チームは5人? いえ6人です!
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第6話 チーム結成のために
<軍用精霊>の契約式典は、むちゃくちゃになったが、カミトが倒れているということで、学生証で身分をはっきりさせて、アレイシア精霊学院内の救護室へ、俺が契約しているピクシーの風のシールドで運ぶことにした。風のシールドは通常球体としているが、今回は葉巻型として運ばせた。
部屋に帰って、リンスレットとキャロルに簡単な話をすると、キャロルが率先してリンスレットをカミトの見舞いにいかせようとする。キャロルはなぜか、フェンリルにフライパンを呑み込ませていたが、事の顛末の詳細はきかないことにした。
その日の夕食時、俺はリンスレットに話しかけた。
「そういえば、リンスレットは、チームはどうするのかしら?」
「まだ、こころあたりのある方へ声をかけていないだけですわ。エルダはどうするつもりですの?」
「そうねぇ。現状の学内で精霊剣舞祭<ブレイドダンス>にでれる可能性の高いチームとしたら、上級生のチームケルンノス、エリスが中心になっているあの4人に、ドルイドのシャレイリアがいるチームぐらいかしらって思うのだけど、精霊剣舞祭<ブレイドダンス>で優勝しようと思ったら、どのチームも中途半端なのよねぇ」
「ようするに、貴女もきめていないわけね」
「うーん。入れるかどうかは、聞いてみないとわからないけれど、カミトが入るチームに入ってみようと思っているの」
「貴女って、女好きだったわよね」
「たしかに女性が好きだけど、だれでもってわけじゃないでしょう」
「そういえば、そうね。最近は、キャロルにフレイヤ先生ばかりみたいね」
同じテーブルで食事をしているキャロルをみると、目線をそらされたが、それは少々ばかりはずかしそうな感じだけど。
「それとも、リンスレットもあたしのお相手をしてくださるのかしら」
「いやよ」
普通はそうだよな。それから話題をもとにもどして、
「まあ、それはよりも、ハヤト単独の実力だけをみたら、先のチームの中で単独で勝てる相手はいないと思うわよ。特に昨晩の魔精霊や、今日の巨人精霊の剣舞をみてたら、彼はあの剣精霊をつかいこなせていないから、伸びる余地をのこしていそうだし」
「可能性だけでチームを決めようとしているの?」
「そうともいえるけれど、今は任務でいないヴェルサリア・イ-ヴァ・ファーレンガルトを相手にして、既存のどのチームに入っても勝てる気がしないからよ。勝てる可能性があるとしたら、カミトだけとみるわ」
「ヴェルサリア・イ-ヴァ……」
「それとも、ヴェルサリア・イ-ヴァと同じチームに入らせてもらう?」
「誰が、そんな」
「でしょ。優勝できなきゃ<願い>を精霊王に聞いてもらうことさえ、できないのだし、最低でもヴェルサリア・イ-ヴァ・ファーレンガルトに勝てるチームでなければ、優勝は難しいと思うわよ」
「それはそうとして、なんでわたくしのこと聞いてきたの?」
「好きだからよ」
「あ・ああ・貴女ね。な・なな・何いってるのよ」
「言い方がわるかったかしら。貴女の弓を放つ姿勢が好きだからよ。威力も申し分ないし、欠点は、目立とうとしすぎるぐらいだけど」
「貴女、もしかして、私のこと、からかっているのかしら?」
「あら、そんなことありませんわ」
そう言って、俺は目をそらしてしまいそうなのを、無理をして彼女の眼を見続けていた。それでごまかし切れたのか、
「まあ、いいですわ。わたくしはわたくしの方法でチームをつくりますから」
「けれど、チームは早くきめた方がいいとは思うわよ。なんせ、精霊剣舞祭<ブレイドダンス>は、1チーム6人とはきまりましたが、どんなルールで戦うのかわからないのですから、個人の能力の高さの他に、1チームが2つや3つにわけてブレイドダンスをおこなう必要があるのかもしれませんから」
そう言って話を終えようとすると、キャロルがリンスレットに小声で何かを伝えている。そのあとに、俺のところにキャロルがきて、
「お嬢様は、エルダさんのお誘いを受けても良いとおもっていらっしゃるみたいですよ」
「ありがとう」
キャロルのこういうスキルは高いんだよな。すぐにリンスレットを誘うのもバレバレだから、この話題は明日にのばさせてもらった。
翌日夕刻のレイヴン教室。帰りのホームルームが終わったところで、カミトに声をかけた。
俺の後ろには、リンスレットとキャロルで、カミトの横にはクレアと剣精霊であるエストがいる。エストのことは、今朝のホームルームで紹介されたので、流すとして、
「このあと、カミトと別な場所でお話をさせていただきたいのですが、よろしいですか。もちろんクレアも同席されてかまいません。私の方もリンスレットとキャロルについてきてもらいますので」
カミトが一瞬困ったように、クレアの方へと顔をむけたが
「好きにすれば」
そのひとことで、カミトはそのままついてきてくれることになった。
場所は、昨晩消失したカミトの寮だった場所の近くだ。
「それで、さっそくお話したいというのは、カミトのチームに入りたいのですが、カミトはどのチームかに所属していますか?」
「いや、まだきまっていないというか……」
「カミトはあたしの奴隷精霊なんだから、あたしのチームにきまっているでしょう」
クレアが割り込むのは計算のうちにはいっていたので、
「それでは、クレアはチームとしてカミトと同じチームとして学校に届け出は、出していますか?」
「それは、まだよ」
「そこにカミトを精霊として届け出るつもりじゃないですわよね? それなら、エストも精霊ですから、あなたのチームは結局1人となりますわよ」
にっこりとして聞いてみる。
「……」
グレイワース学院長なら、そのままうけつけそうで怖いが、担任であるフレイヤ先生なら、却下してくれるだろう。
「クレアの意志は、ハヤトと同一チームであるということですよね?」
「そ・そうよ。何か文句ある!」
「いえ。カミトもそれで問題ないのですね?」
単なる確認だが、
「そうだな、一応契約精霊になるっていったからな」
「そういうことなら、カミトはクレアのチームに所属するつもりということなんですね。あたしもカミトが入るチームに入らせていただきたいのですけど。クレア、いかがかしら?」
「わかったわよ。それでいいわよ」
「ありがとう。カミト、クレア」
「要件はそれだけかしら、エルダ」
もしかして、気がついているかな。
「いえ、カミトがいるチームになら、入っていただきたい方を推薦もさせていただきたいのです」
「エルダ。まさか、リンスレットだなんていわないでしょうね」
「その通りですけど、私はカミトに彼女を推薦するのでして、クレアのチームを直接推薦しているわけではありませんわ」
「そんなの、却下よ却下!」
自分でも詭弁だとはわかっているが、言うだけは言ってみた。リンスレットの忍耐がきれかかっているのか、キャロルが押さえにかかっているから、なるべく手短に話をすすめるか。
「貴女たちが組むと、チームワークに問題が出るっていうのは知っているけれど、私の眼からみたら、リンスレットだけじゃなくて、クレアにも問題があるからよ」
「そんな。嘘でしょう」
「あたしとリンスレットが組んだときの勝率は、そこまで悪くないわよ。リンスレットが、どこにいるかわかっているから、そこを気にすればよいだけであって、クレアにはそれができていないからよ。チームワークを崩しているのはクレアも一緒よ。それに、クレアとハヤトの2人でもチームワークがとれていないのは、昨日だけでも見受けられたわよ」
「もしかして、喧嘩打っているの?」
そんなクレアに俺は
「貴女の欠点を指摘しただけよ。信じられないのなら、今から元素精霊界で剣舞しましょう」
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