『自分:第1章』
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『再:犬っころ』
一方で、犬っころは、あれから数回カラオケをする為に零那を呼ぶ。
手間のかかる犬っころの世話しに行ってる感じだった。
この日、コースは5時間...
普通にカラオケ行けば、こんな大金払わずに済むのに...
飲食代+タクシー代は零那が出してるけど...
『ホンマに店以外で逢えんのん?』
最初に断って以来、言ってきたことは無かった。
『...カラオケなら付き合うで。お金勿体無いし!』
客とはいえ年下。
毎回ロングで心苦しかったのも事実。
アカペラ熱唱にも慣れてきた。
犬っころは根っから優しくて良い子。
それは充分に解った。
前回、色んな悩みを打ち明けてくれた。
両親との不仲。
父親の会社の跡継ぎ問題。
社員同士の確執や派閥。
若干16歳にして重くのしかかる責任問題。
その重圧に耐え切れず、逃げてから家では萎縮してしまう日々。
益々、父親から見放されたと。
情けない、悔しいと...
泣いた。
初めて真剣な話をした。
会社云々は解らん。
ただ、悔しさが強く在るなら、人は成長できる。
どうにもならん事は確かに在る。
でも、自分の情けなさ、無力さ、弱さを認めて受け止めれたら、人は変わる。
認めるのは怖いし難しい。
拳握りしめて歯食いしばって!
でも、ソレが出来る人は前を向ける。
簡単じゃない。
大概の人はそんな自分に見て見ぬフリやろ?
わざわざ自分で自分を追い詰めるとかせんよね?
悔しさを抱えて、情けない自分、弱い自分と向き合う。
素直に今の自分まんまを受けとめて、歩み続ける。
ソレは勇気が要ること。
でも、悔しいまま逃げるのは愚かなこと。
他人から見て滑稽な様だったとしても、自分に信念が在ればやり通せる筈。
零那の18年間、色んな事が在り過ぎて、死にたくて死に損なって生かされての繰り返し。
虐げられるだけの家庭内生き地獄。
あっちからもこっちからも玩具にされる日々。
やったやられたの繰り返し。
絶望だらけ。
おかげで犯罪者。
何の試練なんやろな。
『生きること』は
『拷問』だった。
そんな人生でも、一瞬一瞬を切り離せば、楽しかったり嬉しかったり、生きてて良かったと想わせてくれる出来事も確かに在った。
『愛情』が解らん零那には『家族』の必要性や『血縁関係者』だから絆が在るとか...理解不能だった。
そんなモンより大事なんは『友達』との時間や思い出、会話の内容だったりした。
『独り』では無いと感じる事が出来た。
それは強さに変わる。
優しさに変わる。
人は『1人』で立ってる。
でも、決して『独り』では無い。
あんたも『独り』ちゃうやろ?
零那に出来ることがあるんなら何でもする。
でも、もっと身近に、あんたを想う人が居らんか?
ちゃんと見てくれてる人、陰で背中押してくれてる人、見守ってくれてる人...居らんか?
零那の話を黙って聞いてた犬っころが話し出す。
父親に何を言われても、理不尽に罵られても、母親は解ってくれてると...認めてくれてると...
母親が味方なら、何より誰より有り難い。
素晴らしい。
美しい。
それは犬っころの強さになる。
母親の為に、自分自身の為に、頑張るしかない。
むしろ自信なんか無い方が良い。
失敗もしたら良い。
無力でも弱くても良い。
とことん信念突き通してやり抜いたったら良い!!
あんたなら出来るっ!!!
『俺はやれる!!
やるしかない!!
絶対負けん!!』
犬っころが、そぉ力強く叫んだ。
この子ならいける。
不思議とそぉ思えた。
ニコニコ笑顔でバイバイした前回。
だから今日は超元気だった。
で、零那がカラオケなら付き合うって言ったから、また妙に元気になってノリノリの歌ばっかり。
聴いてるのはアカペラやけど...。
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