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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第60話 ヴィヴィオの想い

 
前書き
こんにちはblueoceanです。

明日でSTS編も2年目が過ぎます。


いやぁ、長いなぁ………
前作と合わせるともう5年くらい?それすらも曖昧になってきてます。

のんびりで申し訳ないのですが、ラストスパート、なるべく早く投稿出来る様に頑張りますのでよろしくお願いします……… 

 
「「「………」」」
「そんな身構えないでくれ。………って俺ってそんなに危険に見えるかな………?」
「この反応は警戒しているって言うより驚いて返す言葉が無いってところじゃないかしら?」

ラグナルにそう言われ、納得したウォーレンは一回咳払いし、真面目な顔で再び口を開いた。

「さて、どこから話すべきか……取り敢えず死んだ俺が何でこの場にいるのかだけど、今の俺は元のウォーレン・アレストの残滓でしかない」
「それは聞いた。………だがどう言うことなのだ?」
「そもそも零治はあのバルトマンとの戦いで死んだんだ。だけど俺自身気が付かなかったレアスキルがあって、それが『自身の魂を相手に移し、相手を蘇生させる。例え自分の肉体が無くなっていても対象の肉体さえ残ってれば蘇生させられる』って奴だ。俺は死んだ世界でアイツと会い、俺の魂を渡した事で復活した」
「そんな事出来るんだ………」

信じられないような顔でライが思わず呟いた。

「確かに戦闘後もあの時受けた瀕死のダメージは無かった様な状態になってはいたが………」
「まさかそんな裏話があったなんて………」

余りに現実離れした話にイマイチ実感が湧かない3人。

「まあ普通の人じゃ無理だよ。俺とアイツの付き合い、そしてアイツ自身にも原因があったんだが………」

と頬を掻きながら困った顔で説明するウォーレン。

「レイ自身も?」
「………それはともかく、そうして魂を零治に移した俺自身はこうやって残滓として少しずつ消えていく中、今も零治の中に居たってわけだ。こいつ、あの戦闘後も結構ダメージを負ったりしてたろ?」
「はい、いくら心配しても無理をしますからレイは………」
「その時の早い傷の治りも俺の魂が移った影響による自己修復能力によるものなんだ。………まあそれも俺の残滓が消えた時点で綺麗さっぱりなくなる」
「それじゃあやっぱり今のレイの身体も………」
「崩壊寸前だった。あともう少し戦闘が長くなっていたら俺じゃカバーしきれなくなるところだった」

そう説明するウォーレンの話を聞き、3人は緊張を解くように深くため息を吐いた。

「まあ今の内にリラックスしててくれ。この後、零治を助け出すのにかなり苦労するだろうしな」
「えっ!?でもそんなにゆっくりしているわけにも………」
「それでも色々と3人には話さなくちゃいけない事がある。零治の身体を操っているホムラの事、そして零治の秘密、最後に零治も知らないラグナルの秘密だ。………今の零治はもう霧の様な状態で、辛うじて俺が何とかその場に留めている状態だ。アイツを助けるには3人とそしてラグナルの協力が必要なんだ」
「あの………何故ラグナルは銀髪じゃなくて金髪なったのですか?」

ウォーレンが話している中、ずっと疑問に感じていた星が思わず手を上げ、問いかけた。

「そうですね、では先ずはそれから話す事にするわ………3人には信じられない話だと思うけど、心して聞いてね」

そう言ってラグナルは静かに話し始めた………



















「どうしたのバルト?動きが遅いよ………?」
「ちっ、ヴィヴィオやるじゃねえか!!」

ヴィヴィオの戦闘スタイルは拳による手数の多い攻撃方法。バルトの大斧だと、どうしてもついて行けず押され気味になってしまう。とはいえバルト自身そういった相手とも戦って勝ってきた。

(聖王は伊達じゃないってことか………)

ヴィヴィオは今まで相手にして来た敵と大きく違っていたのは攻撃力の高さだった。
一撃一撃が小さく鋭いながらその威力は今までの同じタイプの相手とはけた違いに強かったのだ。

「はああああああ!!」
「ぐうっ………」

ヴィヴィオのハイキックがバルトの脇腹へと入る。辛うじて腕を挟み、防御したがそれでも衝撃がバルトの体を襲う。

「バルトさん離れて!!」
「うるせえ!!一生懸命やろうとしてるだろうが!!」

ヴィヴィオはクロスレンジでバルトから引っ付いた様な距離で戦っている為、後方から援護と思っていたなのははタイミングを見計らいながらも全く手が出せずにいた。

「こうなったら私も………!!」
「!?なのは待て!!」

待ちきれずヴィヴィオとバルトの元へと向かうなのは。

「そう、なのはお姉ちゃんならどうにかしようとするよね」
「ちっ!!」

なのはの方へ向かおうとしたヴィヴィオを掴もうとするが、その手を弾かれ、逆に腹に肘を入れられてしまった。

「うぐっ!?」

思わずうずくまりそうになるバルトだったが、何とか持ち堪え、ヴィヴィオから目を離さないでいたが、等の本人はバルトには目もくれずなのはの方へと向かって行った。

「なのは!!」
「油断したねなのはお姉ちゃん」

そう言ってなのはに拳を突き出した。

「あまり舐めないでヴィヴィオちゃん!!」

しかしなのははレイジングハートを槍の様に扱い、ヴィヴィオの攻撃を防いでいる。

「私は別にクロスレンジで戦えないからロングレンジで戦っていた訳じゃないんだよ!!」
「ヴィヴィオの手数にも付いて行ってる………ならば!!」

斧に自身の魔力を貯め、構える。

「なのは!!」
「!!」

名前を呼ばれた瞬間、ヴィヴィオの攻撃を受ける前にその場から離れるなのは。

「逃がさない!!」
「フープバインド!!」

追って来たヴィヴィオはなのはのバインドを避けることは出来ず、輪っかのよって拘束されてしまう。

「こんなものすぐ………」
「だが一瞬でも止まればこっちもんなんだよ、ボルティックブレイカー!!」

バルトの放った雷の砲撃は身動きの取れないヴィヴィオへと向かって行った。

「くっ!!」

バインドを無理矢理引き千切った時にはもう遅かった。既にヴィヴィオの目の前まで砲撃は来ていて回避するのは不可能。

「どうだヴィヴィオ?」

爆発の中のヴィヴィオに問いかける様に話すバルト。手応えは感じていたものの、こんなに簡単に済むとは思っていなかった。

「ビックリした………でも流石だね2人共。やっぱり一筋縄じゃいかないや」

現れたヴィヴィオは特に外傷は無く、何事も無かった様な顔で再び現れた。

「聞いていいか?」
「何?」
「ボルティックブレイカーじゃお前を倒すことは出来ねえとは思ってたが、無傷とはどう言った事だ?」
「そうだよ、回避も出来ないと感じて防御してたみたいだけどそれだけじゃ抑えられる様な威力じゃ無かった………」

バルトとなのはの質問を聞いていたヴィヴィオ。

「ふふ………」
「どうした?何か変な質問でもしたか?」
「うん。だってバルトは劣化品だったみたいだけど使っていたじゃない」
「使っていた………?まさか!!」
「そう、聖王の鎧。だけどバルトが使っていた劣化品とは違う本当の力だよ?」
「ヴィヴィオ………!!」

バルトは内心焦っていた。まだ子供であるヴィヴィオの成人化、そして聖王のみが使えたと言われる鎧の使用。

「なのは、勝負を急がねえといけない。このままじゃヴィヴィオの身体が持たなくなる!!」
「えっ!?」
「今のあいつじゃ自分の力で自分を滅ぼす!!クレインはヴィヴィオの事を捨て駒にしか思ってねえ!!」
「そんな!!ヴィヴィオちゃん、もうやめて!!」
「うるさい!!だったら邪魔をしないで!!」

なのはの悲痛の叫びもヴィヴィオには届かない。

「この分からず屋め!!」
「バルトにだけは言われたくない!!」

そう言って自身の魔力を高める。
ヴィヴィオは衣を纏う様に虹色の魔力を纏った。

「バルトさん、あれってもしかして………」
「魔力による強制的な肉体強化………俺の雷神化の真似事か……バカ野郎が!!」

そう吐き捨て、バルトも自身の雷を纏う。

「これで決めるよ!!」
「舐めるなよヴィヴィオ!!そんな猿真似で俺達を倒せると思うな!!」

そう宣言し、目にも止まらぬ速さでヴィヴィオへと向かうバルト。

「ヴィヴィオちゃん、本当にただ本当のお父さんとお母さんと会いたいだけなの………?」

そんな中、なのはの中にヴィヴィオに違和感を感じていたのだった………















「嘘………」
「そんな事ありえん………」

ラグナルの話した佐藤孝介だった時の話は3人にとってかなり衝撃的な内容だった。
しかしそれと同じで、零治が妙に大人びいていた事や、自分達と恋仲になった後の対応など、色々と納得できる覚えがあるからこそ、それが嘘だと思えなかった。

「いいえ。孝介があなた達と初めて会った時、そして優理の時に人間にしたって言ったでしょ?あの時誤魔化した理由は神様によって与えられた3つの願いの2つなの。そしてそれが零治が転生者だって言う証拠よ。その力事態が現段階……おそらくこれからも一生出来る者は現れないと思うわ」

ラグナルの言葉が最終的に決めてとなり、誰も反論出来なかった。

「………じゃあ今こうやっている私達もアニメの話の一つってことなの?」
「いいえ。もうアニメだった『リリカルなのは』とはかけ離れているわ。例えで言えば今回のゆりかご事件、行うのはイーグレイ家の面々よ」
「ジェイルさんがですか!?」
「信じられん………」

今の光景からは想像出来ないのか3人とも、驚いてしまった。

「と言っても私が知っているわけじゃなくて、全部本人から聞いた話なんだけどね。それに彼も詳しかったわけじゃないし」

と苦笑いしながら答えるラグナル。

「じゃあレイは本当に一回殺されて、神様の力で生き返ったんだ………」
「正しくは転生。新たな命となって再び生を受けたの。その時に零治は前世の記憶、顔や体型もほぼ同じ状態で生まれ変わった。………まあ誰かが母親になって生まれ変わったわけじゃ無いから年齢も小学3年生からで家族も誰もいなかったし、果たしてそれが本当に転生と呼べるのか怪しいと言えば怪しいけど」
「えっ?じゃああの家って………?」
「神様が予め準備してくれたものよ」
「なるほど、だからレイはあのマンションから特別離れようとは思わなかったんだな………」

零治が傭兵稼業を控え始めた頃、離れた学校に通う3人の為に引っ越しをしたらどうだとシャイデが提案した事があった。

『でも引っ越しとなると色々面倒だしな………確かに星達の為にだったら引っ越した方が良いけどな………結構この地でも住み馴れてるし、新しい場所ってのもな………』

とその時に零治が話した言葉である。

「まあそれも1つだと思うけど、後はなのはさん達がどう動くのか把握しておきたいってのもあったわね。3人の事もあったし、無闇に逃げてばったりっていう可能性もあったかもしれないし」
「その時から私達は知らずしてレイに守られていたんですね………」

その星の言葉に3人は改めて零治の大切さを感じていた。

「絶対にレイを連れ帰ろう………」
「ああ、我も絶対に諦めん………!!」
「………ラグナル、もう一つ聞きたい事があるんですけど」
「何かしら?」

3人で決意を再確認しつつ、再び星が質問する。

「零治が転生者って事は加奈と桐谷も………」
「ええ、転生者よ。………もっとも何故同じ世界なのか、神様の願いをどう使ったのかは零治も本人達には聞いてなかったから分からないけどね」
「なるほど………」
「じゃあ加奈や桐谷の持ってるデバイスも今のラグナルみたいな事が出来るの?」
「………恐らく出来ないわ。私達3基は同じ時に作られ、私は零治に、他2基は別の転生者様にとストックされる予定だったんだけど、零治にデバイスが渡された時大きく変わってしまった。」
「変わった?それは………」
「それままた後で説明させてもらうわ夜美、とにかくその時点で私は他二基と変わった」
「へえ………ラグナルは何か特別な気がしてたけど、やっぱり凄いデバイスだったんだね!!」

と、自分の事の様に嬉しそうに語るライの言葉に神妙な顔でいたラグナルの表情が少し和らいだ。

「もう一つ我からも聞いて良いか?」
「何かしら?」
「さっきラグナルがレイの転生の話でほぼって言いっていたがレイの転生は失敗したのか?」

夜美の質問に再び神妙な顔になるラグナル。そんな中重々しく語りだした。

「………そうね、確かに私はほぼって言ったけど、実際はどこもミスなんて無い、完璧な状態よ。だけど零治自身が気が付いていない欠けたものがあるの」
「欠けたもの………?」

ラグナルの言い回しに思わず呟いたライであったが、ラグナルは気にせず言葉を続けた。

「記憶も年齢もちゃんと自分の思った通りで零治自身は疑問にも思わなかったでしょうね………加奈や桐谷もそうだけど、転生者の誰もが自分の死因を忘れてる事を」
「死因を忘れる………?」
「そう、これは大きなルールみたいで、皆がそう決まっている事なの。だから彼等は気づかずその時の話をしなかった。どうやって死んだのか、あの時何があったのか等ね………」
「だけどそれは忘れているだけであって………」
「夜美の言う通り、きっかけによっては思い出す事もあるわ。………だけど零治にはそれが無い」
「無い………?」

話を続けていく上で3人共直感的に感じた。次の言葉が零治の秘密の大きな物だと言う事を………

「零治の記憶はね、私のお願いの一つで一部の記憶を蘇らない様に封印してもらったからよ」

























「ガアアアアアア!!!」
「おっと」

バルトマンが振り落した斧をわずかな動きで避け、避け際に拳を左胸に叩きこむクレイン。

「うぐっ!?」
「雷神化してこれとはね。バルト・ベルバインの方がもっと速く動けてるよ?」

そう言いつつ、再び拳を同じ個所へ何度もたたき込んだ。
雷神化したバルトマンだったが、戦況は変わらなかった。確かにスピードもパワーもクレインより上回っていたのだが、それも届かずただただカウンターを受けるばかり。バルトマン自身にかかる負担の影響もあり、クレインは負担を少なくし、バルトマンが自滅するのを待っていたのだった。

(コイツ、やはり………!!)

「誰が君を回収したと?前に付けたレリックの影響で君は魔力枯渇症に加え、心臓自体にダメージを負ってしまった。このまま安静にしてれば暫くは生きて行けただろうけど、今の君はどこまでもつのやら………だからこそバルト・ベルバインを造り、君は捨てたのだが、まさか牙を向いてくるとはね………」
「うるせえ!!テメエだけは俺でカタを付けなくちゃけねえんだよ!!」
「その意地こそ自滅の道だと何故思わないんだか………それとも分かっててやっているのかい?それこそ君はバカだと言わざるおえない」
「バカで結構!!俺の生き方なんてバカなだけだろうが、それでも全うに生きている奴の邪魔をさせるわけにはいかないだろ!!」
「他人を想う?君がかい?人も生物もゴミの様に殺し、巻き込んだ君が?」

そう言って大きな声で笑うクレイン。
怒り狂うかと思っていたが、バルトマンの反応は予想外だった。

「笑えばいいさ、俺自身もバカバカしいとは思ってんだからな。実際最初は誰がどうなろうとお前を殺せればいいと思ってたんだよ。………だがアイツと一緒に居て、そしてアイツと久しぶりに会って俺も変わっちまったんだよ………」
「アイツ………?」
「バカが付くほどの親バカな奴でよ………自分も狙われてんのに、自分だけで冥王教会どうにかしようと動いたりして、全く………見ていられなかった。もう1人はアイツのせいじゃねえのに、律儀に俺の事を待っていやがった………そんでもって余計な物まで持たせやがって………」
「………」

その話を聞いている内にクレインの顔に笑みが消えていった。

「だけどよ、そんな奴等を俺は大事に思っちまったんだ。認めたくねえ、また弱くなっちまう、あの時みたいに守れずただただ暴れるだけの俺に………だけどよ、ふとあの時の戦いを思い出しちまった。俺を倒した2人のコンビをよ………あの2人も大事な者達の為に俺に向かって来た」
「黒の亡霊………」
「俺もあやかってみようかと思ってな。だからなクレイン………」

そう話すバルトマンの動きが変わった。ボロボロでフラフラの筈なのに、体の芯はしっかりしていて、目の光が一層強くなった。

「俺も自分の守りたい者を守る為に………テメエを殺す!!!!」

更に強くなった力に身構えながらもクレインは逃げず相対する。

「分かった、私も君を倒そう。虫唾が走る………根拠もない力に振り回される様が私は一番嫌いなんだよ」
そう言って右腕を少し引き、拳を力強く握る。

「リボルリングバンカー………」

その腕自体が巨大な一本の杭の様に力が高まる。

「ワールド・オブ・ゼロ!!!」

クレインへ向かうと共に最大級に一気に溜めこんだ魔力を直接ぶつける為、斧を振り上げた。


「消え去れええええええ!!!」
「確かに当たれば消え去るだろう、外れてもその余波は凄まじいだろうね、だが………!!」

斧を振り下ろす際、バルトマンのスピードに負けないほどのスピードで懐に潜り込むクレイン。

「なっ………!?」
「誰も君のスピードに付いていないとは言っていないよ」

そう言ってそのままアッパーの様にバルトマンの右腕に拳を当て、振り上げた。そして………

「終わりだよ」

右拳に溜めこんだエネルギーをそのまま撃ち込んだ………































「……………」
「どうした桐谷?」
「おかしい………」
「何がだ?もしかして道を間違えてたか?」

ふと、歩みを止め、倒した敵の残骸を見る桐谷。

「このブラックサレナ、倒して動かなくなったが、どうにも違和感がある。機械ならば爆発などして爆散しても良い筈だが、一度も見ていない」
「管理局で使っていたバリアアーマーと同じ原理だからだろ?だからガジェットみたいに爆発しないんだよ」
「中に居るのがアンドロイドなのにか?」

そう言った桐谷の言葉にヴィータもハッと表情を変えた。

「確かに変だ。アンドロイドがどんなものか分からないけど、機械で出来ているなら爆発しても良い筈だ!桐谷もステークで打ち抜いているし、私のハンマーで砕いている筈だ!!」
「ヴィータ、外に連絡は?」
「駄目だ、やっぱりAMFの影響で出来ない………」
「俺達は外に行こう、もしあの事件が今日の為のものだったら外のみんなが危険になる!!!」
「あの事件………?」
「マリアージュ事件だ」
























「……………」

雷神化し、ヴィヴィオと戦うバルト。対してヴィヴィオも聖王の力を解放し、負けじとバルトに対する。
しかしそこは戦いの経験の差なのか、扱い切れない力と、対等とは言わないものの、負けないほどの力を持つ雷神化したバルトに分があり、僅かずつであるが、徐々にヴィヴィオを追い詰めていく。

そんな中、なのはは先ほどの事が気になり、援護もそっちのけで思考を巡らせていた。

「どうしたヴィヴィオ?動きが遅いぞ!!」
「くっ………!!調子に乗るな!!ボルティックランサー!!」

向かって来たバルトに向かって虹色の槍を複数展開、発射した。

「甘いっての!!ボルティックランサー!!」

対してバルトも同じくボルティックランサーで全て撃ち落とす。

「ディバインバスター!!」
「おっ!?」

しかしヴィヴィオはそれを想定していたのか、直ぐに追撃としてなのはの使うディバインバスターを真似た砲撃を行った。

「そんなもの!!」

それでもバルトも負けては居ない、向かってくる砲撃を避けようともせず、魔力を溜めたバルバドスの刃で真っ向から受け止めた。

「バルトさん!!」
「こんなもの余裕だ!!」

なのはが心配そうな声を上げるが、バルトは自身満々にそう答え、言葉通り、砲撃を斬り裂いた。

「一撃粉砕………」
「んな!?」
「クリティカルブレード!!」

しかし更にヴィヴィオは続けてジャンプし、一回転した勢いそのままに足を刃に見立て、魔力を溜めた回転蹴りでバルトを攻撃してきた。

「ちぃ………!!」

今度は斧の側面を向け、完全に守りの状態で受け止める。

「うぐっ………!!」

地面にめり込むほどの衝撃がバルトを襲う。しかしバルバドスは壊れず、その威力に耐えていた。

「………」

ヴィヴィオは何も言わずバルトから距離を取り構える。

「やるじゃねえか、ちゃんと先の先まで考えて攻撃してくる」
「まだまだこれからだよバルト。今度こそちゃんと決める!!」

そう言ってヴィヴィオが再び攻めようとした時、ヴィヴィオの行く先を遮るようにピンクの砲撃が放たれた。

「………今度は2人掛かりで?いいよ、私は負けないから」
「違うよ、私はヴィヴィオちゃん、………ううん、ヴィヴィオの本当の気持ちを知りたいの」
「本当の気持ち?だからそれは………」
「うん、多分それもあると思う。だけどそれが本心じゃないよね?」
「………何を根拠に言ってるの?」

動揺を誘うような話し方で話すなのは。
それでもヴィヴィオはただ冷たい目のまま、返事を返した。

「だって、もし本当のパパとママが大事で、私達よりも好きならどうして私達の魔法を使ってるの?」
「それは私が使いやすい魔法を………」
「機動六課のみんなが居た中で私達だけ?」

なのはの言う通りヴィヴィオの魔法は魔力の色が違うものの、なのはとバルトと同じ魔法だった。

「特にスバルはヴィヴィオと同じ格闘を主体とした戦闘スタイル。バルトさんみたいに小技よりも大技が多い攻撃よりもはるかに使いやすいし、私も魔法も砲撃主体で、本来ヴィヴィオにとって使いづらい技。………だけどどうして私達の魔法しか使わないの?」
「そ、それは………」
「ねえ、ヴィヴィオ教えて欲しいの、私やバルトさんのどこが気に入らないの?私達は確かにヴィヴィオの本当の両親じゃない。だけどそれでも負けない様にヴィヴィオを愛してきたつもりだよ?………もしかしてそれが余計だった?」
「そんな事無い!!だってなのはお姉ちゃんもバルトも………あっ………」

思わず出てしまった言葉にヴィヴィオは口籠ってしまった。

「そうなの?それなら嬉しいかな。私達の気持ち、ちゃんとヴィヴィオに伝わっていたんだね」
「なのはお姉ちゃん………」

心の底から嬉しそうな顔をするなのはにヴィヴィオは何とも言えない顔で口籠った。

「ヴィヴィオ、テメエが本当の親を欲しがる気持ち。………正直俺にはよく分からねえ。俺には親って呼べる奴はいなかったからな。だけどそれでも大事に思ってくれる奴は居た。それを失うのは自分を見失うほどキツかった。ヴィヴィオ、お前は俺やなのはを殺してその気持ちを感じずちゃんと両親に会う事が出来るか?」
「う、うるさい!!」
「会って本当に幸せになれると思うか?」
「うるさいうるさい!!」

まるで子供の様に駄々をこねるヴィヴィオ。

「そんなうるさい私達もこのままじゃいなくなるんだよ?それでも良いのヴィヴィオ?」
「いなくなる………?」

優しくあやすようななのはの言葉にヴィヴィオを深く揺らいだ。

「そうだ、お前は両親を見つけるまで1人になる。この聖王のゆりかごが動き続ければ俺達だって無事じゃ済まないだろう。もしかしたらお前の両親も無事じゃ済まなくなるかもしれない」
「そ、そんな事は無いもん!!クレインが聖王の血を持つものには害は無いって!!!」
「じゃあ俺達は駄目って事だな」
「あっ………」

バルトの言葉を聞いたヴィヴィオは自然と腕に入っていた力が抜けて行った。

「あ、あれ………?」

手を持ち上げるが先ほどの様に力が上手く入らない。

「ヴィヴィオ、もう止めよう。このままじゃヴィヴィオ両親を見つけるまで1人だよ?寂しくないの?」
「1人………?」
「ああ。お前を知っている奴はこの世界からいなくなる。そうなったらお前は誰も居ない世界で1人、本当の両親を待たなくちゃいけなくなる」
「で、でもクレイン達も一緒に………」
「待ってくれると思うか?」

バルトの問いにヴィヴィオは何も返せなかった。

「ヴィヴィオ考えてみて。………悲しくない?誰も居ない世界でヴィヴィオは1人ぼっちでずっと両親を待つんだよ?」
「やめて………」
「もしかしたらクレインの嘘かもしれない。迎えに来ないで自分で探して途方に暮れて………本当にお前の考える幸せがやってくるか?」
「やめて!!!」

そんな2人の問いにヴィヴィオは大きな声を上げて拒絶した。

「だってこうするしかないの!!2人はいずれ結婚して子供が出来たら本当の子供じゃない私なんて要らなくなる………親って言うのはそうだってクレインもイクトも!!だったら本当のお父さんお母さんが居ないと駄目なの!!」

そう叫ぶように答えたヴィヴィオの目には涙が浮かんでいた。

「ヴィヴィオ………」
「私だって2人とお別れするなんて嫌だよ!!私も2人の事は大好きだし、なのはお姉ちゃんがお母さんになってくれたら私嬉しいもん!!!だけどそうして捨てられちゃったら私、私………」

泣きそうになりながら訴える様に答えるヴィヴィオ。
そんなヴィヴィオにゆっくりと近づくバルトは………

「バカ野郎!!!!!!!!」

目の前で大きな声でヴィヴィオに怒った。

「下らねえ心配しやがって!!誰がお前を捨てる?ふざけんな!!ガキが1人増えようが2人増えようが関係ねえ!!!血が繋がっていようが繋がっていまいがそんなのどうだっていい!!!誰が何と言おうとテメエは俺達の娘だ!!!だからそんな些細な事もう気にすんじゃねえ!!」
「バルト………」

涙を流しながらそう呟くヴィヴィオ。
そんなヴィヴィオをなのはは優しく包み込んだ。

「良かった。ヴィヴィオは優しいままだったんだね………心配しなくてもいいよ、私もヴィヴィオが大事だからどんな事があっても守ってあげる」
「なのはお姉ちゃん………」
「ううん、違うよ」
「そう……だね、なのはママ………」

そう言った後、ヴィヴィオはなのはに抱き付いたまま、泣きだした。
その姿は体こそ大きくなったものの、小さいヴィヴィオの姿の様にバルトには見えた。

「全く手間を掛けさせやがって………」

そう安心しながらバルトが呟いた時だった。

「ああ………ああああああああああああああああ!!!!!」

突然大きな声を上げ、叫び出すヴィヴィオ。

「ヴィヴィオちゃん、ヴィヴィオちゃんしっかりして!!」
「ああああああああああ!!」

なのはが一生懸命声をかけるがヴィヴィオの異常は収まらない。

「バルトさん!!」
「これはあの時の俺と同じ………!!クレインめ……ヴィヴィオもあの時みたいに人形にするつもりか!!」

そうこうしているうちにヴィヴィオの埋め込まれたレリックから膨大な魔力が一気に放出されて行く。

「ヴィヴィオ!!」

なのはが悲痛な叫びを上げている中、ヴィヴィオの叫びは無くなり、そして………

「助けて………助けて………」

痛みに涙を流しながらも先程よりも更に膨大な魔力を蓄えゆっくりと近づいてくるヴィヴィオ。

「なのは離れろ!!」
「バルトさん、でも………!!」
「落ち着け!今のヴィヴィオはあのコアの影響で嫌々ながら操られ……いや、暴走させられてると言ったところか?取り敢えず早く助けねえとヴィヴィオがもたない!!」
「じゃあどうすれば………」
「ヴィヴィオの動きを抑えつつ、ヴィヴィオを抑えている奴を叩く」
「ヴィヴィオを操っている相手………クレインかあの女の人!!」
「そして俺の予想はあの女だ。だからなのはあいつを探して、あのコアを機能停止にすれば………」
「ヴィヴィオを助けられるんですね!!だったらバルトさん、あの女の人を探すのをお願いします」
「はあ!?お前何言ってるんだ!!」

なのはの提案に思わず大声を上げてしまった。

「動きを止めるならロングレンジの攻撃とバインドが得意な私の方が分があります。それにバルトさんじゃ真っ向から当たって耐え切れなさそうですし………」
「だが、お前は俺以上に本調子じゃねえだろうが!!……………お前まさか!?」
「私の奥の手、『ブラスターモード』を使います」

そんななのはの言葉に空いた口が塞がらないバルトだった……… 
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