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ガラクタ街

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第三章

「何ていいますか」
「人がだね」
「誰一人として一緒の人はいませんね」
「まさにね」
「ドイツ人でも」
「この地域の人達だけじゃないね」
「ベルリンの訛りもあって」
 それにだった。
「バイエルンの方も」
「あとザクセンもね」
「ハンブルグも」
「しかもドイツだけじゃなくてね」
「フランス語もあって」
「服もね」
 その服もだった。
「今の服を着ている人もいれば」
「昔の服の人も」
 その昔の服もだった。
「十七世紀のプロイセン軍の軍服の人いましたね」
「いたね」
「バイエルン辺りの民族衣装の人も」
「本当にね」
「それにです」
 今度はだ、リンデンは二人が今いる場所を見回した。そこは建物の中だったが随分と変わった部屋だった。
 壁に絵がある、その絵は。
 随分と崩れた人々が描かれ笑っている様にも泣いている様にも見える。何処かピカソのゲルニカに似ている。
 その絵を見てだ、リンデンはロートに言った。
「面白い絵ですね」
「そうだね」
「どうしてここに描かれているのかはわからないですが」
「ここの建物はね」
「どうもですね」
「一つの部屋ごとでね」
 そのそれぞれでだった。
「何か色々あるね」
「人が住んでいたり」
 ちゃんとだ、ドアのところに名前が書いてある部屋もある。そこには誰も入ることが出来ない様になっていて橋でも入ることは出来ない。
「お店だったり」
「そのお店もね」
「ソーセージが売られていたり」
「居酒屋だったりね」
「それでいてです」
 さらにだった。
「占い師のお店だったりアクセサリーを売っていたり」
「クリニックもあったね」
「そうですね」
「建物の中もそれぞれでね」
「雑多になっていますね」
「色々な人が行き来していてね」
 そのピカソの様な部屋を出つつ話す、部屋を出るとそこは通路だったが青や赤に妙に塗られている。
 その通路をだ、やはり様々な人々が行き来している。そうして。
 通路の左右に人が住んでいると思われる部屋がありそして店がある、空き部屋もあれば何が何なのかよくわからない部屋もある。
 その建物だけでなく他の建物もそうだ、その屋上も。
 今二人がいるその屋上はビアホールだった、多くの様々な人がソーセージやベーコンでビールを楽しんでいる、その人々は。
 白人だけでなく黄色人に黒人もいる、本当に雑多だ。服装もそうだが。 
 向こう側ではボクシングをしている、そしてレスリングをしている屋上も少し先に見えた。その様々な屋上も見てだ。
 リンデンはロートにだ、首を傾げさせてこう言った。
「ゲームセンターもですね」
「あるね」
「皆楽しそうですね」
「そうだね」
「あの、ここって」
「この建物だけじゃなくてね」
「場所全体が」
 まさにというのだ。
「色々あって」
「よくわからないね」
「こういうのを混沌っていうんでしょうか」
 ロートにこうも言った。
「まさに」
「そうだね、この状況こそがね」
「カオスですね」
「そう思えてきたよ。それじゃあね」
「今度は」
「道を歩こう」
 通りのそこをというのだ。 
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