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『自分:第1章』

作者:零那
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『疑似家族愛』

当然の如く、オッチャンが待っててくれた。
兄ちゃんが助手席の窓から顔を出して『零那、こっち!』って呼んでくれた。
なんかごっつ嬉しかった。

[さぼてん]行ってオッチャンが頼んでくれた定食いただいた。
で、兄ちゃんのBarで乾杯。
無性に[たこわさ]食べたくなった。
居酒屋で持ち帰り用にして貰えんやろか...そぉ考えるほど食べたかった。

兄ちゃんに聞いてみた。
ほな、知り合いに頼んだるわってアッサリ。
細かいの無くて5000円札を渡した。
逆に迷惑って言われたから『タバコ、カートン買いしたら良いやん』って言ったら納得した。

オッチャンは、来るなりカラオケに夢中で零那のことは放置。
兄ちゃんが出て行ったのも気付いて無い感じ。
背中を向けて歌ってる姿が、ちょっと可愛いような、淋しいような、思いっきり甘えて抱きつきたくなるような...
いろんな気持ちに揺れた。


兄ちゃん帰ってきて[たこわさ]出してくれた。
で、食べようとしたとき『おまえ何えーもんつまみよんなぁ~くれやぁ♪』って言うから1口いれてあげた。
ニンマリ笑顔で子供みたい。
兄ちゃんが『組長、ちゃんと持って来るけん待って下さい』って言って、また奥行った。
タッパには軽く5~6人前程。


酔うと少し子供っぽくなるオッチャンは、組長っぽく無くて好き。
熱く語って説教してくれるオッチャンも好きやけど、こんなオッチャンも可愛くて好き。
可愛いって言ったら怒るけど。
[たこわさ]目の前に差し出されて、目キラッキラさして喜ぶんやけん可愛いよな。
兄ちゃんも笑ってた。


オッチャンが話し出した。

『おまえとこぉなるんは、なんとなく想像出来てた。店ヤメるんもな。なんでやろな。やからサイズ聞いたり買ったり、準備してたんや...』

『...予知能力?』

『ははは!あるんやろか!』

『オッチャンが初めてのお客さんで良かった♪』

『ほんまやなぁ♪おまえに出逢えて良かったわ!』

『それはこっちのセリフやんか!ほんま、ありがとぉな!』

『おまえには言葉にならんもん貰てんで♪』

『んな馬鹿な...』

今日はオッチャン良く歌った。
ふと時間見た。
ユウのバイトはマダ終わらん。

『携帯貸したるからユウ君にかける時言えよ。気にすんな♪』

『...オッチャン怖いよ?』

心読むことが出来るん?
てか、昔もこんな事あったな...そんな事を思い出してた。
一生組長に頭あがらん。


オッチャンに甘えて携帯借りた。
非通知でかけて話した。

キレられた。
『明日の夜は家おれ!』
男女間の束縛とか経験無いし嫌な感じした。
女同士の嫉妬や嫌な束縛は見てきてるから知ってるけど、恋人同士でも束縛ってあるんや...
外の世界でのまともな恋愛で、ちゃんと向き合って付き合うってのはユウが初めてやから、そぉゆうのは解らんかった。
でも、無駄な心配かけさすのは違うなって思ったから従った。

オッチャンに笑われた。
『ユウ君はオマエのこと好きやから心配しとんやろなぁ、ええやんけ。青春やな!ほな明日飯食って帰ろか』
頷いた。
兄ちゃんに言われた。
『せっかく妹できたのにさびしいやんけ。暫く逢えんのか?』
遊びに来るって言った。


夜中2時頃、3人一緒に避難所に帰った。
とりあえずドライで乾杯。
暫くしてオッチャンは浴槽に入る為、お湯を溜めた。
兄ちゃんも、オッチャンと一緒に風呂行って、シャワーだけして先に出てきた。
オッチャン出た後、自分もシャワーして浴槽洗ってから出た。
飲んで喋って5時前くらいに皆でまた雑魚寝。

朝10時頃に目ぇ覚めた。
冷蔵庫全体に在る物を確認。
ブロッコリーゆがいた。
芯は細かくしてミンチと一緒に味付けして炒めてオムレツ。
野菜の味噌汁。
シャウエッセン。
焼鮭。


いっぱい食べる2人には足りんかもしれんけど、何も無いよりはマシ。
白米も炊いてるし。
...お茶が無い!!
基本が酒やから忘れてた。
袋持って下の自販機に降りた。
お茶の好みなんか解らんから全種。

上戻ったら兄ちゃんが玄関前でタバコ吸いよった。


『何も言わんと帰ったんか思て焦ったし!』

『鞄置いてるやん』

『んなもん見えてないし!自販機の音でパッと下見たらおまえやったけん安心した』

『ありがとぉな...色々。ほんま零那は出逢う人に恵まれてんねやなって改めて実感する!』

『これ、一応。俺の携帯。今此処で組長と一緒なんは、おまえが居るからやし...』

オッチャンともっと一緒に居たいんやろなって思った。
一緒に居たいって言えば良いやんかって言ったら、甘えれんって強がる兄ちゃんが可愛かった。
オッチャンは、兄ちゃんの気持ちを、ちゃんと解ってる思うよってなだめた。
兄ちゃんは弱気。
とにかく入ろうって促した。


オッチャンは目を瞑ったままタバコ吸いよった。
みんな、寝起きから御飯食べれるタイプ。
むしろ寝起きって空腹。
2人が洗顔やら何やらしよる間に食べる準備した。
2人は、御飯があることに気付いて無いっぽい。


兄ちゃんが部屋に戻ってきてポカーン。
何言われるかは想像つく。
『...料理とかできるんや!』
想像通りの言葉まんま。
『こんなん料理とは言わんやろ』
オッチャンも状況把握して座った。
『零那の手料理、初めてやなぁ!いただきます♪』
兄ちゃんも『手料理久々!いただきます♪』って。

2人が、うまいうまい言うて食べてて安心した。
オッチャンの場合、不味かったらハッキリ言うてくれる。
兄ちゃんは言わんでも顔に出る。
自分も食べ始めた。
うん、普通に食べれる。
白米5合がカラッポ。
アッという間に全部無くなって気持ちいい。


片付けして帰り支度してたら、兄ちゃんの携帯が鳴って部屋の外に出て行った。
オッチャンに、この後、兄ちゃんと此処に居るんか、出て行くんか聞いた。
暫くは避難所生活するって。
淋しいから兄ちゃんも一緒に居らすって。
その言い方に愛を感じた。
素直に甘えれん兄ちゃんを理解した上での事。
改めて、オッチャンってカッコエエやん!!って思った。

『兄ちゃんの事、やっぱよぉ解ってんねやね。兄ちゃん喜ぶわ♪』

『男は若いと素直に甘えんからなぁ♪』

『せやね♪プライドってゆうか単純に恥ずかしいとか可愛い息子心やろうね♪』


『あいつはソレが可愛いねん♪』

『あはは♪ラブラブやん♪父子仲良くしょってね!また遊びに来て良い?』

『当然!電話もして来いよ!ワン切りでかまんけんの!』

『あはは♪ありがとぉ♪ほんまにありがとぉな、オッチャン...』


兄ちゃん帰ってきたから、零那は『ほな帰るわ、寄るとこ在るから此処で...』って。
兄ちゃんが『また明日も来いよ。俺暫く此処居るし!』って。
零那にってゆうか、オッチャンに対する精一杯の甘えアピール。
『大丈夫!!オッチャンも暫く居るみたいやし父子仲良く一緒に生活しょってや♪またすぐ来るし、邪魔しに♪』
オッチャンは豪快に笑ってた。
兄ちゃんはオッチャンを見てポカーン。
すかさずオッチャンが『居らん方がええか?出よか?』ってイジメてた。
良かった良かった。

なんかやっぱり何故か凄く淋しくなる...
本当の家族なんかより、血の繋がりも無い家族ごっこの関係が凄く大事。
温かくて居心地良くて、癒されていく。
こんな自分でも、優しい気持ちになれたりする。
此処を離れたく無い。
家族ごっこを続けてたい。
そんなバカなことを本気で想ってしまうほど...


 
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