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インフィニット・ストラトスの世界に生まれて

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番外編 乙女の矜持 その二

次の日の朝、俺はIS学園にある検査室にいた。
この検査室には俺の他に織斑先生と山田先生、一夏、シャルロットの姿がある。
山田先生は検査室とは隔離された部屋で検査機器を操作しモニタを眺めながら一夏の身体を調べている様子がガラスごしに見て取れる。

「織斑くんの身体には一切問題がありません。ですが、白式の量子変換に異常が認められます」

山田先生の声はスピーカーごしということもあって少しこもったように聞こえた。

「織斑くん」

山田先生に促された一夏は雪片二型だけを部分展開しようとしたが、上手くいかない。

「装備が取り出せなくなっています」

「原因は?」

と織斑先生。

「詳しく検査してみないことには……」

「うむ」

腕組みをしていた織斑先生は考えごとをしているのかしばらく無言だったが、検査台にいる一夏に身体を向けると、

「織斑、白式を渡せ」

と、そう言った。
一夏はまた自分が襲われた時の心配をしている様子を見せたが、織斑先生はそんな一夏に不完全な力などない方が良いと諭す。
一方その頃シャルロットはというと、胸のあたりで両手を束ね一夏を心配そうに見つめていた。
自分のせいで一夏がこんなことになってしまったと責任を感じているんだろう。

この後、一夏の今の状態が皆に知られたら大騒ぎになる。
セキュリティ面から考えても最低でも代表候補生だけには知らせるべきと山田先生は言っていたが、山田先生の言葉を聞いたシャルロットが一夏は自分が守ると言い出し、これを織斑先生が了承した。

「ところでベインズ、その格好はなんだ。なぜお前は腰にバスタオルを巻いている。もしかして、制服のズボンを隠されるなんてイジメにあっているのか?」

織斑先生の言は当たらずとも遠からず、だ。

「この格好ですか? これはですね……俺がズボンを穿こうとすると消えるからです」

「ズボンを穿こうとすると消える、だと? そんなバカな話があるか。最初お前の格好を見た時、お前がズボンを穿きたくないからそんな格好をしていると思ったぞ」

「そんなわけないじゃないですか。どこの世界に女子だらけのIS学園の中を上は制服、下はパンツ一丁の格好で歩きたがる男子がいるんですか。俺は露出狂じゃありませんよ。ズボンが消えると証明するために一応予備の制服のズボンを持ってきたので見て下さい」

と言った俺は、腰に巻いていたバスタオルを無造作に剥ぎ取り床に置くと、持ってきた予備の制服のズボンを穿いてみせる。
すると……、

「消えましたね」

と山田先生。

「見事にズボンが消えたな。しかし、この現象はなんだ。織斑と同じ現象だと思うか? 山田先生」

「うーん……それはどうでしょう。ベインズくんについても詳しく調べないと解らないかもしれませんね」

「あの、織斑先生」

「なんだベインズ」

「今日の授業を休んでいいですか? この格好で授業を受けたくないんですが」

「ベインズ、その格好でも授業は受けれるだろ」

織斑先生は鬼ですか。

「受けれはしますけど……俺の精神が持ちませんよ。なんたって、ここに来るまでに好奇の視線を浴びまくったんですから」

「だったらベインズくん。女子の制服を着用したらどうでしょう。下はズボンじゃありませんから消えたりしませんよ? こんなこともあろうかと女子の制服を準備してあるんです」

なんでそんなに楽しそうに話すんですか? 山田先生。
俺は不幸という名の海原を漂っているかのような気分なのに。

「確かに女子の制服はスカートだから消えたりしないでしょうが、俺が女子の制服を着てIS学園を闊歩すれば、それはそれで悲惨な末路が俺を待っている気がします――っていうか、山田先生はどんな時を想定して女子の制服なんてものを用意してるんですか」

「おい、ベインズ。お前と山田先生が仲がいいのは知っているが、そういう話は人目のない場所で二人きりの時にしろ。ここは公の場だ」

織斑先生の言葉でこの話は終了となった。
授業については、今現在俺の担任ではない織斑先生では判断しかねるとのことだ。
ということで、織斑先生経由で俺が所属している一年四組の担任に話してもらうことになった。
結局俺は授業をサボる――じゃかった、休むことは叶わなかった。
休めない理由は色々あるのだろうが、主な理由は福音戦で負傷した俺が、かなり授業を休んだかららしい。

一年四組の教室に着いてみれば、俺は女子たちの視線により針のむしろ状態。
対外的には、俺は制服のズボンを予備も含めて汚してしまったことになっているが、それを信じている女子がほとんどいないことは俺に向けられる女子たちの冷たい視線から感じ取っていた。
こんなことになっている俺を他所に、一夏は今頃どうしているんだろうな。
アニメで描かれていたように壁隔てた一組の教室では一夏がいつもの女子五人衆と縞パン話に興じているのかと思うと、なんか……心が切なくなってくる。
隣の芝生は青く見えるというが、俺には一夏が目を開けていられないほど光り輝いて見えるよ。

授業と授業の合間の休み時間、俺は女子たちからの視線に耐えきれなくなり教室を飛び出した。
とは言っても、廊下にも女子はいるわけで、当然廊下にいる女子たちからも好奇の視線を浴びることになる。
だから俺は走った。
ただひたすらに。
なにも考えず、わき目も振らずに――全力で走った。
俺は校舎外へと飛び出し、女子の目のない俺にとっては安住の地にも思えるそんな場所にようやくたどり着く。
俺の目の前にそびえ立つ幅一メートル、高さ4、5メートルはあろうかというコンクリート製の柱に両手をつくと、全力で走って来たため乱れていた呼吸を深呼吸して整える。
そんな俺の前に現れたのはシャルロットだった。
しかも、俺を見るなり慌ててスカートの裾を押さえる仕草を見せる。

「な、なんでここにアーサーがいるのさ」

「そんなの言わなくても解るだろ」

シャルロットの視線は俺の顔から徐々に下へと移り、そしてその視線がまた俺の顔まで戻って来ると……、

「うん、なんとなく」

と、そう言った。

「シャルロットはどうしてここに来たんだ?」

「えっ? ボク? ボクはね――あれだよ、急に外の空気が吸いたくなったんだ」

「そうなのか? まあ、深くは追及するつもりはないが、俺と一夏がISが展開出来なくなったり、ズボンが消えるなんてことになっているんだ、もしかして……シャルロットにもなにかあったんじゃないのか? 人目のないこんな場所に来てるくらいだし。しかも見れば、スカートの裾を手で押さえるような仕草を見せている――」

ここで俺はシャルロットの助けになればとアニメ版ラウラが言っていたセリフを話し出す。

「今のシャルロットに役立つかは解らないが、参考までに聞いてくれ。今のシャルロットに俺が送る言葉は、『パンツ』がなければ『ブルマ』を穿けばいいじゃない、だろうな」

「ねえ、アーサー。今なんて言ったの? もう一度聞かせてよ」

「だからさ、パンツがなければブルマを穿けばいいじゃない」

俺から視線をそらしたシャルロットは少しうつむき加減で、

「ああ、なるほど……パンツが消えるならパンツと認識されない物を穿けばいいってことだよね」

呟くように言った後、再び視線を戻し、

「ありがとう助かったよ。これでなんとかなりそうだ」

と言って、表情を柔らかくする。

「お役に立てたなら嬉しいよ」

「ところでアーサー、このタイミングでブルマの話を持ち出すくらいだから、持ってるんだよね? 今すぐ貸してよ」

「ちょっと待て。なんで俺がブルマを持っていることを前提で話を進めてるんだ? しかも、今すぐ貸してなんて――俺が女子の体操着であるところのブルマを常時携帯してるわけないだろ?」

「恥ずかしいからって遠慮しなくてもいいよ。皆には秘密にしといてあげるからさ。早くブルマを出しなよ。どうせ、いつも持ち歩いているブルマを夜になると山田先生に穿かせて楽しんでるんだよね」

「んなわけあるか!」

と俺はシャルロットに向かって叫んでいた。

「えー、持ってないの? じゃあ、ボクはこれからどうすればいいのさ」

シャルロットは若干涙目でそんなことを言ってくる。

「ラウラは日本文化に詳しいだろうからブルマくらい持ってるかもしれん。皆の隙をみてラウラに聞いてみろ」

俺がそう言うと、シャルロットは解ったよと言って俺の前から去ったが、その後、シャルロットがなにも言ってこないところをみると、なんとかなったらしい。
ともかく、シャルロットが一夏におパンツなしの状態でスカートの中身を見られそうになる事件やら、一夏の前でボクの秘密を見せるとかなんとか言いながらスカートをめくり上げる惨事は未然に防げたと思う。
そしてなぜか俺がブルマ好きの男子だという噂がまことしやかに囁かれることになった。
噂の発信源は一年一組だとは思うが、誰だよそんな噂を広めたのは。
俺が昼休み織斑先生たちと鉢合わせした時なんか、

「ベインズ、お前はブルマが似合う女子が好きだそうだな」

なんて笑いながら言われるし、織斑先生と一緒にいた山田先生はというと頬を赤らめ、

「先生にブルマ姿で補習をして欲しいだなんて……そういうサービスは補習内容に含まれてないんです」

と言う有様だ。
俺はブルマ姿で補習をして欲しいなんて一言も言ってませんよ? 山田先生。
今頃俺がブルマ好きという噂はどんな発展やら進化を遂げているのか気になるところではあるが、とんでもなく恐ろしいことになっていそうな気がして聞かない方が幸せだろう。
こんな状態だと、しばらくの間は用事で名前を呼ばれる度に名前の前に『ブルマ好きの』という言葉がくっついてきそうだ。
まったく頭が痛くなってくる。
早く噂など消えて欲しいところではあるが、今回の噂はどうなんだろうな。
噂は早々に消えそうにない雰囲気ではある。
俺はこの噂を聞きつけたあのイタズラ好きの生徒会長が、面白がって変なイベントを考え出さないことを心の中で祈っていた。

ちなみに、ズボンやらおパンツが消えた原因であるが、ISの試験装備の中に量子変換をより効率的に行うオプションがあり、それが襲撃時に破壊され暴走、今回の騒ぎになったのである。
最後に俺のズボンだが、この日の夕刻、空がオレンジ色に染まる頃にはちゃんと元に戻っていた。

俺にとっては迷惑極まりない出来事だったな。
今度暇を見つけて厄を落とすために篠ノ之神社に行ってお祓いでもしてもらうとしよう。
少しは良いことがあるかもしれない。 
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