妖精の義兄妹の絆
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タクヤVSランス
ナツがゼロと戦っている頃を同じくしてタクヤは心臓部分の巨大魔水晶に辿り着いた。
「ハァ…ハァ…。」
先ほどのダメージが残っているのか足取りがおぼつかない。息を切らしながらタクヤは巨大魔水晶を見上げる。
直径は約40mぐらいはあろう魔水晶は幾重にも太いパイプが取り付けられている。
まさに人間で言うところの“心臓”なのだ。パイプを通して魔力を流し、さらには大地から吸収している。
「でけぇな…。」
「そりゃあコイツはニルヴァーナの心臓だからなー。」
タクヤは驚きはしなかった。ここにいることは既に知っていたからだ。
だが、タクヤの表情は激しい怒りに満ちていた。ゆっくりと視線を目の前の男に向けた。
「本当に生きてたんだな。この目で見るまで半信半疑だったんだわ。」
そこには不気味な笑みを浮かべたランスがいた。
「そんな事はどうでもいいんだよ…。お前は、オレが沈める!!!!」
ダッ
タクヤはそう告げた瞬間にランスに突撃をかけた。
「真っ正面から来るのは命が惜しくないって意味だよなァっ!!!」
ランスも即座に槍を構え、魔法陣を組み出した。
「水竜の狼爪!!!」
タクヤも両手に水の爪を纏う。
ガッキィィィン
爪と槍が激突し辺りに衝撃波が突き抜けた。タクヤとランスの足元も地面が割けている。
「さっきよりは良い魔力だ。」
「フウァァっ!!!!」
タクヤはもう片方の爪で追撃をかけてきた。だが、それすらもランスの槍に防がれてしまった。
「こんなもんかよ?」
「うぉぉぉりゃぁぁぁっ!!!!」
タクヤは爪に魔力を集中させさらに攻撃力を倍加させた。
さすがのランスもきつくなったのか槍に込める力を強くした。
「はぁっ!!!」
「ぐわっ!!!?」
「これで終いだ。鏡の槍“スクリーンオブランス”!!!」
ランスはタクヤに向けて魔法陣を描き出す。タクヤがそれに気づいた時にはもう遅かった。
「あばよ。」
キィィィィィン
魔法陣が強い光を放ちながらタクヤを包んだ。
「何度も、くらうかぁぁぁぁーーーっ!!!!」
ザッバァァァァン
「!!」
光を放っていた魔法陣の球体は溢れんばかりの大量の水に支配された。
魔法陣も水の勢いに負け、粉々に光の粒子へと姿を変えた。
「…ははっ。すげーな。」
「ハァ…ハァ…まだ…だ。」
「いいね、いいねー!!実におもしれー!!!さすがは滅竜魔導士ってとこかー。」
「笑ってんじゃねぇぇっ!!!!」
ダッ
タクヤはランスに突撃をかけた。ランスはそれに応えるかのように真っ向から挑んだ。
ゴォォォン
二人の拳が激突し、四方に魔力が拡散した。
「もっとだ、もっとオレを楽しませてみろよォォォ!!!!」
「絶対ェに沈めてやるァァァっ!!!!」
さらに魔力を上げ、次第に二人の足元や壁にはひび割れていく。
だが、魔水晶はもとの原型のまま静かに佇んでいる。まるで、その程度かと言っているようだ。
「ふぅんっ!!!」
ランスは右手に持っていたランスでタクヤを凪ぎ払おうとしたが、それに感づいていたのか、
左手から水を噴射してランスとの距離を取った。
「なかなかいい反射神経してんじゃねーか。」
「…ちィ!!」
タクヤはこの勝負に於いてランスより下回っている事が二つある。
一つは体力と魔力の差だ。タクヤはこれまでの連戦で体力と魔力を削っている。
それが決定的になったのはランスとの初戦だ。タクヤは一度は戦闘不能になったが、
ウェンディのおかげである程度までは回復しているのだ。
だがそれでもある程度なのだ。完全には回復しきれていない。
今の状態で闇ギルドと戦っても勝てるかどうかわからない。
もう一つは攻撃の射程距離だ。ランスはその名のように巨大なランスを装備している。
ランスのリーチは約4mといったところだ。対してタクヤは素手のリーチのみ。
はたからみてもこの不利な状況を覆される訳がないと思うのが当たり前だ。
「お前が勝てる可能性なんてミジンコ程度しかねぇな。」
「ハァ…ハァ…。」
「それでもまだやろうってのか?自殺希望者ですかァ?おまえは。」
「…フッ…。」
「?何がおかしい。」
ランスはタクヤに訪ねる。
「…オレには…まだミジンコ程度の勝機が残ってんだよ…。0じゃねぇ…。
たとえ、どんなに小さな希望でも、地べたを這いずってでも掴んでやる…。
オレの仲間を守り抜くために!!!!」
「…良い根性だが、死んじゃなんにも残んないんだぜ。」
キィィィィィン
ランスが槍を構え黄色のエフェクトが槍を包む。魔力を集中しているのだ。
「ぐっ…!?くそっ…。」
タクヤはなんとか避けようと体をうごかそうとするが痛みがそれを許さなかった。
「動け…動いてくれ…!!」
タクヤの言葉もむなしく足に鉄球が何個もぶら下がっているように微動だにしない。
「なかなか楽しかったぜ。竜の子よ。」
バチッ バリリッ
槍は荒々しい雷を纏わせ、虎のような形に変化していく。
「ウラァァァッ!!!!」
ビュン
ランスは雷を纏った槍をタクヤに放った。雷槍は鈍い音を弾きながらタクヤに迫っていった。
(「くそ…、まだ、まだ…倒れるわけには…。」)
そして、
ドゴォォォォォン
辺りは土煙で覆われ視界がかすんでいる。
その中でもランスは笑みを浮かべていた。先の攻撃にも手応えがあった。
本気ではないにしろタクヤを葬った自信があった。
「他愛もねぇな…。」
ランスは槍を背中にしまった。
「まぁ暇潰しにはなったぜ、さんきゅーな。って死んだんだったな。」
「勝手に殺すんじゃねぇよ…。」
「!!」
ランスは土煙の中を目を凝らして声の正体を探した。
「オレは負けらんねぇぇぇんだぁぁぁっ!!!!」
ブゥボォン
「なっ!!?」
ランスは一瞬の隙をつかれタクヤに懐への侵入を許してしまった。
タクヤもこの機を逃しはしなかった。
「水竜の柔拳!!!!」
ドゴォォ
「かはっ!!!?」
タクヤは水を纏った拳でランスの腹部をえぐった。体を包んでいた鎧も粉々に砕け散った。
そのままランスは宙を舞い、やがて墜落した。
ドサッ
「ハァ…ハァ…どうだ…コノヤロウ…!!」
「へへ…、しぶてぇガキだな…。」
ランスはその場に立ち上がり上半身の鎧を自ら脱いだ。
「まだまだこんなもんじゃねぇぞ!!!」
タクヤは休む間もなくランスに追い討ちをかけに出た。
「てめぇ、何か勘違いしてるな…。」
「!!」
ランスはこの状況でも顔を歪ませる事なくただ笑みを浮かべている。
「お前はまだオレの本気を知らない。」
「なにっ。」
「さっきまではお前の力量を計るために魔力を抑えていただけだ。だが、お前の力量も見切った。
なら後は、役に立たなくなった玩具を捨てるかのように殺してやるよ。」
ランスは背中にしまった槍を取らず、何もないところから新たな槍を出現させた。
「負け惜しみ言ってんじゃねぇぇぇ!!!!水竜の尖角!!!!」
「フン。」
ガキィィィン
「え。」
その時何が起きたのか理解できなかった。ランス目掛けて攻撃を仕掛けたところまでは覚えている。
だが、今目の前に映っているのは巨大な魔水晶が逆さになっているところ。ランスはどこにもいない。
何も分からないまま背中から異様な魔力を感じた。タクヤは顔だけを向けた。
そこに立っているのは先程までとは明らかに魔力の質が違うランスだった。
「な、なんで…。」
タクヤは我に返りすぐさま体勢を立て直した。だが、ランスはそんな事気にはしていなかった。
シュン
「!!」
ガキィィィン
「ぐあっ!?」
ドゴォォン
タクヤは瞬時に背後に回ったランスの攻撃を食らい地面に叩きつけられた。
「っく、そ…。なんだよ…あのパワーは…。」
予想以上にランスの攻撃が効いたのかすぐには立てずにいた。
「遊びはここまでだ、ボウズ。殺すには惜しいが消えてもらうよ。」
そう言ってランスは槍の先端に魔力を集中し始めた。
「くっ、うごけ…動けよォ…!!」
タクヤは体を精一杯動かそうとするがピクリとも動かない。
まるで四肢に鉄球を幾重にも巻き付けられているかのように体が重いのを感じた。
「お前を生かしていればいずれオレたちの前に立ちふさがるだろう。ここでその芽を摘んでおく。」
(「…オレは、ここで死ぬのかよ…。」)
「じゃあな。」
(「ごめん…、ウェンディ…みんな…。」)
タクヤはそっと瞼を閉じた。自身の死が間近に迫っているのが分かる。タクヤは体から力を抜く。
ギュアアアアア
激しくそれでいて禍々しい黒の魔力の渦がタクヤを包んだのだった。
後書き
新年一発目が短めになってすいません。(><)バイトだの課題だのが鬼畜すぎるぐらいあるもんで…
言い訳してるわけじゃないから安心してください。
それでは感想などまってまーす!
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