ドリトル先生と伊予のカワウソ
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第十二幕その六
「だから兄さんは結婚についても努力するのよ」
「どうにかなるかな」
「なるわよ」
一言で返したサラでした。
「何とでもね」
「皆そう言うけれどね」
「兄さん、男の人は外見じゃないわよ」
いささかぴしゃりとした感じの言葉でした。
「中身よ」
「そのこともいつも言われるよ」
「兄さんはその点問題ないから」
先生の性格はサラもよく知っています、何しろ先生の実の妹さんですから。
「絶対にね」
「相手の人が見付かるんだ」
「見付けるのよ」
こうも言うのでした。
「いいわね、いい人をね」
「悪い人だったら?」
見付けた人がそうだったらとも言う先生でした。
「若しも」
「そんな人とは一緒にならないの」
「絶対にだよね」
「そう、何があってもね」
そうしなければならないというのです。
「いい人を見付けるのよ」
「日本にいるかな」
「兄さん日本人は嫌い?」
「いや、別に」
そう言われてもすぐに答えた先生でした。先生にとって人種的な偏見とは全く縁のないものだからです。
「日本人でもいい人がいれば悪い人がいるよ」
「イギリスと一緒でね」
「どの国でも一緒だよ」
世界中を巡ってきたからこそ言えることです。
「だから日本人でもね」
「そうよね、いい人がいれば悪い人もいるから」
「だから僕も」
「そう、いい人を見付けるのよ」
「この日本でも」
「そうしたら私も安心出来るし」
「サラもって」
「だって、兄さん日常生活はまるで駄目だから」
このこともよく知っているサラでした、先生が世の中のことには本当に疎いことも。
「だからよ」
「奥さんがいたら」
「大丈夫でしょ、動物達と一緒にいるのもいいけれど」
「家族も必要なんだね」
「そうよ、確かなお仕事にも就けたし」
大学の教授にです。
「後は結婚だけだから」
「じゃあ探すよ」
「そうしてね、頼むから」
「まあ何とか。そういえばサラって」
「私がどうしたの?」
「いや、よく日本に来るよね」
先生が今サラに言うのはこのことでした。
「本当にね」
「だからお仕事の関係でよ、主人の」
「それでだね」
「そう、日本のお茶もイギリスで売ってるし」
「日本のお茶の種類は多いね」
「凄くね、最近はグリーンティーが人気よ」
お抹茶です、それが売れているというのです。
「茶道をしている人も出て来てね」
「へえ、茶道を」
「そうよ、日本のね」
「それは凄いね」
「あの渋さに最初はびっくりするけれど」
それでもだというのです。
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