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聖魔弾の銃剣龍神皇帝と戦姫

作者:黒鐡
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第2巻
  ルリエ家の過去話×エレンとリュドミラの因縁

オルミュッツは、ジスタート王国の南西部に位置する。北に行けばエレンの治めるライトメリッツに達し、西に十数日歩けばプトレマイオス神国との国境線代わりとも言えるヴォージュ山脈がある。南へ向かって荒野と湖と山を越えればムオジネル王国が見えている。プトレマイオス神国の領土は、ヴォージュ山脈から手前にブリューヌ王国のオードとテリトアールの少し後ろ辺りまでが神国の領土となっている。長い長方形になっているが、その先からはブリューヌ王国なのでブリューヌとジスタートの板挟みにあるのがプトレマイオス神国と言えば理解できるだろう。

二つの国の人間と文化が混在するこの公国の統治者は、リュドミラ=ルリエ。『凍漣の雪姫(ミーチェリア)』とも呼ばれる戦姫だ。今、公宮の執務室で、リュドミラは静かに紅茶(チャイ)を飲んでいた。本来ならジスタート、ブリューヌ、ムオジネルの三つの国に混在していると言いたいが、他国と一切関わらないプトレマイオスが存在してる四つの国。そう言いたいけどブリューヌはプトレマイオスの先なので、ブリューヌ文化はなく同じくプトレマイオス文化もないので、ジスタートとムオジネルの二つの国の文化が混在しているからだ。

先日ライトメリッツから帰ってきた彼女の前には、片付けなければならない仕事が山ほど積まれていたが、先ほどになってようやく一段落ついたようだ。紅茶はリュドミラの好物であり、唯一の趣味と言ってもいいくらい。他者に淹れさせるのではなく、自分で淹れて飲むのが好きのようで紅茶に入れるジャムも手作りのようだ。リュドミラは手を止めて、白磁のカップの中の紅茶を見つめたのか何か思い出したかのように口に出した。

「・・・・そういえば、紅茶をご馳走すると言ったわね」

興味を失せる所か、ますます興味を持った人間でいつでも冷静にいられて味方がやられた時でも、味方を竜に任せてから自分の持つ竜具を手に取り操って見せた男。

「プトレマイオス神国大公をしている、ティグルヴルムド=ヴォルンだったかしら。あの目はまるで謁見の間に登場した創造神様のような目付きだったかしら」

あの目付きに気配が見えているかのように、精密射撃をする男で唯一軽蔑しなかったからよく覚えていた。そして竜を味方にしていたし、神と同じ力を持つ者。空に向けて雨雲だったのを一気に晴らして見せた。あんな芸当が出来るのは、神々の王ペルクナスを命令したかに思えた。神々の王ペルクナスはブリューヌとジスタートで信仰される十神の1柱にしてその筆頭神。太陽と光の神とも称されているから、雨雲から晴らしたのを見てまるで神々の王を命令したかのようにも思えた。そして背中から展開した翼も気になっていた。まるでティグルヴルムド=ヴォルンを人間の皮を被った神様に思えた。

「陛下はプトレマイオス神国を援護や忠誠を誓っていたけど、私はまだ分からない。でもまた会ってみたいかもしれない、国の事より己の感情を優先させた戦姫であるエレオノーラは戦姫失格だけど、ヴォルン大公は違っていた。己の感情を封じた対応力は、戦姫や陛下以上だったわ」

とそう呟いていたが、ティグル本人にはちゃんと聞こえていたのだった。小型無人偵察機を大量にばら撒いていたので、ジスタート王国内やブリューヌ王国内に斥候として放っているからだ。リュドミラ=ルリエの家系について調べたが、母や祖母、曾祖母も戦姫だったと判明した。戦姫を選ぶのは人ではない事は知っているし、俺がそう言い放つように命じて忠実にやってのけた黒竜の化身=ドライグ。ドライグをヒト化にしてから、黒竜の化身としてから介入したからだ。戦姫を選定というのは人では異を唱えられない。それを考えると代々戦姫というのは驚く事かもしれないが、納得する部分もあるからだ。

戦姫が教師であって、戦姫になるのは何が必要かが理解している。必ず娘が生まれる訳ではないし、充分な素質を備えているとは限らない。素質があっても期待通りに成長する保障はどこにもないし、難関を乗り越えられたとしても同時期に戦姫より相応しい者が出現する事もある。生まれた娘に後を継せようとした戦姫は過去に存在したが、望みを叶えられた者はほとんどいない。何代も続くとなると片手で数えられる例しかない。ルリエ家はその希少な例で、リュドミラは幼少時代から戦姫としてに英才教育を受けてきて槍を教わり、馬やオルミュッツという公国を治めるための知識を教わった。母親が突然死をしたのは、リュドミラが十四の頃に風邪だったはずが肺炎となって亡くなったという。この世を去った後に『破邪の尖角』ラヴィアスはリュドミラを新たな戦姫として選んだ。竜具はただの武器ではない、創造神黒鐵が創った武具で独自の意思を付けたのも創造神黒鐵の意思が映ったとされている。

リュドミラは戦姫に選ばれてから母の死を悼んだりしないほど余裕を持っていなかった。誰よりも望んだ人物はこの世にいなくとも、オルミュッツという生まれ育った地があり、自分を見守ってくれる人々である領民達。彼らを守る気持ちを強くしながら、表向きは氷のように静謐さを保ち、母や祖母の代から受け継ぐ臣下達と共に彼女は戦姫としての務めに励んだ。無論ヴォージュ山脈を越えたところにあるプトレマイオス神国の噂も絶えない時があった、ブリューヌ王国が小規模的な戦をしていたが全て神国が全勝したと代々の戦姫であった曾祖母から聞いた話だ。彼女の持つ『破邪の尖角』ラヴィアスを創ったとされる創造神黒鐵が住んでいると言われている神国、一度や二度ではなく、ジスタートは何回も使者としてプトレマイオス神国に向かったそうだが結果は話すら聞いてもらえなかったと聞いている。通れる者は神国に通じている者しか入れない。

そんな時だった、ライトメリッツで新たな戦姫が選ばれたという話をリュドミラと神国にいるヴォルン大公の耳にした。その娘はリュドミラと同じく十四歳だと聞いたので、神国にいる者はすぐさま神国の特使として、ジスタート王国に向かい祝辞のために向かった。今まで神国に通さなかったはずなのに、神国からジスタートに来るのは何度もあった。オルミュッツとライトメリッツの戦姫は、代々非常に仲が悪い。お互いの領土が近いためなのか、衝突は何度もあったが何度か衝突後に必ず創造神黒鐵様が現れては戦を止めていた。リュドミラも新たな戦姫に興味を持ったのか、ライトメリッツに向かった。神話時代から争っていた訳ではないからこれを機に友好を結べるだろうと軽く考えていたが、現実は違った。自分と違い、傭兵か旅人が新たな戦姫となったと聞いてエレンに初めて会った。結論から言えば気が合わずに、戦姫同士で戦闘をし始めたのだ。

「ぽっと出の、謙虚さの欠片もない傲岸不遜な野蛮人」

リュドミラがエレンに与えた評価だったが、エレンはこう評価した。

「家柄以外に誇れるモノがない、態度がデカくて恩着せがましい箱入り娘」

双方の評価で、互いの竜具で戦ったがそれを止めたのも創造神黒鐵様だった。創造神様はたったの拳だけで剣や槍を弾き飛ばしたのだから、その時言った言葉がこう言ったらしいが、正直俺もあまり覚えていない。そん時も全身金色であったらしいと聞いた。

「我が創った『竜具(ヴィラルト)』で争いをやめろ、お前らが持つ竜具は玩具ではないのだぞ?」

そう言ってから、アリファールとラヴィアスを持ってからしばらく竜具と神が話していた様子を見ていた戦姫と周辺住民達。しばらく話した後に、地面に置いてから創造神様は空高く飛んで行ったとされているようだ。俺にとって一年二年は短いが、ライトメリッツの統治ぶりと戦場での活躍を見てリュドミラはある程度は認めていた。そこに俺という謎の大公が現れてから、エレンが関わるようになってきたジスタート。創造神=俺だと言うのはまだ気付いていなさそうだが、彼女からはもう一度会ってみたいという願いが俺に送られてきたので、リュドミラの過去を語ってみた。

扉をノックする音が、リュドミラを我に返させる。随分と考え込んでいたらしいのか、カップに入っている紅茶は冷めてしまったようだ。

「入りなさい」

優しく告げると、初老の侍従がうやうやしい態度で入ってきた。母の代からこの公宮に勤めていて、リュドミラの信頼する部下の一人とされている。

「テナルディエ公爵の使者が参っております」

リュドミラは眉をひそめる。正直、あまり会いたくない相手で今現在ヴォルン大公の敵とされているテナルディエ公爵の者であるが、付き合いは曾祖母の代からのである。その頃の公爵は人格者で知られたらしいが、当代の公爵は圧政を敷いて領民を苦しめている。しかし国外においては常に誠実で隙のない対応をしているので、彼の対応に不満を覚えた事はない。オルミュッツの主で己の感情を政事に優先させていい訳がないというプレッシャーを持っている。

「・・・・謁見の間へ通しなさい」

いくばくかの間を置いたリュドミラの判断で、こちらの敵ともなるかもしれないと俺は小型無人偵察機から聞いたリュドミラが謁見の間にて、テナルディエ公爵の使者と会っている時もそう思ったのだったと同時にその使者がドウターという魔物の一部だと言う事は俺以外誰も知らなかった。 
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