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少年少女の戦極時代Ⅱ

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運命の決着編
  第131話 やっぱりイヤなの


 救助ヘリに搭乗したのは、凰蓮、城乃内、チャッキー、ペコ、ヘキサ、咲の6名だった。

 窓から見える地面はどんどんと遠ざかっていく。
 沢芽の街から――紘汰から遠ざかる。

 隣に座ったヘキサが、包帯を巻いたほうの手で、咲の手を痛ましげに包んだ。
 ヘキサとてまだ舞の件から立ち直ったわけではなかろうに、咲を心配してくれる。嬉しくて、同時に情けなかった。

「伝言、たのまれた。紘汰くんのお姉さんにって。『もう手料理食べられなくてごめん』って」
「そう」
「お姉さん、どこにいるかな。光実くんがにがした外国組かな。それとも日本のどっかの町かな」
「さがさなくちゃね。伝えるために」
「うん――」

 ヘリコプターが一定の高さに達した瞬間、咲やヘキサを初めとする全員のスマートホンが鳴動した。

M(マスター・)I(インテリジェント・)S(システム)のカンリクイキをこえたのかも――」

 メール画面には未開封の、リトルスターマインのメンバーからの心配メールが溢れ返っていた。
 メンバーの全員が、家族と外国に逃げた組のほうだったらしい。近況報告に、4人が異国の街並みをバックにした写メが添付されていた。

「みんなぶじみたいね。よかった」
「うん……っ」

 咲はスマートホンを強く握りながら、隣のヘキサとこつんと頭を預け合った。

「――わたしもこれからヒナンする。今度こそ沢芽の街に人はいなくなる。咲は、どうしたい?」

 密やかな声で言ったヘキサを、咲はまじまじと見返した。

(分かってるんだ、ヘキサ。あたしが紘汰くんと戒斗くんのことで迷ってたの)

 咲は大きく息を吸って、吐いた。

「あたしね、紘汰くんと戒斗くんがケンカするの、やっぱイヤみたい」
「やっぱり。そんな気がした」

 ヘキサは彼女のスマートホンを出して画面を咲に見せた。
 SNSの画面には、リトルスターマインのメンバー全員のコメントが一言ずつ付いていた。


〔トモ:やりたいようにやって来ればいいんじゃない?〕

〔ナッツ:むしろその状況で飛びださないと咲じゃない〕

〔モン太:凸れ、リーダー!(>▽<)〕

〔チューやん:……GO〕


 咲はスマートホンの画面から顔を上げた。ヘキサは力なく、それでも笑ってくれた。
 咲が未読メールをチェックしている間に、ヘキサはSNSで咲のことを相談していたらしい。行動の先回りは、さすが光実の妹と言うべきか。

 咲はすくっと立ち上がった。
 ハッチを開け放った。暴風がヘリコプターの中に吹き込み、皆が腕で身を庇う。

「咲ちゃん!?」
「みんな、ごめんね。――ヘキサ。あたしの代わりに紘汰くんのお姉さんへの伝言、よろしくっ」

 戦極ドライバーを装着し、ヒマワリの錠前を開錠した。

「変身」
《 ヒマワリアームズ  Take off 》

 ハッチから空へ身を投げた。

 落下しながらの変身を終え、月花はすぐさまヒマワリフェザーを広げて空を翔けた。
 二人の男の決戦の地へ向かうために。 
 

 
後書き
 作中にも書いた通り、まだヘキサは舞の件から立ち直りきれていません。
 それでも咲を後押ししたのは、ヘキサにとっても咲は特別なトモダチだからです。
 自分が何かすることで壊れてしまうものがあると知っても、何かをすることはやめない。今も咲を後押しすることで咲が傷つくかもしれなくても、咲が行きたい気持ちを汲める。それこそがヘキサという少女の「強さ」だと思っています。 
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