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フェアリーテイルの終わり方

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十二幕 これからはずっと一緒だよ
  1幕

 
前書き
 時の迷宮 へ 

 
 ルドガーたちは〈魂の橋〉を渡り、ついに〈カナンの地〉に入り込んだ。

 尋常でない数の大歯車が、時計の中身のように絡み合って道という道を閉ざしている。まるで迷宮だ。
 その上、妙にぶくぶくした黒煙が迷宮のあちこちに漂っている。

「何でしょう、あのモヤモヤ」
「気味悪いな……」
「ただの瘴気よ」

 ミュゼがあっけらかんと答えた。

「長く触れ続けたら、ミラや私でもやられちゃうけど」
「言い方軽っ!」
「やれやれ、そんなもんの中を突き進むのかよ」
「すでにビズリーは進んだ」

 エルの〈鍵〉の力を利用して。想像すると、腹の底で熱い蛇がとぐろを巻くような心地がした。知らず、拳を握っていた。

「今視えている景色は、真実ではない」

 ミラが上下左右に腕を回した。すると、地水火風の大精霊が実体化し、道の一部にそれぞれの属性の力を放った。道が、空気から滲み出すように現れた。

「おそらくクロノスが空間をねじ曲げているのだろう」
「ミラ、ミュゼ。これ、どうにかできるか?」

 ルドガーは、このパーティで唯一精霊である姉妹に問いかけた。

「私とミラと、それにフェイなら、クロノスの力を打ち消しながら進めるだろうけど」
「フェイも?」
「ええ。今までフェイの戦いを観てきたけれど、フェイにもそれだけのポテンシャルはあるわ。ただ、オリジンの下に着いた時には、戦う力は残ってないでしょうね」
「――四大の力で全身を覆えば、自分の力を消費せずに進めるだろう」
「でも、それだと」
「そう。先に進めるのは4人だけってこと」
「たった、4人……」

 不安が色濃いフェイの呟きに、ミラは肯いた。

「そうだな。ビズリーの強さがどれほどかは分からないが、クロノスを相手にするには『たった』4人でしかない」
「四大……4つの属性の大精霊があと一組いれば、みんな一緒に進める?」
「理屈の上ではそうなるんだけど……」

 答えるジュードに対し、フェイはすっぱりと宣言した。

「じゃあ、わたしも呼ぶ。エレンピオス側の大精霊」
「なるほど、その手があったか」

 ミラはぽんと手を打ちつけた。
 しかし、フェイもミラも軽く言うが、人間が大精霊を4体も召喚するなど、エレンピオス人のルドガーにさえ一大事だと分かる。

「……」
「ん? どうしたのだ」
「ミラさまのさっきのアレ。腕ぐるって回すヤツ、どうやるの?」
「ああ。あれはな、まず両手をこう――」

 ミラのレクチャーを受けてから、フェイは覚束ない手つきでミラと同じ動作をした。
 空中に円陣が描かれる。ミラの緋、青、緑、茶の陣とは異なる色。白、オーキッド、漆黒、セルリアンブルーの印が十字を結び円陣を象る。

 そして、ソレラは顕現する。〈雷〉のヴォルト、〈光〉のアスカ、〈闇〉のシャドウ、〈氷〉のセルシウス。
 錚々たる顔ぶれが、たった一人の少女によって勢揃いした。

「これで、みんなで一緒に行ける。だよね?」
「あ、ああ。そうだよ。よくやったな、フェイ」

 ルドガーの褒め言葉に、フェイは赤らめた顔を俯かせて、両手の指をいじった。こうしていると、ルドガーの知るフェイ・メア・オベローンなのに。

(そういや少し前、エルが言ってた。『フェイが遠くに行きそうでコワイ』って。こういう意味だったのかもしれない)


 そして、彼らは迷宮へ足を踏み入れる。

 ミラの地水火風の四大精霊と、フェイが呼んだエレンピオス側の大精霊の加護のおかげで、あるはずのない道に踏み込んで落ちそうになったり、逆にないように見えていた道を見つけたりしながら、それなりに長い時間をかけて。

 ついに彼らは、〈審判の門〉へ出た。 
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