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日向の兎

作者:アルビス
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1部
  15話

 
前書き
風邪をひいて扁桃炎→副鼻腔炎→中耳炎という流れるような悪化を辿ったので投稿が遅れました、すみません 

 
ふむ、気が付けば下忍となって半年、我ながら随分と任務にも慣れたものだ。
私たちの班は基本山賊などの戦闘がある場合、私が白眼で周囲を探知及び把握、発見次第テンテンの忍具による掃射、それにより混乱したところへリーがスピードで撹乱、その隙に頭をネジが捕らえるという具合に班としの動きも身についた。……殲滅であれば私ももう少し活躍できるのだが、大抵生け捕りが任務なので私は前に出られないのだ。
私も前衛で戦いたいのだがな。本来、こんな指揮役など柄ではないのだ。
そして、ガイ先生は万が一の為に備えて私たちを観察しながら、任務終了後の訓練のプランを練っているそうだ。
そんなある日、ガイ先生が珍しく新術を伝授すると言って私たちを集めた。先生は基本的に、下忍の内は体作りが重要という持論の下基礎訓練が主だった。
それに関しては全員が納得していたので別段文句は無かったのだが、やはり新術というのは心が踊るな。
こういう所があると言う事はまだまだ私も子供なのだと実感してしまう。
「さて、私は楽しみでならない訳だが、何故ネジとテンテンは嫌そうな表情を浮かべるのだ?」
「当たり前です」
「ヒジリって教えられた技術を魔改造するでしょ……それを考えると頭痛くなるの」
「魔改造?失敬な、最適化と言ってもらおうか」
「私の武器の口寄せを池を丸ごと呼び出す術に変えたり、岩雪崩起こしたりする術に変えたのはどこの誰よ!?
お陰で私の巻物が忍具じゃなくて兵器に変わったじゃない!!」
「くく、いいじゃないか強力で。そもそも、命無き物であればあれほどチャクラ消費量を少なくして術を発動できるなら、質量弾として使える上に調達も容易い物を使うのは当然だろうよ」
「ええ、ええ、その通りです。ですがね実験と称して山賊の隠れ家の上から巻物をばら撒いて術を発動させることで、家ごと押し潰して任務完了は雑すぎるんですよ」
「何の苦もなく生け捕りに出来たじゃないか?」
「ええ、何人かは、ね」
「そして、生き残りも完全に恐慌状態で命乞いしてくるような状況でね」
「それを任務成功というのではないのか?」
「……とりあえず、私の人生において絶対にヒジリを敵にまわしちゃいけないって覚えておくわ」
「それは結構、敵とは言え顔見知りを潰すのは少々躊躇ってしまうからな」
「少々程度なんだ……けど、あなたらしい答えね」
「それはそうだろう、私は私でしかないのだからな」



「よし、集まったなお前達!」
「先生、新術とはなんでしょうか?」
「お前が積極的とは嬉しいぞ、ヒジリ」
「ガイ先生、新術はヒジリが悪用できないような物でお願いします」
「…………済まん」
「はぁ……ネジ、胃薬余ってない?」
「すまない、俺の分ですら足りるのか分からない量しかないんだ」
「だよね」
「あの、二人とも体調が良くないんですか?」
「リー、この時ばかりはお前のある意味での純粋さが羨ましい」
「君達は相変わらず色々と私に対しての当たりがキツくないか?」
「「何を今更」」
「息ピッタリですね、二人とも」
「あーお前達、仲がいいのは結構だが俺の話を聞こうか。
まず、今から教える術は禁術に分類される物だという事を言っておこう。禁術とされる理由は体への負担の高さ故という事と、完全な形で放つには少々素質の有無が関わってくるからだ」
素質……ああ、八門遁甲だな。
「素質といっても、この術は訓練を欠かさなければ誰でも放つことが出来るので、今のお前達では完全に放つ事に素質がいるというだけだ」
「で、何故それを今教えるのですか?」
「それはその術……表蓮華はその過程において様々な応用性があるからだ」
「応用性ですか?」
「例えば、これだ」
先生は置いてあった丸太を蹴り上げると、空中に舞った丸太に影のように追従する。
ふむ、空中という身動きの取りにくい環境で相手の真後ろに瞬時に移動できるというのは圧倒的強みだ。原理と動きは捉えられたが……今の私では少々筋力が足りんな。
「そして、これが表蓮華だ!!」
先生はそのまま丸太を抱き抱えると、回転しながら丸太を地面に叩きつけた。
「凄い術ですね!!」
「ああ、実に私好みの術だ」
「……ねぇ、ネジ」
「言わないでくれ、テンテン。俺も少なからず察しがついた」
「二人とも、俺もやっている最中に感じたがこの術は確かにヒジリに教えると、明らかに別の物に変えられるな……特に影舞葉」
「「それをもう少し早く気付いてください」」
で、そんな内に数日に及ぶ表蓮華の訓練が始まった。
初日は初手の相手を打ち上げる下段からの蹴りを入れるまでの、相手を撹乱するための手段を各々模索。
リーは高速で相手の周囲を動き回る速度による撹乱、テンテンは上からの忍具をばら撒く事で意識を下段から外させる事にした。
私とネジはチャクラを地面に放出し、砂埃を発生させた上で八卦の領域内全てを攻撃範囲にする八卦六十四掌の動きで距離詰めることになった。
次は相手を打ち上げることに関してだが、リー、私、ネジ、テンテンの順に高くまで打ち上げる事ができ、その段階でテンテンは丸太を必要な高度まで蹴り上げる事ができずに断念した。そもそも、武器主体のテンテンに関しては最初から表蓮華に対して熱意があったわけでもなく、あっさりと諦めて自分の訓練に戻った。
その次に影舞葉になる訳だが……リーは割と短期で習得でき、私は身体能力の問題が些かあったもののなんとか物に出来た。しかし、ネジは柔拳との差異に対応し切れずに、訓練をこなせばいずれ可能になるだろうが柔拳の訓練の方にも食い込みかねないという事もあって今現在での習得は諦めるそうだ。
そして、表蓮華の締めである相手を拘束し、回転によって抵抗を許さぬまま地面に叩き落とす段階になったのだが……ここで私は脱落だ。筋力やらがどう工夫しても足りん上に、そもそも私は八門遁甲が開けないのだから無理だ。
結果、リーのみが習得するということになったが……影舞葉さえ学べれば私は十分だ。
そも、一撃必殺が主な攻撃の私にとって表蓮華のような大技は必要ないのだ。私は空中に打ち上げる事が出来れば、問答無用に相手の背後を取ることができる影舞葉にのみが欲しかった。
ああ、それと今回の修行にあたってリーは八門の最初の門、開門を開くことに成功したようだ。リーはその事に関して先生にはともかく、何故か私に礼を言いに来た。
「私は礼を言われるような事などした覚えはないのだが?」
「いえ、ヒジリさん。アカデミーの頃に貴女に言われた言葉があったからこそ僕は努力し続ける事ができたんです」
「それは君の克己心故だろうが。私は君に事実を伝えただけにすぎない」
「それでも、僕は貴女に感謝したいんですよ」
「……君は変わり者だな。まぁいいさ、君が納得しているなら好きにするといいさ」
「はい、そうさせてもらいます」
まったく、リーもネジと似て律儀な男と言うべきかなんと言うべきか。そして、いつのなればリーはさん付けをやめてくれるのだろうか?
「ところで、ヒジリさん」
「なんだ?」
「蓮華とは別の術を作ったと聞いたのですが……どのような術ですか?」
「仮にも忍者が他人に術の詳細を聞くな……と、言いたいが隠すような事でもないので構わないだろう。
影舞葉までは蓮華と同じで、その後の動きからはオリジナルだ。空中という事もあり地に足をつけられないので、柔拳の威力は地上で放つものより格段に威力が落ちる。なにしろ、実質上体だけの力しか使えないのだからな。
いくらチャクラを打ち込めるとはいえ威力が格段に落ちている事は事実だ。ではその落ちた威力でも十全に殺すとなると、防御の薄い箇所を攻めるしかない。
という訳で、両手を脇腹の肋骨で守られていない箇所に挟み込む形で当てて、そこから寸頸の形でチャクラと打撃を打ち込む。両手で脇腹を挟み込む事により、打ち込んだ衝撃は相手の体内で骨などに一切妨げられる事なく進み、最終的に体内で一つになる。そうなれば威力も格段に増し、相手の体内を確実に破壊する。
防御される心配も背後を取られたとなると反射的に後ろを確認しようとするので、その間に関して言えば下腹部は無防備故に心配はない」
「それで術の名前はなんですか?」
「名前か……元が蓮華という事から花の名前になる。そうだな、彼岸花と名付けよう」










 
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