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第三章


第三章

「矢車君傘持ってるんだ」
「そうよね、がっかり」
「折角あいあい傘のチャンスだったのに」
 それぞれ手に色とりどりの傘を持っての言葉である。
「全くね。折角だったのにね」
「傘持ってるんだ」
「折り畳みよね」
「そうだ」
 返答はいつも通りクールなものであった。
「だから。今は安心してくれ」
「何だ、詰まらないの」
「それじゃあ。どうする?」
「帰る?」
 秀典の話を聞いてからだ。女の子達は自分達の話をするのだった。
「用事ないしね」
「そうよね、だったらね」
「もうこれでね」
 こう言ってであった。しかしであった。何故か誰も帰ろうとしない。
 そうしてだ。こう言ってきたのである。
「それでも。一緒に帰らない?」
「折角だし」
「雨だから傘持ってない娘は仕方なく帰ったけれど」
 それでいつもより数は少ないのだという。そういう理由だった。
「それでどう?」
「皆で帰ろう」
「そうしない?」
「どうする?」
 秀典は彼女達の言葉を受けてそのうえで仲間達に声をかけた。そのうえでだった。
「一緒に帰ろうか」
「あれっ、俺達もか」
「俺達もいいのか?」
「えっ、あんた達も一緒なの」
「そうなの」
 部員達だけでなく女の子達も驚きを隠せなかった。
「何か凄い数になるけれど」
「そうなるの」
「それは駄目か」
 ここでまた女の子達に問う秀典だった。
「皆で帰るのか」
「どうする?」
「他の面々はどうでもいいんだけれどね」
「そうよね」
 その部員達のことを意識することなく話す彼女達だった。部員達もそれぞれ考える顔で話していく。
「俺達って特にいらないよな」
「だよな。矢車だけいればな」
「別にいいんじゃね?」
 自分達はいらないのではという。しかしであった。
「いや、皆で帰ろう」
 秀典はこう言うのだった。
「皆でだ。そうしよう」
「それは何でなんだ?」
「どうしてなの?」
 部員達も女の子達も彼に問う。誰もが怪訝な顔になっている。
「どうして皆で?」
「それは」
「皆でいるとそれだけで楽しい」
 こう答えるのだった。
「だからだ」
「だからって」
「そういう理由なの」
「それでいいか」
 また一同に問うのだった。
「皆で」
「そうか。それなら」
「矢車君が言うのならね」
 部員達はそれで納得した。女の子達は秀典の言うことなら、とそれで頷いた。こうして皆で帰るのだった。
 その途中の本屋の前を通ったところでだ。秀典はその中をふと見た。するとそこに奈々がいた。彼女は相変わらず一人でいてだ。そのうえで本を探していた。
 それを見てだ。少しだけ考える目になった。しかし今は皆と一緒に帰ってだ。そうして帰るのだった。
 そのまた別の日だ。また雨だった。彼はこの時は一人だった。一人で学校の委員の用事をしていた。彼は美化委員になっていたのである。
 その美化委員としての仕事を校舎でしていた。その時に雨の中から校舎に戻って来た奈々を見た。彼女はすぐに校舎の中に入った。
 
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