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ソードアート・オンライン-ゲーム嫌いの少女冒険譚-

作者:蓮木
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アインクラッド編
  ゼノさんから学び得たこと

 
前書き
今回は初の戦闘描写です。拙いかもしれませんがよろしくお願いします。 

 
「さて、と。今日が俺の教えたことの最終試験ってとこやけど、準備は出来とるか?」

「ええ、準備はバッチリです。貴方から学んだことをこの戦いにぶつけるつもりです。」

あのデュエル宣言から翌日。第一層の主街区〈はじまりの町〉にてゼノさんと話している。今日が彼から学んだことを試す云わば「試験」の日。私はゲームも、このソードアート・オンラインについても何一つ知らずにいた無知な私を、導いてくれた。それだけでも感謝の心は治まらないが、「感謝は結果で見せてくれや。」とゼノさんの言葉。何よりも成長した姿を見せてくれるのが一番嬉しいのだと語った。だから私は、結果で答えなくてはならない。学んだことの意義を。学んでどこまで発展させられたのかを。




「そんじゃあ、最後の試験「デュエル」を始めるで。ルールは『初撃決着モード』ソードスキルはお互い自由に使ってよし、ただし俺は〈バーチカル〉〈レイジスパイク〉〈スラント〉の三つのソードスキルしか使わん。これはお互いが対等に戦うためのハンデや。そこんとこ分かってくれや。」

「ほら、デュエルを了承してくれや。すぐに負けるなんてこと無いようにしてくれよ?」

ゼノさんから言われた「試験」の条件を確認しつつ、私は彼から申請されたデュエルを了承した。ある程度の猶予時間の間にお互いに距離を取りつつ、向かい合う。後カウント5で始まる際に私はこう言った。

「分かりました。ゼノさんから学んだこと。私が身につけたこと。その全てを、この試験でぶつけさせて貰います!」

「良い感じやレミーちゃん。君が俺から学んだことでどこまで出来るのか……どこまで変われたのか。見させてもらうでぇ!!」

こうして私の「試験(デュエル)」は始まった。

「ほう…最初の初撃でソードスキルを選ばん辺り、レミーちゃんちょっと捻くれてるんとちゃうん?」

「それはゼノさんだって同じ――でしょう! 大方、突進技は〈レイジスパイク〉しか教えてもいないし使ってないから、私がこのデュエルでそれを使うのを予測して、上手く回避して決着付けようとしたんでしょう!」

「あちゃー、バレてたか……まぁそういう目的でもあったんやけど、今はええわ。お互いにこのデュエルに全力を捧げようとしよか!!」

お互い初撃はソードスキル――とは行かずに普通の剣技のぶつけ合い。私から考えれば初撃を当てれば勝ちということは、裏を返して先に当たったら負けという意味合いの方が強い。しかもゲーム経験量や体格の差などその他もろもろを考えると、私に不利な条件であるのは変わらない。だからこそ最初は突撃だけすることにしたのだが、どうやらゼノさんも同じ考えだったようだ。

「最初のころとは随分変わって、ちゃんと剣も正確さが出てるし飲み込みはやっぱり早い方なんやなぁ……」

「お褒めの言葉ありがとうございます! これでも剣には自信がありますからね!」

「そうやなぁ……確かに上手いけど、このゲームでその技術を上手く引き出せるかが問題やっちゅうこった!!」

お互いに剣技を振るいつつ、ゼノさんの強烈な振り下ろし自分の剣で受けてその後距離を取った。私の脳内で思ったことはやはり鍔競り合いのような状況になったら私の方が不利だという現実。そして剣技においてもほぼ互角。勝てるとしたら――――――――

「遠距離からの突っ込み!!」

離した距離を一気に詰めるための突進と剣による突き。少なくともこれだけは彼に勝っていると断言できる。そして、この近距離での勝負ならリ-チの差は殆んど影響を受けない。極々近い距離、ショートレンジよりも更に深く、鋭く。私の体と剣は煌めく。

「ええで、その心意気。受けて立つわ!!」

こうして私とゼノさんのデュエルは更に深く激しくなっていった――――――



「はぁ……はぁ……レミーちゃんもお疲れさん。いやぁーそれにしても随分と長引いたなぁー」

「確かにかなり長引きましたね……でも、なんだかすごく充実していました。」

「そうか? なら良かったで。このデュエルの中でレミーちゃんがどんな風に考えて、どうこうしようかってのが分かったのが一番の成果や。」

デュエルの結果は辛くも私がゼノさんの放ったソードスキルの隙を突いて勝利した。お互いにボロボロで疲れていたが、不思議とそれが気持ち良かった。ゲームの本質とはこういうものなのかも知れない。お互いが競い合い、高め合っていく。こういうことがゲームが面白い理由なのか、と私は考え始めていた。

「で、今回の試験やけれども……合格や。俺から教えたことも生かせてるし、自分で更に高めようとしたのがよう分かる。もう一人前のプレイヤーや。」

「ーー本当ですか? なら嬉しい限りです。これもゼノさんのおかげです。」

「だから礼は勘弁してくれって前も言ったろ? これは単なる俺のご好意やって。」

「でもやはり礼はしなければなりませんから……」

暫く話していて伝えたのは、今回の試験の結果。結果は見事合格。これ以上は教えることはもうないな、と話したゼノさんにお礼を言うとお礼は勘弁してくれとのこと。それでも感謝をしたい、と伝えていやそれでも勘弁してくれとループを続けているとーーーー


「分かった、分かった。そう言ってくれて、ありがとう。こっちも教えた甲斐があるってもんや。」

「これで、ゼノさんとのパーティーも解消ですね。ちょっぴり寂しい気もします。」

「あーそうやな。パーティーは解消やけども、お互いフレンド登録しよか。そうすればお互いにメールで連絡取れるし、何か手伝って欲しい時に呼んでくれたら俺も手伝えるからな。」

そう言って、フレンド登録画面を出してきたゼノさん。断る理由もないので、それを了承した。メニュー欄の〈フレンド〉に「ゼノ」とはっきり表示されている。ここからメールやチャットなどする際にフレンドを指定できるようだ。

「じゃあ、これで本当のお別れや。またボス戦とかで会えたら会おうな? 後言い忘れてたことが一つあったわ。」

「何ですか?」

「もう〈ゼノさん〉はやめぃ。ゼノで充分や。俺もレミーも、もう立派な一人のプレイヤーだからな。」

自分の師匠であった「ゼノさん」から、一人のゲームプレイヤー「ゼノ」へと呼び方を変え、対等の関係としてこれから呼び合うことになる。そしてゼノは更に言葉を続ける。

「ゼノさん……いや、ゼノ。ありがとう、貴方のおかげで私はここまで成長できた。」

「俺は大したことは教えてないで? 俺は基礎的なことと知識しか教えていない。だから今のレミーを作ったのは、紛れもなくレミー自身の力や。」

「私自身の力……」

「そう、レミー自身の力。与えられたものから、切り開こうとする力。その力って、身に着けたくても、中々身に着けられへんものやで。」

切り開く力。今までの自分に有ったか? と言われたら断言は出来ない。でもこの極限下の状況で何かを見つけ出そうと模索した自分がいる。何も分からないから、教えて貰いそこから見出した。自分に足りないものを必死に追い求めた。


「その力は大事やで? これから先このSAOで何が起こるか分からへん。PK(プレイヤーキル)が横行するかも知れへんし、ここで大切な誰かが居なくなってしまうかも知れへん。でもな、これだけは忘れへんでくれ。」





「立ち止まるな、前へ進め。立ち止まったらそこでお終いや。良いか、レミー。絶対に立ち止まるな。立ち止まらなきゃ、何かしらの道は開ける。」

「立ち止まるな、前へ進め――か。何かおじさん臭いですね。」

ゼノからの教訓を復唱しながら何かおじさん臭いねと苦笑するとお互いに笑いながら歩いていく。

「じゃあ、またどこかで。」

「ああ、またどこかでな。」

「「必ず会おう!!」」

そう言って私ははじまりの町を出てフィールドに出る。閉鎖された状況を立ち止まらずに変えるために。私は、進み始める。 
 

 
後書き
如何でしたでしょうか?今回のようなデュエルはあと何回か取り上げたいと思ってます。

次からは一気に時間が過ぎ、デスゲーム開始から2年後へと続きます。その間は「断章」としてでも書けたら良いかなぁと思います。

ご意見・感想等、お待ちしております。 
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