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【IS】例えばこんな生活は。

作者:海戦型
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例えばこんな結末で済むならそれでいい

 
前書き
おもいがけず妙に好評らしいこの小説。少しばかり想定外です。
でも怒涛(?)の更新もこれにていったん終了です。 

 
 
10月10日


「おーい二人とも~。こっちはカタがついたよ~?」

接近戦用IS「ダフマ」が返り血の様なオイルを浴びた状態で戻ってくる。両腕の超振動クローには無人機の胴体や頭部が刺さったまま、しかも盾代わりに使っていたISの身体をワイヤーで引きずっているその姿は猟奇殺人鬼にしか見えない。これでも今回は誰も殺していないし、ISコアも破壊してない。

「アリース、残存勢力はー?」

ゴーレムⅢの腕を引きちぎって武器に使っていたトラッシュが振り返る。彼女のIS「ロビンフッド」は量子格納機能が完全に消滅している代わりに武器の使用許諾(アンロック)が無制限解除されている。量子格納機能が無い分機体のペイロードは大きかったがためにそこへ改良を加え続けた結果、ロビンフッドは相手の武器をハックできるほどの電子戦能力を手に入れたのだ。

だからゴーレムⅢの腕だけという本来ならば機能しない内蔵武装も、彼女が握ればエネルギーバイパスを繋げて武器に出来る。流石に無人機を丸ごとというのは骨が折れるが、今回は学園の生徒が大暴れした所為で然程苦労する必要はなかった。

「・・・・・・機業も無人機も全員が戦意を喪失してる。後続もないみたい」

自身のIS「ホルス」の補助でその読心能力を如何なく発揮したアリスは、そう結論付けた。その手には手提げバックを両手で抱えるように狙撃ライフルが握られている。連射可能でありながら狙撃銃としての精密射撃も行える特別製だ。アリスは既にESP能力によってホルスのコアと疑似的な相互意識接続(ツインリンカー)を可能としていた。ジェーンとは違った意味で彼女も特別なのだ。
だからそんな彼女の能力と感覚は並のレーダー類をはるかに凌駕する精度を誇る。戦闘は完全に終了したようだ。

沿岸で戦っていた米軍司令官機のシルバリオ・ゴスペルが部下と共に撃墜されたISのコアを抱えて学園に集合している。撃墜された機業の操縦者も運び込まれ、更識に拘束されている。犠牲者ゼロ、負傷者なし。学園連合の完全勝利だ。
華々しい戦果を挙げた代表候補生たちに拍手が送られたり、ドイツ軍が内輪で盛り上がっていたり、何やら教員側が騒がしかったりと賑やかな喧騒が広がっている。


そんな光景を見て、トラッシュは無言で自分の掌へと視線を落とした。

「どうしたの、トラッシュ?」
「いや・・・・・・まともに人のために戦うことが出来たのって、初めてかもしれないなって」
「変なトラッシュ。アリスはどういう事か分か・・・ってても言わないか」

タイトは少々暴れ足りない様子だったが、だからといって騒ぎを率先して起こそうとは思わない。同時に、S.A.メンバーで唯一自分の過去を一切語ろうとしないトラッシュにそのことを詳しく聞こうとは思わなかった。――おおよその見当はついているし。

「ルワンダを思い出していたのかしら」

トラッシュから一瞬目の光が消えた。アリスが咎めるような目でタイトを見る。

「タイト、イジワルは駄目だよ?」
「別に、言ってみただけよ。まったく普段は愉快ぶってるくせに変なところでナイーブなんだから」

彼女は昔、平和維持(PKO)軍として派遣されたことがあるらしい。そしてそこで彼女は口を噤んだ。ならばその後に続く経験で、こんな世界に足を踏み入れるほどに衝撃的なことがあったのだろう。例えば――派遣先で大虐殺(ジェノサイド)が起きているのに、救助する筈の人々を見捨てて母国へ逃げ戻ることになったとか。
人のために戦えなかった女が数年越しに掴んだ、ほんの小さな充足。

「こんな時くらい素直に嬉しいって言いなさいよね・・・このぶきっちょ」
「みんな喜んでるよ?だからトラッシュも、ね?」
「・・・・・・うん。ウェージを迎えに行って、ジェーンの出迎えでもするか。それで今日は皆でパーッとやろう」



この日、世界初の大規模なIS戦闘が勃発し、半日と立たずに終息した。

「うわ、鈴音さんが来た!雷が落ちるぅ~!?」
「落ち着くのよ!供物を捧げれば人に害をなす存在じゃないわ!」
「ああああの!これ食堂で貰ってきたフルーツです!」
「アンタ達アタシの事を何だと思ってんのよ!!」
「お疲れ、いちか~!!」
「うおッ!?あ、ウツホか・・・ウツホだって頑張ったみたいじゃないか。なあ箒?」
「虚さんから聞いたぞ?今回の戦い、ちゃんと力加減が出来ていたそうじゃないか。そろそろ学園に復学できそうだな!」
『歓迎するぞ、妹よ!とはいえ実際にはちょくちょく()うておるがな』
『今以上に騒がしくなるなぁ・・・もう慣れたけど』

テロリストが100近いISコアを製造することに成功していた事実もさることながら、それを僅か数時間で全滅させ、死者を一人も出さなかったという衝撃の事実は後世に語られることになる。

「ねえセシリア!ボク、まだ元気なんだけど・・・今から模擬戦しない!?」
「あら、名案ですわ!実は私も欲求不満でして・・・では早速!」
『え、ちょ!?待ってくださいシャル!元気なのはいい事ですけど元気すぎますよぉ!?』
『あ、あの・・・セシリア!?それ本気ですか!?本気で言ってます!?』
「簪ちゃん、お疲れ」
「うん、お姉ちゃんも・・・でも、大変なのはこれから」
『頑張ったみたいじゃない?フタバ。あぁいうのは私の趣味じゃないけど・・・いいんじゃない?』
『ミリアお姉ちゃん、初めて私の事・・・褒めてくれた!』

同時にこの日を境に行方不明だった篠ノ之博士が学園所属という立場で表舞台に復帰して、ISコアの管理を開始。コアに宿る自我についての正式発表とそれに伴う新条約『学園条約』の草案を発表する。

(まどか)・・・・・・お前の身体のナノマシンは抜いておいた」
「・・・情けのつもり?姉さん」
「今更何を言っても言い訳にしかならんかもしれん。両親に連れていかれたお前を――」
「言うなッ!あんな屑どものことなど、思い出すのも忌まわしい!」
「・・・・・・これからは家族だ。例えお前が嫌だと言おうとな。私は欲深いんだ」
「勝手に、しろ。寝首をかかれる覚悟があるんなら」

テロリストはその全員が拘束され、法的な処罰を受ける事になった。ただ、一部の者は様々な事情から収容所送りを免れたし、収容所内での待遇も人道的なものになった。

「オータム・・・何そのフリッフリな衣装?魔法少女?」
「うっさい!S.A.の変態野郎に無理やり着せられてんだよ!そんなことよりスコールはッ!?」
「お前の事見て笑い転げてるぞ」
「・・・あははははははは!あ、あははは!!に、似合わない、似合わな過ぎて笑える!!」

様々な衝撃を世界に与えたこの戦いは、その終結と同時に様々な問題を浮き彫りにし、世間のIS至上主義に疑問を呈すことになった。だがISが無血の戦闘を可能とする事実も証明されたと主張する声も根強く、この争いは暫く続きそうである。

「おい小村!どこ行くんだ!」
「そうよ順子!貸した3241円返してから帰りなさい!!」
「黙って委員会の操縦者になるとかずるいんじゃないのか!?」
「同窓会だ同窓会だ!!勿論小村のおごりで!!」
「あ゛~!?これだから自分の口で言うのは嫌だったのにぃぃ~!?ヘルプミーまやちー!!」
「トーゼンのムクイです!暫く弄られててください!」

まぁ、そんなこんなで亡国機業との動乱は万事丸く収まった。
  
 

 
後書き
さて、そろそろみんな嫌いなシリアスが動き出すかも。シリアスなしでいきたくもあるんですが、シリアスがないと話が纏めきれないんです。 
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