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少年少女の戦極時代Ⅱ

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運命の決着編
  第129話 ザックの真意 ②


「ザックがそんなことを?」

 ガレージまで帰って、咲は紘汰や仲間にすぐさま先ほどのことが芝居だと打ち明けた。

「ごめんなさい。紘汰くんのこと、あたし、だました」
「いや、咲ちゃん悪くないって! 俺、突っ走るタイプだから、あそこで退こうって言われて退いたか怪しいし。うん、悪くねえよ。それがザックの頼みだったんだろ? なら許す。これで一件落着な」

 「もういい」よりも「許す」のほうが咲には効き目がある。分かってやっているなら、紘汰はすごい。

「ザック、何考えてんだろ……」

 戒斗にザックと、元チームバロンの仲間に一度に去られたペコは、悄然としている。そんなペコを、チャッキーが肩に手を置いて慰めていた。

「ごめん、ちょっと外の空気吸って来る」
「あ、ペコ」

 ペコはチャッキーの手を振り切って立ち上がり、ガレージを出て行った。






 ペコは池のある公園に来て、テラスの手摺の上で自身の両肘を強く掴んだ。

(戒斗さんは、俺は一人でも大丈夫って言ってくれたけど。やっぱ俺、誰かに付いてくんじゃないとダメだよ。だから、ねえ、戒斗さん。ねえ、ザック。俺の前からいなくならないでよ!)

 肘に頭を埋めていると、テラスを歩く足音がした。最初こそ誰か通りがかっただけだろうと思ったが、その足音はペコに近づいて来ている。
 ペコは顔を上げてふり返った。

「ザック……」

 ザックはペコの前まで来ると、二つ折りにした一枚の紙を出した。

「これを内緒でシャルモンのオッサンに届けてくれ」
「なあ、ザック、一体何が」
「――今は何も聞くな」

 ザックはペコの手を取って、その手に紙を握らせた。まなざしは、真剣そのもの。その真剣さに気圧され、ペコはそれ以上を聞くことも、去るザックを追うこともできなかった。





 ザックは戒斗、湊と共に仮の拠点としている廃工場に戻った。

「どこへ行っていたの?」

 湊の目は鋭い。ザックの変わり身は自分でも不自然だと感じるほど唐突だったから、湊はその辺を気にして、こうしてザックの動向についてあれこれ追及してくる。

「トイレついでに買い物。ほい。これ、湊さんの分」

 ザックは冷たい缶コーヒーを湊に投げた。湊は器用に片手でキャッチした。

「戒斗はいいとしても、俺たちは、ドライバーの栄養補給だけじゃ味気ないだろ。大変だったんだぜ~、災害用の自販機探すの」

 湊は訝しさを隠さないままで、缶コーヒーを開けて飲んだ。

 ザックは適当な資材にどかっと腰を下ろし、自分の分の缶コーヒーを開けて飲んだ。コーヒーの苦さが思考を冴えさせてくれる。

(思えばずいぶん遠くまで来たな)

 ビートライダーズとして、ただダンスのみで競っていた頃を思い出す。

 ――王者然とした戒斗に傾倒していたし、それを支える己を誇らしく思った時期もあった。勝負事で融通の利かない戒斗を裏から汚い手段で勝利させることすら厭わなかった。

 だが、ザックは変わった。
 あの日、チームを去る戒斗から、量産型ドライバーを託されてから。
 チームの「リーダー」になってから。
 戦う意味を、人を守ることの誇らしさを知った。

 だからこそ、これは、ザックの誰にも譲りたくない役目であり、元ナンバー2からの手向けだ。


 “それ”を確実に果たすためにも、今は休息を取ろう。
 ザックもまた適当な資材にもたれて目を閉じた。 
 

 
後書き
 自分なりにペコとザックの心情を書いてみました。
 ペコのパートは第一部番外編を読んでないと厳しいかもしれません。優しくない作りですみません。

 爆弾という兵器を使った辺りが、ライダーとしてでなく、「人間」として戒斗を本気で殺そうとしたんだと感じ取って、画面の前でぞっとした思い出があります。 
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