空も飛べるはず
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二章
第二章
君の言葉を聞いて。僕はそちらを選んだ。
「じゃあここは」
「紅茶にされますか?」
「うん、そうするよ」
笑顔で君に言った。そのことは今でも覚えている。
そしてその紅茶を飲むと。とても美味しかった。
次の日も君のいる店で紅茶を飲んでそれからも。ずっとそうした。
そうして少しずつ打ち解けていって。僕達は付き合う様になった。
僕はいきがるのを止めた。真面目に学校に行くようにもなった。君と一緒にいることが何よりも楽しくなった。喧嘩をすることもあったけれど。
それでも僕はすぐに仲直りして。君と一緒にいた。
その僕は。君にこう言えた。
「あのさ、今度さ」
「今度?」
「何処かに旅行に行かないかな」
こう笑顔で提案した。
「遠い国か遠い場所。そこに」
「旅行ですか」
「うん、どうかな」
二人で町を歩きながら。僕は提案した。
「僕が学校の休みの時、それで君が仕事が休みの時に」
「二人一緒で」
「二人一緒じゃないと意味がないし」
そうでないと。本当にそう思っての言葉だった。
「だからね。どうかな」
「そうですね。それだと」
「一緒に行こうか、何処かに」
「はい、じゃあ」
こうしてだった。僕達は二人で旅に出た。そこは。
青い空が広がっている場所だった。町から離れたその場所に来て。それで青い空を見上げて。
そこに佇んでいた。その時にだ。
僕は君に言えた。この言葉を。
「僕がさ、学校を卒業して就職したら」
「その時は?」
「一緒にならない?」
こう言った。それこそは。
「その時にね」
「はい」
君は笑顔で頷いてくれた。そうしてくれた。
そうして僕達は一緒になって。今も一緒にいる。
一人だった僕が二人になれてそれで君と出会えたことに感謝して。そして。
二人でこう思う。この奇跡、僕は空にいるように幸せなことだと。今は二人で幸せの青い空を飛べている。僕はこのことにどれだけ感謝しても足りない。
そしてその僕に。君はこう言ってくれた。
「今は二人ですけれど」
「違うの?」
仕事から帰って来た僕を迎えてくれて。そうして言ってくれた。
「それは」
「はい、もうすぐ三人になります」
こう笑顔で僕に言ってくれた。
「三人に」
「じゃあそれって」
「はい、そうです」
また笑顔で話してくれた。
「これからは。三人で」
そうなると。僕に言ってくれた。僕は一人から二人になって三人になった。三人で空を飛べることになった。ささやかな幸せだけれど。僕はその中で飛び続けていた。
空も飛べるはず 完
2011・3・8
ページ上へ戻る