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転生赤龍帝のマフィアな生活

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二十三話:観察する魔王様

 
前書き
今回はサーゼクサスから見た一誠です。
それではどうぞ。


























 

 
Sideサーゼクス

『今代の赤龍帝』―――兵藤一誠。
私が今最も関心を割いていると言っても過言ではない人物だ。
最初にその存在を知ったのはグレイフィアがリーアとライザー君の婚姻の件で人間界に行って帰ってきた後だった。

グレイフィアはリーアとライザー君が婚姻をかけて『レーティングゲーム』を行うことになったことを私に伝え、そしてリーアの助っ人として兵藤一誠君が入ることを報告してくれた。
『今代の赤龍帝』、その言葉を聞いて興味を持った私はどんな人物か、どれほどの強さかをグレイフィアに聞いた。

性格としては何人にも従うことのない、生まれながら暴君だと言って、私に悪魔に引き入れることはまず無理だと教えてくれた。その時まではグレイフィアが私の考えを読んでいたことに苦笑を浮かべていられる程度の精神状態だったが、彼の強さについて聞いた瞬間私から余裕は消え失せた。


「殺されると思いました。」


そう、ただ淡々と報告してくれたグレイフィアが私は信じられなかった。
『赤龍帝』である以上、私達魔王ですら倒す力があるのは別に驚きではない。
しかし、グレイフィアの“殺される”と言う言葉……相手がどれだけ強いということではなく
ただ自分が一方的に狩られる立場だと理解したのだと……。

グレイフィアは魔王クラスの実力を持っている、セラフォルーと互角と言っても過言ではない。
そんな彼女が勝てる勝てない以前に、自分では同じ土俵にすら立てないと悟ったと言うのだ。
私が彼に勝てるかも聞いてみたが、グレイフィアは少し考えた後に一言―――


「分かりません。」


とだけ答えた。驚いたことに彼は禁手(バランス・ブレイカー)になることすらなくグレイフィアに死を予感させたのだ。彼の実力は未知数、そして何よりもただ強いだけではなく、存在そのものが『恐怖』を感じさせる………この目で見てみたくなってしまった。リーアの初めての『レーティングゲーム』なのでもちろん観戦に行く気ではあったがそこに『今代の赤龍帝』
いや―――兵藤一誠君に会うという目的が追加された。




『レーティングゲーム』当日、私はリーアやその眷属達の様子を見るためにリーアが部長を務めているというオカルト研究部へと赴いた。もちろん兵藤一誠君をこの目で見ると言う目的も兼ねて。
一先ず、彼に挨拶とリーア達に修行をつけてくれたお礼を言うと自分の目的の為だと言った……
なるほど自分がやりたいからやっただけなんて実に暴君らしい。グレイフィアの言っていた通りだ。
間違いなく彼は生まれながらの暴君だ。

それに実力もグレイフィアの言っていた通り相当なものだろう。内包している魔力は魔王クラス以上だ。流石に私ほどの魔力は無い様だが彼は『赤龍帝』だ。ほんの少しの倍加で私を超えてしまうだろう。それに感も鋭いようだね。彼は私の真の姿に気づきかけている。

だが、彼の本当の力は実際に戦っている所を見なければ分からないだろう。
百聞は一見に如かずだ。ライザー君がどれ程彼の実力を引き出してくれるかは分からないがその一部は見ることが出来るだろう。さあ、君の力を見せてくれ―――兵藤一誠君。




ゲームが始まると彼は肝が据わっていると言うべきか、ただ単にマイペースなのかは分からないが直ぐに寝てしまった。確かに彼はライザー君との戦闘しか許可されていない為にすることはほとんどないのだろう。共に見ていた彼の家族らしき女の子達の様子を見るにいつもあんな風に振る舞っているのだろう。フェニックス卿やその他の上級悪魔達は露骨に嫌悪の表情を露わにしていたが、私が何も言わない為か黙ってリーア達のゲームを見ることに集中していた。

まず初めに戦闘を開始したのはリーアが最近『兵士』の駒を八個使ってまで転生させたと言う『兵士』の子と『戦車』の小猫君だ。それに対してライザー君の眷属達は四人でかかってきたが二人に一蹴されてあっという間に倒されてしまった。

『兵士』の子―――バジル君か……面白い神器(セイクリッドギア)を持っているみたいだね。それに戦闘センスも悪くはない。戦闘経験も少なくはないみたいだ。リーア、良い眷属を手に入れたね。
小猫君も体術にさらに磨きがかかってるようだし、いいコーチをつけて貰ったみたいだ。
彼女は姉である黒歌よりも強くなれるかもしれないね。

その後、彼らが戦っていた体育館はリーアの『女王』である朱乃君の雷撃によって完璧に破壊された……増幅させる雷撃の数を増やすことで威力をあげると言うのはいい考えだ。
彼女も今後が楽しみだ。

その後、ライザー君の『女王』の奇襲を受けていたがそこも難なく潜り抜けて
先程ライザー君の『兵士』を三人倒した『騎士』の祐斗君の待つ場所へと向かっていった。
その後は堂々と運動場に飛び出て戦いを繰り広げると言う以前の祐斗君では考えられないような戦いを見せていた……何が彼をあそこまで好戦的な性格に変えたのだろうか?
それはともかくとしてバジル君と祐斗君は目覚ましい活躍を見せてライザー君の眷属の殆どを倒してしまった。




だが、ゲームは既に動き始めていた。ライザー君の『戦車』が言い放った自分達は囮だと言う言葉が意味する通りにライザー君とその妹であるレイヴェル君はリーアの本陣へと向かっていたのだ。
観客達が騒めき始めるが当然のことだろう、ゲーム初心者であるリーアに対して経験者であるライザー君はどっしりと構えてリーア達を待ち受けるだろうと多くの者が考えていたのだから。

おまけに彼はフェニックスだ、少し眷属が倒されたところでその優位性は揺らがない。そうだと言うのに確実に勝つためにとった行動―――いや、とらざる得なかったのだ。
なぜなら―――彼がいるからだ。
他の者は皆ライザー君やバジル君達を見ていたが私だけは彼を見ていた。
今まさに目を覚ました―――兵藤一誠君を。

彼は目を覚ますとリーアとライザー君達の様子を伺い始めた。恐らくはどこで攻撃を仕掛けるのか考えているのだろう。最も効果的かつ合理的な瞬間を狙っているのだろう。まるで獲物を狩る瞬間を待つ獅子のように。だがそれを乱す者が現れた。


『親方様は拙者が命を懸けて守り抜きます!!!!!』


バジル君だ、リーアの為に自分が盾になろうとしているのだ。
リーアの頬が一瞬染まったように見えたが恐らくは私の勘違いではないだろう。
ここまで、リーアを思ってくれるような子がリーアの相手になってくれれば私も嬉しいのだが。そんな関係ないことを考えているとついに彼が動いた、リーア達の前に盾になるように飛び出してきたのだ。

それを見た瞬間、私は彼が分からなくなってしまった。
彼は他人の為に動くような利他的な人間だったのだろうか?
グレイフィアの言っていた暴君は間違っていたのだろうか?


Welsh Dragon Balance Breaker(ウェルシュドラゴン・バランス・ブレイカー)!!!!!』


その瞬間凄まじい魔力の増幅を感じ、思わず戦慄してしまう。
他の者も同じだ。その余りの力に皆が驚愕してしまっている。
二人のフェニックスが放った炎が消えていき
その中から現れたのは紅のマントを身に纏いかすり傷一つ負っていない兵藤一誠君だった。

……ドラゴンの鱗すら傷つける炎を受けて無傷だと言うのか?彼は。
ライザー君が恐怖で怯えたようにさらに炎をぶつけ続けるがそれは全て彼に届くことすらなく消えていくだけ、いや―――彼が自分の炎でフェニックスの炎を焼き尽くしているのだ。

そのことに気づいたときは思わず笑いそうになってしまった。
炎を焼く?そんなこと聞いたことも見たこともない。しかもただの炎ではなくフェニックスの炎をだ。信じられない、反則ものだ。

彼はこれまでの『赤龍帝』の物差しで測れる人間ではない。
それに彼はあの禁手(バランス・ブレイカー)を自分が持つ“一つ”だと言った。
つまりまだ他にもあるということだ。二つも種類があるなんて聞いたことがない。
第一、彼の『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』は明らかに変化を起こしている。
グレイフィアが言っていた銃の形ともまた違うのだからこれまでの『赤龍帝』の常識など全く通用しないだろう。


『さあ、死刑執行の時間だぜ、焼き鳥(ドカス)。』


ああ、ここからは筆舌にしがたい、まさに処刑が行われていった。
彼は一切の容赦などなく無慈悲にライザー君とレイヴェル君を痛めつけていく。
彼らの不死性を十二分に活用して決してリタイアしないように配慮しながら痛め続けていく
その凄惨さは私ですら目を逸らしたくなったほどだ。
特に男の急所を攻撃し始めた時などはその場にいた男性全員が青ざめた程だ。
彼の家族である女の子達は大丈夫だろうかと様子見てみたが―――

「お兄ちゃんを馬鹿にした罰…。」
「イッセーさんを馬鹿にしたことはまだ許してません!!!」
「えっと……一誠さんを馬鹿にしたのなら仕方がないですね。」

一切目を逸らすことなく周囲を威圧するほどの怒りを放っていた。
……ライザー君、君は一体何をしたというんだい?
ここまでの仕打ちを受けるということは相当酷いことを言ったんだろうね。
そうだとしたら流石の私も擁護出来ないよ。

それにしても……あの色とりどりの炎はまさか死ぬ気の炎なのだろうか?
そうだとすると彼はボンゴレの人間―――つまり天界側の人間ということになる。
戦争にでもなればあの力と残虐性が私達に向くということだ……恐ろしい限りだ。
私が真の姿になれば勝てるか?

………グレイフィアの言う通りだ、分からない。
彼の力はまだ底が見えない、それに彼はまだ若い、これからもさらに成長していくだろう。
そうなっていけば想像もできない力を手に入れるかもしれない。
まったく……恐ろしいよ。兵藤一誠君。


『そろそろ、終わりにするか……中々楽しかったぜ。』


そう言って倍加を始めて力を溜めていく……あれは、やばい。
そう直感的に分かるほどの力が溜まっていっているのだ。
あれをまともにくらえば私であっても一瞬で消えてしまうだろう。
真の姿になり、滅びの魔力で攻撃が当たる前に消してしまえば威力は下げられるかもしれないがそれはもはや賭けだろう。当たればただでは済まないことだけは明白だ。


COLPO DI XBURNER(コルポ・ディ・イクスバーナー)!!!!!』


彼の右腕からから放たれた業火が通った後には―――何も残っていなかった。
撃たれたライザー君はもちろん、建物、地面、空間、全てが焼き尽くされており
灰すら残ってはいなかった……今の一撃なら間違いなく神であっても殺せる。
神をも屠る『赤龍帝』、その最たる者が『今代の赤龍帝』―――兵藤一誠なのだ。




ゲームが終わり、誰もが先程見た兵藤一誠君の恐ろしさに震えていると集中治療室の方から悲鳴が聞こえて来た。まさかと思い、慌てて見に行くと倒れ伏す看護師の山の先に股間を抑えて白目をむき気絶をしているライザー君の姿があった……止めを刺したのだろうな……恐らくもうライザー君は子を成すことは出来ない体になってしまっているだろう……哀れに。

そう言えば、この惨状を作りだしたであろう彼はどこにいるのだろうか?
あたりを見まわして見るが見当たらない……入れ違いになったのだろうか?
一先ず観客室に戻ると上級悪魔達が顔を真っ青にしていた。
何事かと聞いてみた所全員が口をそろえてこう言った。


「殺されると思った。」


ただ、一度睨まれただけで自身の死を予感したと言うのだ……
彼はただ家族を迎えに来ただけだと言うのにだ
……圧倒的な力、存在感、それらで相手を恐怖のどん底に突き落とす『最強の赤龍帝』……恐ろしい。

フェニックス卿は今回の件に関しては何も言わないようにするつもりらしい、彼に逆らえば他の家族の命すら危ないと考えたようだ。ライザー君に関しては酷い災害にでもあったと思って諦めるようだ。
災害か……まさに言いえて妙だ。彼は災害と言う方が良いような人間だ。
『災恐の赤龍帝』とでもいった方がいいかもしれない。




そう言えば……レイヴェル君はあれ程酷い目に合わされたと言うのにいやに熱っぽく彼を見つめていたな……男女の関係と言うのは良く分からないものだね。

 
 

 
後書き
これで焼き鳥虐殺編は終了です。
コカビー編は番外編をはさんだ次々回に開始します。 
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