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水中花

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第四章


第四章

「一緒にいたいの。駄目、それは」
「じゃあそれを適えたくてお花に願いごとをして」
「それで僕も読んで」
「そうなの、だからだったの」
「わかったよ」
 ここで微笑んで頷いた健だった。
「そういうことだったんだね」
「いいの?それで」
「ここまで来て嫌だなんて言う人はいないと思うよ」
 まずはこう返す健だった。
「僕でよかったら御願いするよ」
「そう言ってくれるの」
「僕もね」
 そして彼も言うのだった。
「あれだよ。そこまで想われたら」
「想われたら」
「そう、応えずにいられないじゃない。好きになってくれる人を好きになるのも当たり前じゃない」
「じゃあ」
「一緒にいよう」
 健からも言った。
「これからもね」
「有り難う、それじゃあ」
「まずは出よう」
 健はまた言ってきた。
「それでね。着替えてね」
「着替えて。どうするの?」
「デートしよう」
 こう言うのだった。
「ここで二人で遊ぶのもいいけれど」
「デートなのね」
「いいかな、それで」
 健も自然に顔を赤らめさせていた。そのうえでの言葉だった。
「それでね」
「そう。だったら」
「行こう、今からね」
「そうね。はじめてのデートだけれど」
 奈々はかなり焦りだしていた。はじめてのデートということになって急にそうなりだしたのである。そうしてそのうえで言うのであった。
「一体何処に」
「喫茶店とか。映画館とかはどうかな」
「そうね。じゃあ駅前に出てね」
「どっちかに行こう」
「それか両方ね」
「そうだね。二人でね」
 二人で微笑み合いながら話しそのうえで今は湖を出る。その湖の中では花が一輪咲いている。まるで二人を温かく見守る様に咲いていた。


水中花   完


               2010・3・30
 
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