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目的は不純だった

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第四章

 娘が三人生まれてだった、彼女達にも言うのだった。
「いいか、俺にはいつもきゃーーきゃーー言えよ」
「お父さんには?」
「そうしろっていうの」
「そうだよ、俺は女の子にもてたいからな」
 だからだというのだ。
「そう言ってくれよ、御前もだぜ」 
 妻にも顔を向けて言うのだった。
「俺はとにかくそうした状況が大好きだからな」
「浮気はしないでね」
「キス位ならいいだろ、一緒に飲む位ならな」
「ええ、それ位ならいいけれど」
「わかってるさ、ベッドまではいかないさ」
 屈託のない笑顔で言う。
「神様に怒られるからな」
「女好きでも信仰心はあるのね」
「当たり前だろ、シスターの人達にもきゃーーきゃーー言われてるからな」
 ここでも女の子だった、神に仕えていても女の子は女の子である。
「だからな」
「それでよね」
「そうだよ、だからな」
「シスターの人がファンにいるから」
「神様が見ているてことだからな」
 シスター達の目からというのだ。
「浮気はしないさ」
「それだけは守ってね」
「これでも女の子をとっかえひっかえはしなかったんだよ」
 確かに女好きで黄色い声援を受けたい、しかしだというのだ。
「そんなことしたら後が大変だろ」
「隠し子発覚とかね」
「エイズとかな」
 こうしたことを心配する頭はあるのだ、ホセにしても。
「そうしたのは怖いからな」
「だからなのね」
「気をつけてるさ。じゃあ家でもな」
「ええ、応援はするわ」
 妻は笑ってホセに言った。
「もうそろそろ現役生活も終わりでしょ」
「最後までサッカーやって女の子にもてるからな」
「そうするのね」
 妻はそのホセに笑って言った、そしてだった。
 彼は家でも妻と娘達に黄色い声を送られてご満悦だった、そして引退の時にもだった。
 明るい笑顔でだ、こんなことを言った。
「これからも女の子にもてたいからな!」
「応援するわね!」
「これからもずっとね!」
「ああ、皆宜しくな!」
 グラウンドの観客席にいる女の子達に言うのだった。
「俺がサッカーをはじめた理由も皆にもてたいからだった!」
「それでこれからもね!」
「もてないのね!」
「世界一な!」
 引退する今もだ、実際にこう思っている彼だった。
「もてたいから宜しくな!」
「じゃあもてるあんたでいてね!」
「ずっとね!」
「そうなっていくさ!見ていてくれよ!」
 こう応えてだ、彼は投げキッスと共にユニフォームを脱いだ。
 こうして彼は現役を引退した。しかし彼のもてたいという欲求は変わらない。
 それでだ、彼が引退後することはというと。
 女の子達にサッカーを教えるのだった、まだ小学生の女の子達のチームのコーチになって彼女達にサッカーを教える、その彼を見てだった。
 取材に来た記者は首を捻ってだ、彼に問うた。
「またどうしてだい?」
「女の子達のコーチになったことかい」
「ああ、何でまたなったんだい?」
「決まってるだろ、もてたいからだよ」
 笑ってだ、こう答えたホセだった。
「だからだよ」
「おいおい、またか」
「ああ、俺らしいだろ」
「まあな。それはな」
 彼等もホセの今の返事には笑って返した。
「確かにあんたらしいな」
「そのことは実際そうだな」
「あんたはやっぱり女の子か」
「女の子に囲まれたいんだな」
「そうじゃないと何が人生なんだよ」
 笑ってこうも答えたホセだった。
「人生は女の子だよ」
「女の子に囲まれてきゃーーきゃーー言われる」
「それこそだっていうんだな」
「そうだよ、だから俺はこれからはな」
 引退した、しかしというのだ。
「女の子のサッカーを育ててな」
「女の子にきゃーーきゃーー言われるか」
「そうなっていくんだな」
「これからも世界一もてる男でいるぜ」
 ホセは爽やかな笑顔で言ってみせた、その笑顔は眩しくしかも歯は白くきらりと光っていた。それはまさにもてる男の笑顔だった。


目的は不純だった   完


                              2014・3・21 
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