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テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―

作者:夕影
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第六十九話

 
前書き

今回ちょっと『テイルズ』っぽくないかなぁ、と思いながら書きましたが…まぁ、うん…私、頑張ったよ←

 

 



「──えっと…皆、三日ぶり」


──廊下で一度深呼吸し、ホールへ入ると…そこにはウンディーネとヴォルトが言っていたとおり、アドリビトムのほぼ皆がホールに集合していた。
扉の開く音で此方を見た皆は僕の姿を見ると驚いた様子で声を出した。


「衛司っ!目が覚めたの…!?」


「うん…今さっきね。ごめん…心配させて」


「いえ、目が覚めて良かったわ。それで、身体の方は…」


皆を代表して声を出したアンジュに僕は申し訳なさげにそう答える。僕の返答を聞いたアンジュは小さく首を横に振った後、心配気にそう言ってきた。
『身体の方』と言われ、僕は少し俯きかけるがすぐに頭を上げて出来る限り笑って口を開いた。


「ヴォルト達から聞いたけど…突然のドクメントの転写で僕の身体の方が驚いて気絶したんだって。今はもう僕のドクメントがディセンダーのドクメントをちゃんと取り込んで大丈夫らしいよ」


「そ、そう…なの…?」


「うん…詳しい事は僕自身よく分かんないんだけど。でも現に今、僕はこうして歩いて皆の前にいられてるから、もう大丈夫だよ」


出来る限り笑って自分なりに考えた内容の嘘で皆に説明して、自分が大丈夫である事を伝える。研究組…特にリタの視線が痛かったが、少しするとまるで理解したように溜め息を吐いて発言はしてこなかった。


「…でもよかったわ、あなたの意識が戻って…。皆、心配してたんだから」


「…衛司…っ!」


「っと!…ごめんね、メリア…皆…」


僕を見ながら安心した様にそうアンジュが言葉を出した直後、アンジュの言葉が終わるのを待っていたかのように皆の中からメリアが飛び出し、僕に向かって抱きついてきた。
抱きついてきたメリアを抱き止め、そっとメリアの頭を撫でると僕は皆に向かって少し頭を下げた。


「私達は大丈夫だからいいわよ。ちゃんと謝るんなら後で心配してたメリアとカノンノにしっかり謝りなさい。ね、カノンノ?」

「…ぇ、あ、うん…そう、だね…」


「…?」


アンジュの言葉を聞いて僕は顔を上げて先程から声が聞こえなかったカノンノを見ると、カノンノはぼーっとした様子で僕を見ていて、アンジュの言葉に今気づいたようにはっ、として何事もなかったような様子で言葉を出した。
…どうかしたのだろうか…?

「…そう言えばアンジュ…聞きたいことがあるんだけど…」


「…大体アナタの聞きたいことは想像がつくわ。…アナタが眠っていた間…そして『エラン・ヴィタール』の事でしょ…?」


僕の言葉にアンジュは一度溜め息を吐いてそう言葉を出し、僕はそれに対してゆっくりと、静かに頷いた。




──────────────────────




──その後、僕はアンジュ達から僕が眠っていた間の事を聞いた。
ラザリス…ジルディアの力による、世界樹そのものへの浸食。そしてその浸食により、世界樹周辺の『理』が変わってしまった事。
リタ達研究組とニアタの協力で突入できるようになった本来世界樹の中にある未知の空間…今はジルディアの浸食により、ジルディアの大地へと変わりつつある『エラン・ヴィタール』の出現。

今…皆はこの最後の決戦の地『エラン・ヴィタール』に向けての準備をしている所であった。
そして…その最終決戦を行う日は…翌日であった。


僕はアンジュや皆を説得し…なんとかこの最終決戦へと参加できるようになった。
無論…僕自身のドクメントの事は話さないまま…。




「──あれが…『エラン・ヴィタール』、か…」


…甲板から、世界樹の遙か上空に微かに見える白い塊のようなもの…『エラン・ヴィタール』を見上げながら僕は静かに言葉を出した。

あの場所が…僕達にとってルミナシアとジルディアをかけた、最後の決戦の地になるのか…。


「…そして…あの場所で…僕の命も…」


「──何やら、哀しいことを言っているようだな、衛司」


エラン・ヴィタールを見上げながらふと漏れた言葉。その直後、僕の言葉に答えるをように聞こえた声に見ると…そこにはニアタが一人(?)、此方にやってきていた。


「…ニアタ…」


「久しぶりだね。…どうやら、またえらく無茶をしたようだ」


「…やっぱりニアタにはバレちゃってるか」


しばらく僕をじっ、と見てそう言葉を出したニアタに、僕は息を一度吐いてそう言葉を返した。
そう言えばニアタには僕のドクメントが見えてるんだっけ。…あれ…?何か…大切な事を忘れてるような…。


「…それで…見ただけでも十分、君の身体が危険な状態だというのがわかるが…実際、どういう状態なのかね…?」


「ぇ、あ、うん…詳しくはまだ分からないけど…ウンディーネとヴォルトが言うには、今の僕の身体だと一回の戦闘も危険らしいよ」


何かを思い出そうとしていると、不意に出されたニアタの言葉で考えるのを止め、僕はウンディーネとヴォルトから受けた言葉を思い出しながらそう答えた。


「そう、か…。君はやはり…そんな状態だと聞いても行くというのだな」


「うん。自分でも『よく決めたな』って今でも思ってるよ」


「…どうして君は…そこまでして闘いに行こうとするんだ。死ぬかもしれないのに…」


僕の言葉を聞いてニアタは静かに僕を暫く見ると、そのままゆっくりとそう聞いてきた。
どうして、か…。
僕は少し考え、一度小さく頷いてニアタに向けて出来る限り笑って答えた。




「──この世界が、好きだから」



「………ッ!」



「正直死ぬのは怖い。行きたくない。僕は少しでも長く生きていたい。…でも、だからって僕だけが皆が世界を救おうとしてる中…何か出来るのに何もしないなんていやだ。
この世界は僕のいた世界じゃない。だけど…僕はこの世界で見てきたアドリビトムの皆や世界の皆…大切な人を見て…僕はこの世界が好きになった。
だから…僕はこの世界が救えるっていうんならなんだってやってやるって決めたんだ」


──そう、例え…僕が死ぬことになったとしても。


ニアタに向けて出来る限り笑ったままそう真っすぐ、はっきりと告げた。
僕なりのこの世界に対する想い…それをはっきりと、僕はニアタに伝えたのだ。
ニアタは僕の言葉を聞いて暫く黙っていると、その後一度溜め息を吐くような様子を見せて言葉を出した。


「…そう、か。…どうやら、私では君を止めることはできないようだな。…ふ…そうか…『好きだから』か」


「うん…変、だったかな…?」


「いや、全く変などではないよ。…むしろ礼を言いたいほどさ…この世界を好きになってくれてありがとう、と」


「…それは、どういたしまして」


どこか可笑しそうな仕草を見せるニアタに僕は少し頬を掻いて言うと、ニアタは少し首を振る仕草を見せた後そう言った。
僕とニアタはそのまま再び、エラン・ヴィタールを見上げようとした…その時だった。



「──…衛司…」



「…?メリア…?」


不意に聞こえてきたホールへの扉が開く音と声に見ると、そこにはメリアが立っていた。
メリアは僕を見つけると此方に駆け寄ってきてどこか真剣そうな表情で口を開いた。



「……衛司…お願いが…ある…」



「お願い…?別に、僕が出来る範囲なら応えるけど…」


「ん…それを聞いて安心した…。…えっと、ね…──」



…この時、メリアから出された『お願い』に、僕は思わず変な声を出してしまう事になった。






──────────────────────







──時間は流れて夜。明日の最終決戦に向けて早くに眠ったり、明日に向けての準備をしたり、遅い夕食をとったり…皆それぞれが自由に時間を使っている中、僕は……。




「…………」


「…………」


…本来、カノンノとメリアの部屋で、僕とカノンノがベッドに腰掛け二人きりで上手く顔を合わせられずにいた。
何故、今僕とカノンノが同じ部屋に居るかと言うと…メリアからの『お願い』が、『今日寝る部屋を交代しよう』というものだったからである。
カノンノもこの事はメリアと話し合って決めていたことらしく、今こうして僕はカノンノと同じ部屋で、メリアは僕の部屋で居ることになっている。
ヴォルトとウンディーネも『契約は繋いでいるから身体から離れても補助はある程度出来るから大丈夫』と僕の身体から出ており…事実上、今僕とカノンノは二人きりという状況である。

二人で居るときは今までも結構あったので、ある程度話しも弾むだろうと思っていたのだけど…こういう感じになるのは初めてであって…僕もカノンノも上手く話しを出せずにいた。



「…ぇ、えっとね…っ!」


「…ぁ、あの…っ!」


「「っ!……………」」


なんとか話しをしようと相手に声をかけようとするも、お互いに言葉が被ってしまい僕とカノンノして再び顔を離してしまう。うぅ…今まで二人きりでも普通に話してたのになんでこういう時に上手く話しが出来なくなるんだ…っ!

このまま何の話しもせずに気まずいままで終わってしまうのだろうか…そう、思っていた時だった。


「…っ!え、衛司…っ!」


「は、はいっ!」


不意に、何か決心した表情になったと思うと真っすぐと僕に向き直り、僕の名前を呼んだカノンノ。突然のそれに僕も思わず声を出して真っすぐとカノンノを見る。


「…衛司…また、私達に嘘…ついてるでしょ…?」


「……えっ…」


真っすぐと僕を見たままそう言葉を出したカノンノ。その言葉に僕は一瞬何を言われたのか理解出来ずにいたが…少しして僕は徐々に頭の中で理解してきた。
カノンノに気付かれていたのだ…僕のドクメントの、身体の事が…。


「っ…一体…どうして…」



「…やっぱり忘れてるみたいだね。衛司…私、一応皆のドクメントが見えてるんだよ…?」


「…ぁっ…」


僕の問いにカノンノは溜め息を一つ吐くとそう言いながら自分の目を虚ろにして僕を見つめ、僕はそれを理解して声を漏らした。
カノンノが以前、聖地ラングリースに入った際に起きたと言っていた肉体と精神のズレ。そしてそれによって彼女が一時的に他者のドクメントが見えるようになってしまった事。
しまった…最近聞いてなかったからもう治ってると思ってて忘れてた…っ!


「…私も始めはしばらくすれば戻るのかな、って思ってたけど…なんだか戻るよりも前に身体の方に慣れちゃった?って感じで…今はこうやって自由に使えるようになったんだ。…まさか、こういう時に使えるなんてね…」


「…黙っててごめん…」


「…衛司のドクメントを見たときや皆に話してたとき…薄々『また衛司は言わないんだろうな』って思ってたから。…でも…私にはちゃんと説明してくれないかな?衛司のその…いつ壊れちゃうか分からない身体の事…」


僕の言葉にもう一度溜め息を吐いたカノンノは真っすぐと僕を見てそう言葉を出した。
僕はその言葉に諦めたように頷いて、僕の身体の事を一通り説明するとカノンノは僕へと手を伸ばし、恐らく僕のドクメントがあるであろう場所をそっと撫でるように手を動かして口を開いた。



「──そう…なんだ。…そんな状態でもやっぱり…衛司は行くって言うんだね…」


「うん。…カノンノは…止めたりしないんだね。てっきり『絶対駄目』って言われると思ってたけど…」


「…私もあのドクメントを見たとき、始めは止めようと思ってたよ。…でも衛司の話しを聞いてて…そうなってまで行こうとしてる衛司の意志を…止めたりしたら駄目だ、って思ったの。……それに、ね──」


カノンノは静かにそう言いながら僕のドクメントを撫でていたであろう手を止め、そのまま倒れ込むように僕へと抱きついてきた。僕はそれに少し驚きつつもカノンノを抱き止めて見ると、そのままカノンノは真っすぐと僕を見て言葉を続けた。


「……それにね…もし此処で衛司の意志を止めたら…今まで私の意志を黙って背中を押してくれていた衛司の全てを否定するみたいで…私は…止められなかった」


「カノンノ……」


「だから衛司…せめて…約束して。絶対に死なないって。…私達皆で、笑って生きて帰ろうって…」


真っすぐと僕を見たまま、だけど今にも泣き出してしまいそうな表情でそう言葉を出していくカノンノ。
僕はその言葉を、カノンノを少し強く抱きしめてゆっくりと頷いて答えた。



「うん…約束するよ。絶対…僕は死なない。皆で…生きて帰ろう」


「うん…っ!」


お互いに抱き合いながらそう約束しあう僕とカノンノ。少なからず僕は不安であったけど…彼女の言葉で、僕は確かに…その不安が安心に変わった気がした。

…そのまま暫くして…そろそろカノンノを離そうとした時だった。



「──…ぁ、後…ちょっとね、衛司…私からお、お願いが…あるん…だけど…」


「…?僕に出来ることなら応えるよ…?」


どこか顔を真っ赤にしながらそう戸惑いがちに言葉を出したカノンノ。僕はその言葉に少し首を傾げてそう言うと、カノンノは少し迷いながらも口を開いた。


「え、えっと…私…やっぱり明日の事が不安なんだ…。だ、だからその…衛司にこの不安を取り除いて…勇気を分けてもらいたいといいますか…その…なんといいますか…」


「う、うん…?つ、つまり…?」


もじもじとしながらそう言葉を出していくカノンノ。僕はそれを聞いていくが、上手く理解できずに思わず彼女に聞き直してしまう。カノンノはそれに俯いて「あぁ…」とか「うぅ…」とか呟くと、何か決心を決めたように顔を上げて…そのまま僕に飛び込むように口付けしてきた。
…へ…っ!?


「んん…っ!?」


「ん…っ!…はぁ…衛司…その…っ!」


「う、うん……?」


「私と…ひ、一つになってください…っ!」


「………はぁっ!?」


突然のキスと飛び込みに対応出来ず、その勢いのままカノンノに押し倒されるようにベッドへと倒れ、唇を離されて呆然としたままカノンノを見上げていると、真っ赤な顔のままそう言葉を告げたカノンノに思わず声を出してしまった。
彼女の真っ赤になっている様子からして…カノンノと一つになるっていうことは……つまりはその…『そういう事』である。
その事を遅れながら頭の中で理解して思わず僕も顔を熱くなるのを感じた。



「え、あ、えっと…ど、ど、どうして…?」


「…さ、さっきも言ったけど…私も明日の事が不安なんだもん。だからその…勇気を分けてもらいたいというか…思い出づくりというか…。衛司は…その…私と…そういう事をするの…嫌…?」


「そ、そんな事はないよっ!…だけど…その…本当に、僕なんかで…いいの…?」


お互い顔を真っ赤にしながら、僕はカノンノに押し倒されたままそう静かに言葉を出した。カノンノは僕の言葉に小さく頷いた。


「あ、当たり前だよ。むしろ…衛司しかいないよ…。だから、その…これ以上嫌がるなら『衛司はヘタレだ』って、アドリビトムの皆に言いふらしてやる…」


「ぅ…そ、それは勘弁してほしいなぁ…。…僕…初めてだからよくできるか分からないけど…いいんだ…ね…?」


「…私も初めてだから大丈夫です…。だから…その…よろしく…お願い…します…」


「…こ、こちらこそ…?」


「「…あはは…っ」」


お互い顔を真っ赤にしながらそう言い合い…少し可笑しくなって笑い合うと、少しして僕達は唇を重ねて…そのまま流れるように、身体を相手へと預けるのだった…。

 
 

 
後書き

──以上、第六十九話、如何だったでしょうか?

…うん、私…今話色々頑張ったと思う…(遠い目←←


【エラン・ヴィタール】
原作で『エラン・ヴィタール』の説明が上手く理解出来なかったんでこんな感じにしてみました←
私の頭が悪いのが原因なんですが…正直説明が全く訳わかんなかった←←



【衛司とニアタの話】
『この世界が好きだから』は個人的に一番言わせたかった一言だったりします+
ニアタの『ありがとう』は…少なからずとも、この『ルミナシア』にはオリジナル・カノンノも関係している事もあっての『この世界を好きなってくれてありがとう』という意味もあります。


【衛司とカノンノ】
と、いう感じに衛司は止まりませんし、カノンノも止めない、という感じになりました。
カノンノのドクメント透視は最終決戦辺りではあまり触れられてなかったんでこんな感じにしてみました+

果たして、衛司はカノンノとの約束を守ることは出来るのでしょうか…←



【この後衛司とカノンノはどうしたの?】

昨夜は おたのしみ でしたね!←←

まぁ、要するにそういう事です、察せ←
二人とも初々しさが出せればいいなー、と思いながら書きましたが…上手くできてるでしょうか…?
書きながらこっぱずかしくなって何度か執筆するのを躊躇した私を許してくだしあ←

次回は遂にエラン・ヴィタール突入となります+


皆様良ければ感想、ご意見等宜しくお願いします+


ではまた、次回+
 
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