ロックマンX~5つの希望~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二十五話 エックスSIDE FINAL
地上に戻ったエックス達は見回すと見慣れない場所にいた。
壮麗なステンドグラスが斜陽を通していた。
淡い紅や黄色が無機質な床に映っていた。
そして荘厳な宮殿が崩壊を開始した。
突然のことにバランスを崩した3人の上から、天井の破片がパラパラと落ち始める。
ゼロ「何だっ…?建物が崩壊し出している…。」
エックス「考えるのは後だ!脱出しないと!!」
アクセル「こっち行けそうだよ、早く!!」
呼びかけたアクセルに、振り返ったエックスが息を呑む。
影がアクセルに迫る。
影はボロボロのマントを纏い、回路も露わな腕を伸ばしながらアクセルに迫る。
死人さながらの恐ろしい姿で、エックスは思わず息を呑んだ。
エックス「(シグマ…)」
アクセル「うわああああ!!」
恐怖のあまりに絶叫したアクセルは必死にバレットを乱射する。
だがシグマはバレットの攻撃などものともせず、笑いながらその大きな腕を振り上げた。
シグマ「フハハハハハッ!!」
殴られた彼の身体は容易く吹き飛ばされ、壁を突き破り見えなくなった。
エックス「アクセルー!!」
エックスは叫んだが、同時に瓦礫が落ちていく。
エックス「シグマ…」
シグマ「私は…蘇る…姿を変えて、何度でも…!!」
機能停止が当然と思える深手にも関わらず、シグマは前進する。
凄まじい執念にエックスは背筋がゾクリとした。
応戦しようとしたエックス達の頭上からの衝撃波が、彼らの足元を撃つ。
見覚えのある攻撃に上の足場を仰げば、2人は双方とも大きく目を見開いた。
「見つけたぞ…ゼロ、エックス!!」
大鎌を手にした隻眼の死神。
驚きで声を失くした2人の前に、レッドは降り立つ。
セイバーを抜く間も与えずゼロを蹴り上げ、バスターを構えようとするエックスを鎌の背で殴り飛ばした。
そのまま、まるで守るようにシグマの前に立つ。
レッドの後ろで、奴は勝ち誇ったように笑った。
シグマ「フハハッ!いいぞレッド!!お前の力をよこせ……奴らに復讐だ!!」
シグマの身体から先端がギラギラと光るコネクターが伸び、レッドを包む。
コネクターは彼の身体に接続されていく。
そんな中、前触れなくレッドが呟いた。
「これなら……」
持ち上げた手に、握られているのは鎌ではなく。
「……どうかな?」
低い声に混じった、少年特有の高い声。
同時に突き付けられるバレット。
銃口から光が溢れ出し、シグマの顎から頭にかけて貫いた。
再び苦悶の叫びを上げたシグマは、壁を突き破り外に、高い空中へと放り出された。
レッドは身体を捻ってコネクターを引きちぎり、壁に背中を打ち付ける。
そのままずるずると崩れ落ちた。
光を放ち、収まれば、彼は彼本来の姿に戻っていた。
エックス「(そうか…レッドのDNAをコピーしていたのか……)」
叩きつけられ、動くのもままならぬアクセルにエックス達が駆け寄る。
エックス「アクセル!!」
ゼロ「起きろ、アクセル」
エックス「大丈夫か?」
エックスが手を差し出しながら尋ねると、アクセルは俯き、微かに笑い声を零した。
アクセル「…上手くいったでしょ?エックス」
悪戯っぽい子供の声。
しかし、上げられた顔には、どこか儚い憂いを帯びた笑み。
アクセル「…僕のこと認めてくれた?」
翡翠の瞳をじっと見つめる。
エックスは一瞬目を見開いたが次の瞬間、苦笑した。
エックス「…当たり前じゃないか」
苦笑と共に返された言葉にアクセルは笑みを深くした。
こうしている間にも宮殿が崩壊していく。
ゼロ「立てるなら急げアクセル。ルインとルナが負けるとは思えないが、万が一のこともある」
エックス「ああ」
アクセル「そっか…2人があいつらを抑えてるんだったね…」
2人が一度戦った相手に負けるとは思えないが、あの四人もシグマにも劣らない実力の持ち主だ。
人間素体型の特性である“成長”する能力を持っているため、下手をしたらシグマよりも厄介な相手だ。
エックス「行くぞアクセル」
アクセル「…うん」
そして墓場を思わせるような場所でルインとルナは四天王を抑えていたが、震動が強くなっていくことに焦燥を覚えた。
ルナ「やべえな、ここはもう長く持たない。早く脱出しねえと…」
ルイン「うん、分かってるよ。やっぱり4対2っていうのは欲張り過ぎだったかな?」
ルナ「まずはエックス達と合流しなきゃな…」
ルイン「…その前に彼らが見逃してくれるならの話だけどね……」
ウェントス達に背を向けた瞬間、破壊されるのは目に見えている。
ルナ「(ルイン…俺が目潰しをするから目を閉じろ)」
ルイン「(…分かった)」
ルナ「…トランスオン!!」
光が空間を支配し、ウェントス達の視界を塞ぐ。
そしてウェントスに変身したルナはルインを抱えて脱出した。
ウェントス「チッ!!」
イグニス「逃したか…」
テネブラエ「このまま、ここにいるのはまずい。我々も脱出するぞ」
グラキエス「OK」
ウェントス達もクリムゾンパレスから脱出した。
エックス達とルイン達は無事に合流し、ハンターベースへと帰還した。
メンテナンスが一段落して、エックスが解放されたのはしばらくしてからである。
戦いは熾烈を極め、以前のバスター不調も加えてライフセーバーに念入りにチェックされた。
エイリアは何度も大丈夫と尋ねてきて、彼女を宥めるのは苦労した。
そして自由に動けるようになり、エックスはハイウェイに向かうためにルインを誘った。
ルインも快く承諾してくれた…。
背後でついて来る存在に苦笑を浮かべながらエックスはルインと共に歩き出す。
ハイウェイに着いたエックスとルインはかつてハンターの新人だった頃に見た景色を見て懐かしさを感じていた。
シグマ『エックス、ルイン。これが、我々が守るべきものだ。』
シグマが見せてくれた自分達が守るべきもの。
シグマ『これが、我々が守るべき街、人々、笑顔、命、心だ。』
エックス『はい、シグマ隊長』
ルイン『はい!!』
シグマ『私もただ1体のレプリロイドに過ぎぬ。いつかイレギュラーに敗れる日が来るかも知れん。だが、意志を継ぐ者がいれば、我々イレギュラーハンターは滅びぬ。エックス、ルイン。よく見ておくのだ…これが我々が守る物なのだということを……』
ルイン「(何だか昔を思い出すね…もうシグマ隊長はいないけれど…)」
エックス「…覚えているだろうルイン?君がハンターになりたての頃、シグマ隊長が俺達にこの景色を見せてくれたことを……」
ルイン「勿論だよ。シグマ隊長が私とエックスに教えてくれた。これが私達が守る街、人々、笑顔、命、心だって…」
エックス「シグマ隊長も1体のレプリロイドに過ぎない。いつかイレギュラーに敗れる日が来るかも知れない。けど、意志を継ぐ者がいれば、イレギュラーハンターは滅びない。シグマ隊長は俺達にそう教えてくれた」
ルイン「これが私達の守るべき存在と教えてくれたよね…」
もう尊敬していたイレギュラーハンター・シグマはいないけれど。
エックス「そこにいるんだろう?アクセル、ルナ?」
ルナ「ゲッ」
バレたと言いたげに顔を顰めたルナ。
ルイン「話し掛けてくれればいいのに」
苦笑するルイン。
ルナ「仕方ねえだろ?話しづらかったんだ。」
エックス「そうか。アクセル、ここはかつてシグマ隊長に大切なことを教えられた場所だ。」
アクセル「うん…」
エックス「イレギュラーハンターとなるなら、刻み込め、これが俺達の守るべき人々、笑顔、命、心なんだと」
エックスの言う通りアクセルは、ハイウェイから見える街並みを見た。
エックス「ここは、俺達の戦いの始まりの場所。」
ルイン「ここから私達の戦いが始まったんだよ」
ルナ「へえ…」
エックス「アクセル、君は弱き者達の剣となり盾となる覚悟があるか?」
かつてシグマに言われたようなことをアクセルに言うエックスにルインとルナは2人を見遣る。
アクセルは不敵な笑みを浮かべた。
アクセル「勿論」
その答えに満足した笑みを浮かべるエックス。
エックス「よし、ハンターベースに戻るぞ、これからみっちり鍛えてやる」
アクセル「うん!!」
ルナ「…俺達も帰るか」
ルイン「そうだね」
ハンターベースへ向かって走るエックスとアクセルに2人は苦笑して2人を追い掛けた。
後書き
エックスSIDE FINAL終了。
X7編終了。
ページ上へ戻る