SWORD ART ONLINE ―穿つ浸食の双刀―
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02:戦士達は剣を取る
「······何故こうなった?」
うんざりと言った表情で呟いたのはアツヤ。各々愛用する武器を吊るし、移動するその様はどう見てもパーティーには見えない。
「確か、ハリン君の一言にライト君とリン君が反応して······それでこんな事に···」
苦笑いしつつ答えたのはヒメカ。そう、現在のこの状況を作り出したのはハリンである。こんなところでも主催者になる必要はないのだが。
「あれは確か――」
* * * * *
「そう言えばさ、新年にしか発生しないクエストってのがあるみたいだよ?······何か、敵Mobが凄く強くて攻略組でも手を妬くらしいけど······」
全ての始まりはこの一言。この馬鹿は、新年と言えども頭の中では効率の良いレベリング方法や戦術理論、さらには報酬の良いクエストの事ばかりだ。パーティー開催前、街中でそんな事を話している集団がいたらしい。
「「マジで!?行こうぜ!!」」
過剰な反応を見せるライトとリン。騒ぐ事に関してこの二人の右に出る者はいないのと同様に、戦闘に関してこの二人の右に出る者もいない。ただの戦闘狂並みに強い相手を好む二人だが、仲間の安全は第一に考えている。
「戦闘って······パーティーじゃないんじゃ······」
苦笑いしつつ軽いツッコミを入れるナギ。彼女は純粋にパーティーを楽しみたいようで、クエストには反対派のようだが――
「「いやいや、折角だしクエスト行って騒いで、戻ってきてもう一回騒ごうぜ!?」」
息ぴったり。一字一句間違えずに言う二人は本当にお互いを理解しているようだ。結果として、賛成五人反対三人。賛成派に《ハリン、ライト、リン、リオン、ルスティグ》、反対派に《ナギ、ヒメカ、アツヤ》。リオンとルスティグは単に面白そうだからと言う理由で賛成し、ヒメカとナギは戦闘を好まない為、アツヤに至っては面倒臭いから。
「よーし、じゃあいっちょ派手に暴れて帰ろう!!」
ハリンの掛け声に全員(約三人は力ない声で)「おおっ!!」と叫び、それぞれが戦闘の準備をしてからその場を後にした――――
* * * * *
「――で、今に至るんだよねー···」
思い出して苦笑いするヒメカにつられてアツヤも笑う。元々戦闘が苦手なヒメカだ、アツヤはヒメカが無理をしないように上手く立ち回るという決意をたぎらせる。
一方で、賛成組のライトとリンは何故か謎のダンスをしながら先陣をきっている。それを見てお腹を抱えるハリン、リオン、ルスティグだったが、ナギの不服そうな瞳を見て一瞬で押し黙る。どうやら反対派だったナギに対する細やかな罪滅ぼしとして、二人または一人で芸をしてナギを楽しませようとしていたようだが······ライトとリンの芸はおきに召さなかったようだ。
続いてリオン、ルスティグがとっておきらしいマジックを見せる。それには感嘆の声を漏らしたナギだったが、それ以上大したリアクションを見せず二人の芸は終了。ハリンは裏声や低音ボイスを駆使して有名人などの声真似をするが、軽く睨まれただけであえなく撃沈。結果、一番ウケが良かったのはリオンとルスティグだった。
「――っと、着いたみたいだよ······」
ハリンの一言で足を止める面々。着物を着た何かが描かれた巨大な扉が不気味に見下ろす。アツヤはついに辿り着いてしまったかと言うような顔をしている。面倒だからだろう。
「やっとこ強い野郎とご対面か、腕が鳴るぜっ!!!」
「ああ、いっちょ派手に暴れさせてもらうぜっ!!!」
既にやる気満々のライトとリンは、愛刀を鞘から抜き出し、戦闘体制に入る。この二人に戦略を説いても全くもって意味を成さないと直感で感じとったハリンは、「必ず生きて後のパーティーを楽しもう」とだけ言うと二刀を抜き放ち、扉を蹴り開けた――――
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