり見ているかのどちらかだ。

「深雪がボヤいていたが、深雪をバックアップする沙紀も同じ事を言っていたよ。作業車・工具・ユニフォームとかの準備するモノが多いってな」

「深雪さんも出場されるんでしょう?大変ですね」

美月が見せ掛けではなく、深雪を案じる言葉を口にする。

「深雪なら新人戦何て楽勝っぽいけどね。寧ろ準備の方が大変そう」

エリカが半分反論、半分同調するセリフを返した。

「俺らの者の報告では、今年は油断出来なさそうだぞ。三高に、一条の御曹司が出場すると聞いた情報だったか?蒼太」

「はい。間違いありません、一条のそれも十師族のですからね」

それに対する俺と蒼太のツッコミで、この場にいる者が絶句というより驚愕かな。雫も何故それを知っている?と目を丸くしていた。九校戦は本戦も新人戦も男女別であるから、深雪と一条の御曹司が対戦する事はない。

俺は何らかの形で出場するかもしれないという、予感しかならない。蒼い翼に俺も選手とメカニックでの出場としての特別推薦枠に入った。この枠というのは、蒼い翼から社長自ら推薦した生徒が出場できるようにした処置。

「へぇ・・・・」

「一条って、蒼太さんが言った十師族の一条か?」

エリカもレオも自分達の年次に、十師族の直系がいるのは初耳だったから本気で驚いていた。美月にそれ程ビックリした様子がないのは、もしかしたら『一条の御曹司』の事を知っているのかもしれない。十師族をコントロールしている家はただ一つ、零家のみである。それを知っているのは、十師族師族会議に出ている者のみだ。

「そりゃ強敵かも。にしても、一真君は随分と詳しいのね?」

「俺も詳しいけど、雫の方が詳しいよ。俺は情報を聞いただけだから」

「雫はモノリス・コードのフリークなのよ。だから九校戦も毎回見に行ってるのよね?」

エリカの疑問に、軽く返した後に雫に振ったのだった。雫の事を本人同様知っているかのように言ったほのかだった。

「・・・・うん、まあ。毎年見に行っているけど、蒼い翼本社社長が見に来ている所は見た事ない」

「そりゃアイツは忙しいからな、本社でリアルタイムで見ていると去年聞いた」

ほのかの代弁された答えは、雫の相変わらず表情が乏しい中にも少し照れながらアイツの事を聞いてきた。アイツ=俺だけど、まるで友達感覚で言ってみただけだった。俺本人に興味を感じていたほのかとは違い、雫は親友であるほのかが興味を持った相手で、新しく友人になった深雪の兄。

という間接的な繋がりから、俺と知り合いになったに過ぎない。最初は一歩引いたところからのツッコミだったが、今ではこんなにも打ち解けた顔を出している。

「モノリス・コードの試合は、全日本選手権と魔法科大学国際親善試合以外では、九校戦以外にやっていないからな」

九校戦は、魔法大学付属高校間の身内同士の交流試合であるが外部にも公開されている。例えば蒼い翼本社で、リアルタイムで観戦している俺=零達也とかだ。九校戦が、魔法競技を目にする事が出来る数少ない舞台でもある。魔法科高校各校の一学年定員は、九校合せて千二百名となっているが対して国内の十五歳男女の内実用レベルの魔法力を持つ者の合計人数は千二百から千五百名程度。

つまり、魔法の才能を持つ少年少女で魔法師・魔工師になろうとする者は、九校のどこかに入学する確率はほぼ十割である。故に高校の魔法競技は、剣術や拳法といった一部の競技除き、九校独占状態である。魔法競技に対する関心を高め、理解を深め、魔法そのものに対する社会認識を深める為に九校戦は数少ないアピールの場となっている。

「今年も強敵は三高かな?」

「多分」

得意分野と分かってエリカが水を向けると、雫は簡潔に言うがどことなく嬉しそうに頷いた。

「今年は見る側じゃなくて、競う側ですね」

雫は実技の学年二位だからなのか、新人戦メンバーの正式発表はまだ。だが深雪同様、雫が選ばれる事については当然だと言える。

「うん・・・・」

美月に水を向けられ、控えめに頷いた雫の顔には、やる気が芽を出していた。試験終了後、俺と蒼太はほぼ毎日放課後になると、風紀委員会本部で過ごしていた。夏休みが終わればすぐに生徒会長選挙となり、新会長が決まれば新たに選任された風紀委員の互選により、新しい風紀委員長が決まる。

伝統的と言っても悪しき伝統だが、風紀委員長の引き継ぎがまともに行われた試しはない。ほとんど整理されていない活動記録と共に丸投げ・・・・とこのようなパターンだ。それでも委員長は、一年の頃から委員として活動していたので、引き継ぎ無しでもそれ程困らない。

次期委員長にと、目を付けている二年生は風紀委員会の経験が無いのか。出来るだけ困らないような引き継ぎをしてやりたい、と委員長は考えていた・・・・その為の資料作りを俺と蒼太に丸投げ状態だ。

「俺と蒼太的には肉体労働より、こっちが多い気がしてやりませんな」

「権限持ちの人間を事務仕事丸投げというのは、本来なら怒られそうだが問題ないだろう。それにこういう仕事を慣れている人間は、風紀委員会の中でも貴重な人材だと私は思うぞ?」

感謝されているような気がするが、黙々と作業を続けている蒼太も、脳量子波で文句を言っていた。俺=社長も事務作業は、プロ並みにテキパキとやっていたのか、貴重な人材と言う所に引っ掛かるがまあいいか。

たまにこうやらないと、あっちで即座に仕事時に対応しないといけない。手を動かして俺はやっているが、蒼太は補助的な所をやってもらっている。

「ところで、随分前もって準備をするんですな」

俺が作成している引継資料作成は、蒼太の補助的な事をやってもらっているお陰で一週間足らずで完成する。この後、より詳細な資料作成するのであれば二ヶ月以上の猶予はあるが、その間に引き継ぎを要するような大きな案件が発生しないとは限らない。こういう資料は、早ければ早い程良い訳でもない。

「九校戦の準備が本格化すれば、資料作りの時間なんて取れなくなるからな。メンバーが固まったら出場競技の練習も始まるし、道具の手配、情報収集と分析、作戦立案、やる事は山積みだ」

事情を聞けば、俺的には関係ありそうな情報ばかりだった。道具の手配や情報収集と分析は、主に俺ら蒼い翼が執り行うし、不正が無いかスタッフを配置してそれを指示するのが俺の仕事でもある。

「九校戦は、八月三日から十二日の十日間ですよね?」

「うむ。そうだが観戦に行った事ないのか?」

「俺も深雪も、蒼い翼関連の仕事をしているので行った事はないですね。たまにアイツと一緒にリアルタイムで見た事ありますがね」

「アイツとは零社長か?」

「そうですよ。ちなみにソレスタルビーイングの仕事もあるので、私や沙紀も観戦した事はありません。主にテロリストと戦う為の訓練を毎日程・・・・」

委員長は『なるほど』と言いながら納得してくれた。俺らもソレスタルビーイングの仕事や蒼い翼での仕事をしているので、年齢については委員長は知っている。俺と深雪の本当の年齢は、ここにいる委員長や会長よりも年上の人間だからな。

だが今は、高校生活をエンジョイしている訳なので年齢詐欺と容姿を擬態している。九校戦の競技については頭に入っているが、スピード・シューティング、クラウド・ボール、バトル・ボード、アイス・ピラーズ・ブレイク、ミラージ・バット、モノリス・コードの六種目。それ以前は毎年ごとに種目を変更していたが、ここ数年は同じ競技が採用されている。

「剣術やマーシャル・マジック・アーツのような格闘技系統の競技、軽身体操やハイポスト・バスケットのような球技は、別大会で開催されていると聞いています。九校戦競技であるクラウド・ボールやバトル・ボードは身体能力が重要となりますが、そこはどうなんですか?」

「魔法師も人間、身体能力を軽視して良い道理はない。魔法師同士、一対一の決闘でも最後にモノを言うのは身体能力というケースも決して例外じゃない。あたしが改めて講釈するまでも無いだろうが」

「それもそうですね」

六種目の中でモノリス・コードだけが団体戦、あとの五種目は個人戦だというのは知っている。クラウド・ボールはダブルスではないらしいが、そこは魔法力の比重が高くなるように、競技独自ルールが設けられている。

ルールを要約したパンフレット作成も、俺ら部下達がやっている事で、九校戦絡みだと紙の印刷物は珍しくないし、仮想型端末は魔法力を損なうという考え方は根強い方。魔法師以外でスクリーン型の端末を使用する者は、俺らソレスタルビーイングと少数派である。

「魔法師の中では、仮想型端末を使う者が増えていると聞いてます。紙のパンフレットを作るのも、俺らの仕事だという風に社員がそう言ってるのを覚えてますよ。スクリーン型端末は少数派らしいので」

「おや、そう言う事なら君は仮想型容認派なのかな?」

「一真様の代わりに答えますと、仮想型端末が未熟魔法師に悪影響を与えるという根拠はありません。特に十代の能力発展途上なら、仮想型使用を避けるべきだと思われます。既に魔法力が固まった私や一真様という成人魔法師に仮想型を禁止するという理由は無いかと」

「蒼太ご苦労、今会話する状況ではなかったがもう大丈夫だ」

「それも一つの考えという事か、一真君は実は私達より大人だと言うのは今ここにいる私しか知らない情報だからそう言ったようなものか」

蒼太が、言っている時に俺は九校戦の事を考えていた。選手は本戦、新人戦、男女各十名ずつの合計四十名になる。新人戦は一年生のみで、本戦は学年制限無し。とは言え、一人の選手が出場できる競技は二種目までと決められている事も、本戦に一年生が出る事はない。

出場枠問題を抜きにしても、一年生と二~三年生では実力的に勝負にはならない。新人戦は去年まで男女の区別がなかったが、今年から本戦と同じ男女別で行われている去年までなら一年女子が種目を掛け持ちする事はなかったが、今年は掛け持ちをする事になるだろう。

六種目の内、四種目は男女共通。モノリス・コードは男子のみ、ミラージュ・バットは女子のみとなっている。モノリス・コードだけは、実戦的な戦闘が想定されている種目だからなのか男子のみというのも理解できるが、理解できない者もいるだろう。例えばここにいる委員長も出たかったはずだが、委員長の魔法は対人戦闘向きだから出場できないのが不服なのだろう。

各校から一つの競技にエントリーできる人数は三名で、同じ種目でも男女で別競技とカウントするから、本戦と新人戦とも男女各五人が五種目の内二種目を選択する事が出来る。残りの五人が一種目に絞って出場するかで、誰をどの種目に出場させるかはチーム戦によって作戦立案も大切である。

「それで委員長は、モノリス・コードに出れないのが悔しいのですか?」

「おや。よく分かったね」

「委員長は対人スキルが高いですからね」

「まあ一真君に言われるまでもないが、話の続きをしよう。九校戦は選手とは別に、四人まで作戦スタッフが認めている。最もどの学校でも作戦チームを編成するという訳ではない。ウチの場合は、毎回枠一杯を連れて行くが、例えば三高は毎年作戦チームを連れて来ない。あそこは選手が全部自分で、作戦立案を考えてしまう」

「それで、毎回当校と優勝争いをしているんですよね。今年優勝すると、ウチにとっては三連覇するからですか?」

「そうだ。あたし達今の三年にとっては、今年勝ってこそ本当の勝利だ」

歴史を見ると、2086年から定例行事化をしてから、2088年:国立魔法大学付属第三高校優勝、2092年:国立魔法大学付属第三高校優勝、2093年:国立魔法大学付属第一高校優勝、2094年:国立魔法大学付属第一高校優勝としているので三高と優勝争いしてるのが分かる。

第一高校の現三年生は『最強世代』と呼ばれている。七草真由美、十文字克人と今現在椅子に座りながら話している渡辺摩利。十師族直系が二人と、それに匹敵する実力者でこの三人が一つの学校に揃っているというだけで偶然にしか聞かない。それ以外にも、A級ライセンスに相当する技能を持っている実力者が何人も控えている。

「それと毎年恒例な事なのですが、蒼い翼からの特別推薦枠があるのはご存じですか?」

「知っているが、その推薦枠を持つ者は今まで現れなかったが今年は出る者がいるとの事なのかい?」

「そこまでは知らないですが、零社長は今年はそれを使ってある生徒を選手兼エンジニアとして推薦すると聞いております。誰をとは聞いてませんが」

「今年その推薦枠を使う生徒が出場するなら、今年も一高が優勝間違いないと見ていいのか」

順当に行けば当校が優勝確実と言いたいが、どこかで邪魔をしてくる者がいる。去年まではその推薦枠を知ってはいたが今まで噂程度しか知らないのが多いが、今年はその推薦枠で出場する人物が当校にいると知ったのか俺の方を見る。

「まさか一真君じゃないだろうね」

「俺もまだ推薦された覚えはありませんよ。それに推薦枠をもらっているなら、零達也から手紙が届くようになっています」

まあ俺が出るのは確実だが、まだもらっていないと言ってから作業の方を見る。蒼太の方はほぼ終わりそうなので、委員長と話していたが毎年エンジニアが足りないようだった。エンジニアを技術スタッフとも言うらしいが、九校戦で使用するデバイスは競技用ので定められている。

共通規格という事だ。これに適合する機種でなければ使えないし、代わりにハードが規格範囲内ならソフト面は事実上無制限。いかに規格の範囲内で選手に適したデバイスを用意し、選手の力を最大限引き出すチューニングを施せるかどうかも勝敗に大きく関わる。

起動式の展開速度はデバイスのハード面に依存するが、魔法式の構築効率はむしろデバイスのソフト面に大きく左右される。一瞬の差が勝敗に繋がるスポーツ系競技では、ソフト的なチューニングの巧拙が重要な意味を持つ。

ソフトは高度・多機能であれば良いというものではない、ハードの性能を超えるソフトはハードの作動を阻害し、返って低いパフォーマンスしか生まれない。ハードの性能が制限されるのであれば、ソフトの選択とアレンジはより重要性を増す。こういう条件なら、ソフトウェアエンジニアの腕次第でどうこうなる。

『一真様、前代鋼様のストーリー考案通りとなっていますが?』

『あまり気にしない方がいいぞ。俺的にもこういう事を開発しているから、デバイスについては熟知している。が、俺がデバイスを使って競技など出来るのかね?』

『一真様はデバイス無しでエレメンツ使いで様々な競技をやる事だったとしても、全競技優勝間違いないでしょうね』

『まあな、あとの事は考えずにとっとと作業を終わらせてしまおうか』

そう言いながら脳量子波で互いの作業を終わらせてから、深雪と共に帰宅したのだった。 
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