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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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入学編〈上〉
  新入部員獲得合戦について

色々と特殊なところのある魔法科高校だが、基本的な制度は百年前からあまり変わらない。第一高校にもちろんクラブ活動はあるがあえて俺は部活というが。クラブ活動というのは小学校が言っていることだが、なぜか知らんが第一高校は部活ではなくクラブ活動というらしい。正規の部活として認められるには、ある程度の人員と実績がある点も普通の高校と変わらんようで。ただし普通の高校と違うのは魔法があるかないかであって、密接した部活が多いと聞く。メジャーな魔法競技では、第一から第九まである国立魔法大学付属高校の間で対抗戦を行うくらいだし、その成績が各校間の評価で高低にも反映される傾向がある。学校側の力の入れようには、スポーツ名門校が伝統的な全国競技に注力する度合いを上回る。九校戦と呼ばれる対抗戦に優秀な成績を収めた部は、部の予算からそこに所属する生徒個人の評価に至るまで、様々な便宜が与えられている。有力な新入部員の獲得競争は各部の勢力図に直接影響をもたらすと言われ、重要課題とまでだそうで、学校側としては公認しているようだが後押ししていると校長から聞いた話だ。この時期になると各部の目の色が変わる新入部員獲得合戦は、本物の戦並みだそうだと蒼い翼に就職してきた学校の先輩方がそう言っていたのを本社から通達が来た。

「・・・・という訳で、この時期は各部間のトラブルが多発するんだよ」

場所は生徒会室で、深夜・深雪の手作り弁当を食べながら聞いていた。というより本社からの通達通りだった、ちなみに蒼太と沙紀は穂波さんの手作り弁当を食べているが、たまに沙紀が蒼太と自分用にと手作り弁当を作るが、護衛する側はきっちりと睡眠をとらないといけない。なので深夜の護衛をしていた穂波さんが毎回作っていた。俺らとの違いは作り手とメニューだけど。

「その話は本社から通達が来ましたが、相当なモノだと聞いております」

「ん?誰から聞いたんだ?」

「本社を就職してきた者からの伝手で聞きました」

「なるほど。確かに蒼い翼は入社したいランキングでも常に1位ですもんね。復習のついでで構いませんが、勧誘が激し過ぎて授業に支障をきたすこともあります。それでこの時期である新入生勧誘活動には一定の期間、具体的には今日から一週間という制限を設けています」

生徒会室には俺らと七草会長と渡辺先輩しかいない。なんでも市原先輩と中条先輩は、普段はクラスメイトと食べているらしく昨日は会長が声をかけたからだそうで。俺らと渡辺先輩以外、つまり会長だけはダイニングサーバーの機械調理メニューを食べていたが、今度から自作してくると張り切ったらしい。なんでも俺らの弁当を味見したら、まるでお母さんの味がするとか言っていたからだ。真夜は会長の母親だが、その前に俺の元部下だしこちらには深夜がいるのだから当たり前だと思った。

「この期間は各部が一斉に勧誘のテントを出すからな。ちょっとどころではないお祭り騒ぎだ。密かに出回っている入試成績リストの上位者や、競技実績のある新入生は各部で取り合いになる。無論、表向きはルールがあるし、違反した部には部員連帯責任の罰則があるが、陰では殴り合いや魔法の撃ち合いというのも珍しくない」

「ふむ。その話を聞くとCADを携行していると思いますが、そこのところはどうなっているんです?」

CADが無くても、魔法自体が使用不可能という訳ではない。撃ち合いともなると、CADを使用可能でなければほぼ不可能のはず。

「鋭いな。新入生向けのデモンストレーション用に許可が出たのだよ。一応審査はあるが、事実上フリーパスとなっていて。その所為で余計にこの時期は学内が無法地帯となるのさ」

やはり卒業した社員からの証言通りになったな。あとは無法地帯を何とかするのも、俺や風紀委員の権限で何とかしないとダメだろうし。まあ校長から聞いた話によると、九校戦の成績を上げてほしいからだとか。そう考えてたら会長と同じことを言っていたな。新入生の入部率を高める為か、多少のルール破りは黙認状態なんだと。それを何とかしてほしいと校長たち学校側から願っていると直接聞いたからな。課外活動の強制は人権無視だからな、何十年も前から所轄庁が禁止通達をしたらしいが、あまり効果はないとか。部活の為にスカウトされた者たちが溢れていると聞くし、学校選択の自由の建前でスポーツスカウトは事実上野放しとされているという意味での通達らしい。

「そういう事情でね、風紀委員会は今日から一週間、フル回転だ。欠員の補充が間に合ってよかった」

「なるほど。一つ質問がありますが、俺の護衛も一緒でよろしいでしょうか?風紀委員会の権限も強いですが、こちら側の方が権限は強いですよ?警察や軍隊並みですから、公務執行妨害や逃げる犯人を妨害しようとする生徒の逮捕とか。こちらには一応手錠も持っています」

「それならそうしてくれると助かる。あと逮捕者を庇うようなことや反発してきたときの対処もそちらで任せも構わんか?」

「なら構いませんが、一応放課後のミーティングでも同じ事を言わせてもらいますよ。あと俺が二科だとか戦力になるのかと疑問があった場合は即これになりますが」

これというのはもう分かっているので言わないが。こちらは即戦力になるし、一人より護衛と一緒の方が心強いしな。弁当を食べ終わったらお茶を飲んだが、放課後は巡回で一度本部に行くことは知っている。

「会長、私たちも巡回しなくてもいいのですか?」

深雪の言う私たちとは生徒会役員とここにいる沙紀のことだ。そういえば拘束系のを入れたから、それをしたいのかなと思った。巡回の応援は、中条先輩が行くとかで。あとは服部副会長と七草会長が部活連で待機だそうで、深雪たちは市原先輩とお留守番だそうで。

「中条先輩が巡回ですか?」

「見かけによらずあーちゃんの魔法は頼りになるのよ」

「大勢が騒ぎ出して収拾付かない、というシチュエーションにおける有効性ならば、彼女の魔法『梓弓』の右に出る者はいないだろ。まあ今年度は君が居れば大丈夫だと思うがね」

現代魔法は技術であるので、多くの魔法が定式化されている。非公開の術式も存在するが、大多数の魔法が公開されデータベースに登録されている。それらの魔法は通常その系統と効果で識別されているが、独創性の高い魔法には固有の名称が与えられている。俺が使う『死神の刃』を改良したのは俺しか使えないけど。

「梓弓?正式な固有名称ではありませんね。系統外魔法ですか?」

「その通りだが、全ての魔法の固有名称を網羅しているのかい?」

「・・・・一真君、実は衛星回線か何かで、巨大データベースとリンクしているんじゃない?」

「そんな訳ないですよ。それにデータベースを管理しているのは、本社の奴らが網羅しているんじゃないんですかね」

とは言ってみたが、トレミーのデータベースには繋がっているため、俺の知らない魔法はほぼないと思う。それと会長が目を丸くしていたので深雪は吹きだしたくなる衝動であったが。現代魔法には燃えるや風が吹くというのは分析し分類されている。系統魔法は、4系統8種に属する魔法であって、分類できない魔法がある。知覚系魔法に無系統魔法、物質的ではなく精神的な現象を操作する魔法は系統外魔法と呼ぶ。霊的存在を使役する神霊魔法・精霊魔法から読心、幽体分離、意識操作まで多種にわたる。

「一真君お察しの通り、あーちゃんの『梓弓』は情動干渉系の系統外魔法よ。一定のエリア内にいる人間をある種のトランス状態に誘導する効果があるの」

「なるほど。俺の死神の刃みたいな感じですか、梓弓は意識を奪う訳でもなく意思を乗っ取る訳ではない。相手を無抵抗状態にはできなくとも、エリアに対する働きかける魔法だから、同時に多人数を相手として仕掛けることができ、興奮状態を鎮静化する魔法、ですか」

「正解よ。ホントにデータベースに直結並みなのね。一真君の死神の眼みたいに一瞬にして死を見せるのとかは精神干渉系魔法で制限かかるけど、学内ではOKだからね。集団戦だとその力はフルに活躍できるかもね。その前にエレメンツが役に立つわね」

系統外魔法は特殊な性質を持つので、四系統魔法以上に厳しく使用が制限されている。俺の電撃もそこに入るくらいので、雷童子みたいな感じだが。でも俺のは威力を抑えることができるから制限はないが。梓弓も死神の眼も使いようによっては、恐ろしい洗脳か恐ろしい死を与える道具となるが。こういう魔法の存在が知れば、利用しようと企む独裁政治家やテロリストやカルト指導者は後を絶たないが、こういう魔法についてはちゃんと管理されているので、今の所は安心だ。 
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