ソードアート・オンライン 神速の人狼
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神刀ー神威ー
前書き
はぁ、この頃筆が進まない( ̄− ̄) シーン…
前回までのあらすじ
アイテムを入手しに、ダンジョンまできたよ。
↓
ボスと戦うよ。
↓
ユーリの狼耳と尻尾がリズに見られちゃったよ←今ここ
「えぇぇぇぇぇぇ⁉︎」
「うるさい」
「〜〜〜〜ッ⁉︎イタイじゃない!」
鞘で殴られたリズは頭を抱えて、涙目になりつつ殴った張本人を睨みつける。
「何すんのよ⁉︎てか、その犬耳なんなのよ!」
「おわっ⁉︎逆ギレ!」
八重歯を抜き出しにしながら、ユーリにつかみかかる。それをひょいひょいとからかいながら躱す。
「ついにばれちったか……。まぁ、予想はしてたけどね」
あははとシィはじゃれ合う二人を見ながら笑っていた。
ーー数分後、
「また奇怪なスキルがあったもんね〜。ところでさ〜、その犬耳モフらせて」
「とりあえず、狼なんだけどな。そして、さっきから触ろうとすんな!」
「全く減るもんじゃないし、ケチ!」
頭の耳へと伸びる手をパシリも叩き落とすユーリ。
「ねぇー、ところでさ、例のアイテムって出たの?」
「あー、そうだったそうだった。私の方は出てないわね」
各々がそれぞれの取得したアイテムを確認していく。全員、ハズレのようでため息が漏れる。唯一、ユーリを除いて
「まぁ、予想した通りだな」
「ど、どういう事よ⁉︎」
「そもそも、NPCが言ってたモンスターと種類が違うだろ。」
「「へ?」」
はぁー……。と大きくため息を吐くと説明を始めるユーリ。
「お前ら寝てて聞いてなかったからだろ。NPCは首を赤い宝玉が埋まってる翼竜って言ってたんだよ。さっき倒したやつとは違うだろ?」
「な、なるほど。けど、此処にはティアマット以外ドラゴン系のモンスターはポップしないわよ!」
「此処には……な。」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべるとツカツカと壁側まで歩いていく。そして、右拳にライトエフェクトを纏わせ、閃打を発動させ壁を思い切り殴りつける。
するとガラガラと激しい音を立てながら土壁が崩壊して行き、マップには新たな道が出現する。
「なぁ⁉︎そんなのありぃ⁉︎」
「あー、なるほど。隠しステージですか……。」
リズは信じられないと言った風な感じで、シィはその逆で合点がいったと相槌を打つ。
「まぁ、RPGでよくある事だろ。さて、こっから隠しステージだけあってレベルが高くなってるだろうから気を引き締めろよ」
「あいあいさー」
リズも足手纏いにならないように気をつけなきゃと手に持つメイスのグリップ部分を、ギュッと握り込む
ーー数分後……
そんな私がいました…………はい。
平均レベルは10近くも上がっており、確かにモンスターは強くなっていた。だか、それ以上に強過ぎるのが二人。
戦闘に大鎌使いのシィも参戦し、そしてユーリはソードスキルが解放された事によって威勢良く立ち向かってきたモンスター達は皆、戦闘開始数秒後にはポリゴン片へと変えられていた。
初めの方の緊張感を返せ!と内心叫ぶリズだった
◆◇◆
「さて、着いたな。」
「案外、楽だったね〜」
「あんたらが強過ぎなだけでしょ……」
三人は洞窟には不釣り合いな巨大な鉄扉の前に居た。ここまでの道中全て一本道だったもののなかなかの量のモンスターがポップしてきていたが、ものの数分で最奥地まで辿り着いてしまい、リズは二人の規格外さに呆れを通り越し、つっこむ事をすでに放棄していた。
「準備はできたか?」
「えぇ、できてるわ」
「こっちもオッケーだよ」
各々がHP、武器、アイテム等の確認を終えるとユーリがおそらくボスが待っているだろう部屋へと続く扉を開ける。
中はティアマットと戦闘をした時のような円形の部屋。違いと言えば、直径が一回り大きくなった事と縦に伸びていることくらいである。そして、三人が中央まで歩みを進めるとバタンと勝手に扉が閉まる。
「なるほどね。後戻りはできないと……」
ユーリはポツリとつぶやくと己の刀へと手をかける。
『ギャァァァァ!!』
天井の方から、真紅の鱗に覆われた翼竜が激しい土煙を巻き上げながら三人の側へと降り立つ。
【クリムゾンレッド・ワイバーン】
真紅の翼竜に名前が表示され、それと同時に三本のHPゲージが現れる。そして、翼竜の咆哮が合図となり、戦いの火蓋がきって落とされる。
「いくぞ!」
「おー!やってやろうじゃないですか〜」
「もうこうなったらヤケよ!!」
翼竜向かって走りだし、シィが早速、大鎌を振り下ろす。だが、カーンと甲高い音と共に弾かれ、ノックバックをくらってしまう。すかさず、無防備なシィへと尻尾によるなぎ払いが振るわれる。
「やらせるか!」
間一髪、間に割り込んだユーリがソードスキルを発動させ尻尾をはじき返しつつ、胴体を浅く傷つける。
「ありがと。にしてもこいつ相当固いよ」
一度、翼竜と距離を置くと冷静に敵を分析する。高防御に加え、なかなか動きも素早い。二人がいくら強かろうと何が起こるかわからないため用心してかからなければならない。
「シィは遊撃でなるべく防御の薄い場所を探ってくれ。リズは俺がカバーしてくから積極的に殴ってけ」
「わ、わかった!ユーリ危なくなったら助けなさいよね!」
「任せろ!」
リズは元々生産職であるため戦闘に自信が無さげである。
シィは巧みに翼竜の尻尾や爪攻撃を躱していき、腹や脚を切りつけていく。リズも負けじと打撃系統のスキルを使い、地道にダメージを稼いでいく。
じわりじわりと、しかし一方的に翼竜のHPバーは削られていき、ついに一本目を削りきる。
『グギャァァァァァァ!!』
翼竜は怒り、叫びをあげると息を大きく吸い込み、口から火炎球を吐き出す。それを察知した三人は火炎球の軌道から反れる事によって回避する。
「うわー、火炎球とか……。見た目とか、攻撃方法からしてリオ○ウスだな。」
「この調子じゃ、サマーソルトとかやってきそうだね〜」
「なんの話よいったい……。」
戦闘中のはずなのにのほほんと会話しだす二人を見て、思わず呟いてしまう。ジクザグに移動しながら火炎球を躱しつつ接近し攻撃を再開していく。
大抵のボスモンスターはHPバーが一本減る事に行動パターンが変わったり、攻撃方法が増えたりする。そして、この翼竜も例に漏れない。
一歩後ろに下がるモーションの後、翼を使い推進力を得ると宙返り。そして、その際の遠心力によって勢いよく尻尾が振られシィへと襲う。間一髪のところで大鎌を盾のようにしてカバーが間に合うが完全に防ぎれていなかったため相応のダメージを喰らってしまう。
「うわっ、本当にやってきたよ。ユーリ、回復するから少しお願い!」
「ん、リョーカイ」
シィが後方へと下がったのと同時に翼竜に攻撃を加えヘイト値を稼ぎタゲを自身へと向ける。翼竜は正面で武器を構えるユーリめがけ火炎球を浴びせようと息を吸い込む。そして、いざ吐き出そうとする瞬間、ユーリは一瞬で肉迫すると浮雲を発動させ、顎を下からカチ上げて強制的に口を閉じさせる。放出されるはずだったエネルギーは行き場を失い、翼竜の体内で弾ける。自爆させられた翼竜は口から煙を吐き出し、一時的にスタン状態に陥る。それを好機とみた三人は痛烈な攻撃を仕掛けていき、早くも二本目のHPバーが消える。
『グガァァァァァァ!!』
ついに残りHPが一本分となり、怒り狂った翼竜は三人から距離を取り大量に周りの空気を吸い込む。
「アレはまずいよ!」
何が来るかいち早く察したシィは二人に呼びかける。
恐らく、火炎ブレスによる全体攻撃。私やユーリはレベル的にあの攻撃を食らったとしても残りHPは安全圏だろう。だが、私たちよりもレベルが20以上低いリズは別だ。確実に危険に陥る。どうにかしなければと思考を巡らせるが攻撃を放つ前に落とすしか思い浮かばない。だが、今からでは距離が遠く間に合わない。それに相手は攻撃が届くか届かないくらいの位置でホバリングしているため上手くディレイさせれるか不安である。
ユーリは刀を納刀すると、半歩後ろに身体を反らし左手を鞘へ、柄に右手をかけ、腰だめに構え、
なぎ払った
剛ッッッッッ!!
「「なぁ⁉︎」」
思わず声をあげる二人。
神速の速度で薙ぎ払われた刀は紅い軌跡を残しつつ、強烈な突風を巻き起こす。それは真っ直ぐに壁のように迫ってくる炎にぶつかると霧散させる。そのまま残り風の煽りを受けた翼竜は空中で態勢を崩しそうになる。
「な、あんた何したのよ!」
「抜刀?」
「嘘〜……」
コテンと首を傾げつつ言うユーリに対し、この時ばかりはシィもユーリの規格外さに呆れる。ユーリは抜刀術の要領で刀を抜き放ちその時の勢いで強烈な風を発生、炎ブレスへとぶつけたのだ。むちゃくちゃである。
「さて、今度はこっちの番だな……。」
刀を納刀したまま翼竜の下へと走りっていく。そして、翼竜へと辿り着くと噛みつき攻撃を跳ぶことによって回避し、さらに頭を踏みつけてより高いところへと跳躍する。一度空中で停止するとそのまま頭から翼竜の背中へと落下するような軌道で落ちていく。そして、空中で居合の構えをとり、
「落ちろ……」
抜刀術 重単発技 紫電一閃
ポツリと呟き、鞘から刀が抜き放たれる。刀はバチバチと紫色の雷をスパークさせ、深く翼竜の背中を抉る。強烈な一撃を見舞われぐらりと空中での態勢が崩れる。
体術 単発技 月鎚
そして、追撃でくるりと空中で身体を一回転させ勢いをつけるとかかと落としを翼竜の頭部へと食らわせる。衝撃に耐えられなくなりついに地面へと落下する翼竜。下ではすでにシィとリズが武器を構えスタンバイしており二人とも黒い笑みを浮かべている。そ
「さっきはやってくれたじゃない?仕返しよ!!」
「ジ・エンドだね♪」
にっこりとシィが死の宣告を言い放ち、リズは抵抗のできない翼竜へと怒りのままにメイスをぶつける。その後、スタンが解けた瞬間に転けさせられ、所為嵌め技をされ、少しの間、切ない叫びがボス部屋へと響いていた。そして、それが収まったのは翼竜がポリゴン片へと帰った時だった。
翼竜が倒されるとリズの頭上に黄金の文字が輝き、ファンファーレが鳴り響く。つまりレベルアップしたのだ。やったーと舞い上がっているリズにユーリは紅い球体をオブジェクト化させるとリズへと投げ、それを危なげにキャッチし、大きく目を見開く。
「こ、これって…………」
「クエストの目的の品だな」
アイテムを鑑定すると【紅龍玉】と表され、相当高く売れるレアアイテムらしい。そして、リズは目を大きく見開くと歓喜する。
「これで新しい鍛冶用アイテムが手に入るのね!ヒャッホーイ!!」
このクエスト及びこの隠しステージまでクリアしたのへ三人が最初だ。よって得られる感動もひとしおだ。
「さて、リズ。喜んでいるところ悪いが早く刀を打ってもらいたいんだが?」
あくまで冷静を装って話を進めるユーリだが、彼の服の間から覗いている尻尾はゆらゆらと期待するかのように揺れている。それを見たシィは小さく吹き出す。
「そうね、私も早く武器を作りたいしね」
言うが早いか三人は転移結晶を取り出し、洞窟から脱出する。その後、クエストの品を届け、NPCからクエスト報酬を貰う事に成功する。リンダースにあるリズの店へと帰還した事には既に陽が落ち、夕暮れ時となっていた。
「さぁて、作るわよ!!」
リズは炉などを取り替え準備すると、インゴット片手に張り切って工房の奥へと行ってしまう。二人はそれを見おくりつつ近場の椅子に腰をかける。
カーン、カーンと規則正しいリズムが店の奥から聞こえ、それが約数十分経ったころにようやく止む。打ち終わったらしいので工房へと入って見ると、額の汗を拭っているの傍らに、大太刀が置かれていた。リズは二人の姿を見を認識すると、ドヤ顏を浮かべる。
「きたわね。できたわよ、あんたの刀が。そして、私が打ってきた中で最高傑作……。」
感無量ですという風な笑みを浮かべるリズを横目にユーリは大太刀を手に取るとニ、三回素振りをすると、刀をまじまじと見つめる。
全体的に装飾は少なめだが一目見てその性能の良さがわかる刀。そして、何より目を引くのがその刀身。一切の陰りなく、外の光を受けて銀白に輝いている。
「名前は《神刀ー神威ー》。聞いたことない名前だから、確実にワンオフ品ね。しかも武器に神様系統の名前が付くなんて相当よ」
「神威……神の力を宿す刀ってことか?」
「へえー、そんな意味なんだ。なんか凄いね」
「今使ってる紅椿よりもステータスは高いぞ。あ、そういえば刀の代金は?」
ゆーりがそう言うとリズは首を横に振る。
「いや、さすがに誰もクリアしてないクエストをクリアしてもらってしかも素材のインゴットまでもらっていたら代金なんて貰えないわよ。けど……」
リズはユーリに少し疑うような視線を向けると、
「一つ質問に答えくれないかしら?どうして新しい刀がいるの?今使ってる紅椿でも十分だと思うけど……。」
リズの言葉に反応し、ピクリとユーリの狼耳が動く。
やっぱ、スキルの事ばれてたか……。まぁ、どうせ隠せどうせないから言うか
何かを諦めたように溜息をつくと腰に吊るしてある鞘から紅椿を抜き放つ。だが、刀身は酷く損傷し、紅く妖艶な輝きは失われていた。
「なっ…………なんで……」
リズはそんな刀の状態を見て、絶句する。
「どうして、こうなってるのよ⁉︎普通、こうはならないわよ!」
「まぁ、とりあえず説明より、見せた方が早いだろ。とその前に鞘を見繕ってくれる?」
「わ、わかったわ…………。けど、ちゃんと説明しなさいよね!」
リズは急いでストレージを確認し、鞘を一振り取り出す。漆塗りの漆黒の鞘に金の装飾がされており、神威とマッチしている。そして、刀を腰に吊るし店の表へと出る。
「外に出てどうするのよ」
「まぁ、見ればわかるって」
シィはそう言うとユーリの方を見て、やってくださいなと伝える。
ユーリは居合の構えをとると一気に刀を鞘から抜き放つ。目にも留まらぬ速さで抜刀された刀は虚空に光のアークを描き、再び鞘へと納刀される。その光景を目の当たりにしたリズは目を大きく見開き、口をパクパクとさせ驚いている。
「な、何……これ……」
「抜刀術……ヒースの【神聖剣】と同じユニークスキルだと思う。」
ユニークスキルは修得方法不明、かつ一人しか修得していないスキルをさす単語で現在確認されているユニークスキルホルダーは攻略組トップギルド【血盟騎士団】の団長、ヒースクリフのみだ。
そして、ユーリのユニークスキル【抜刀術】は、速さとリーチに長けている分、外すと技後硬直が長く、さらにモーションの始動が全て納刀状態からなので発動の際は簡単にバレてしまう。しかし、間合いに入ってしまえば神速の太刀筋から逃れるのはほぼ困難であり、防いだとしても強烈なノックバックを強いられ二撃を入れられてしまう。それほどまでにユニークスキルは桁違いの強さを持っているのだ。
「なるほどね、あんたがめちゃくちゃ強いのに納得だわ。まさか二人目のユニークスキルホルダーだったとはね。けど、それと刀があんなに激しく損傷してるのとは関係なくない?」
「それがな威力が高過ぎて、並大抵の武器だとヒットの際の衝撃に耐えられないんだよ。紅椿でも耐えれて10回くらいが限度だな。」
「そーそー。二人でクエに行ってる時に刀がポッキリ逝った時はびっくりしたよ〜」
「さいですか……。」
シィの過去談を聞き、肩を竦める。
「あ……後この事は誰に言うなよ」
釘を刺されたウゲッと悪戯を担任に見つかった子供みたいな顔をする。
「わ、わかったわよ…………。その代わり、毎回武器のメンテに来なさいよね!」
「りょーかい。じゃ、また今度な」
「おやすみ〜」
別れを告げ、帰路につく頃にはすでに月が上り暗くなっていた。
後書き
さて、次回はついにクウォーターボス戦です!!
そして、ユーリが攻略組へと復帰。さて、どんな戦いを繰り広げるのか!!
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