妹みたいで

第五章

「それでね」
「そうか。それでか」
「そういうこと。じゃあ講義ね」
「いいか？」
　ようやく大学への話になった。
「それでだけれどな」
「それで？」
「テキストとかは持って来たよな」
「持って来てるわよ」
　それはあるというのである。
「ちゃんと用意してあるから」
「だといいがな」
　そんな話をしてそのうえで講義に向かう。遥は幸平の傍にいる。そうしてそのうえでいつもの通りの学生生活を送るのであった。
　そんな二人だった。遥は幸平の傍にいつもいる。そんな彼女を見てある日周りが言ってきた。
「遥ってさ」
「そうよね、何かね」
「前から思ってたけれどね」
　言っているのは女の子達だ。遥を意識しての言葉である。
「草加といつも一緒にいるけれど」
「やっぱり付き合ってるの？」
「そうしてるの？」
「付き合ってるって？」
　それを言われた遥はきょとんとした顔になって返した。
「そうじゃないけれど」
「けれどいつも一緒にいつじゃない」
「ねえ」
「それって世間では付き合ってるっていうのよ」
「ただの幼馴染みよ」
　遥はこう彼女達に返すだけであった。きょとんとした顔はそのままである。
「本当にね」
「いや、どう見てもね」
「ねえ」
「付き合ってるじゃない」
　彼女達はあくまで自分達の主観において話をする。彼女達からはそう見えるのである。
「ねえ。どう見てもね」
「やっぱりね」
「どう見ても」
「だから違うわよ」
　遥はどうして言われるのかわからないといった顔でまた言葉を返した。本当にそれだけであり自覚がないことがわかる返答であった。
「そんなのじゃないわよ」
「本当にただの幼馴染みなの？」
「それだけ？」
「本当にそれだけなの」
「そうよ、それだけよ」
　また答える遥だった。
「本当にね。それだけだから」
「じゃあキスとかは」
「そういうのもまだなの」
「あはは、そんなのじゃないわよ」
　それもないというのである。
「それはね」
「ないの、それって」
「ずっと一緒にいても」
「全然ないのね」
「だから何であるのよ」
　きょとんとした顔はそのままだった。何も変わりはしない。
「幼馴染みなのに」
「まああんたがそう言うのならいいけれどね」
「それならそれでね」
「別にね」
　こう返すだけであった。とにかく遥にはその意識はなかった。しかし幸平はである。その話を聞いてかなり困った顔になっていた。
「そういえば俺とあいつな」
「ああ、いつも一緒じゃないか」
「いないって言えばこんな時だけだよな」
「だよな」
　今彼の周りは男達だけだ。サークルである。
　そのサークルは何かというと。非常に変わったものであった。それは。