『自分:第1章』
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
『避難所』
会計してから3人で帰ったのは普通のマンションの一室。
オッチャンいわく、此処は避難所らしい。
オッチャン筆頭に、限られた人しか鍵は持ってないらしいけど。
ベッド2、布団5。
電化製品も揃ってる。
完全に生活出来る状態。
避難所とは到底思えん。
贅沢な位細かく揃ってた。
オッチャンの性格が出てる。
此処に来る人への配慮も完璧。
酒屋で買った酒各種とコンビニで買った珍味系を出した。
昼からズット奢って貰いっぱなしやから。
酒は各種揃えたから飲むやろうし。
オッチャンが酒の量の多さにビックリしてた。
重かったからなぁ。
ふざけて、笑って、真剣に語って、泣いて、落ち込んで、また笑って...いろんなこと、皆が、腹割って話した。
気が付けば朝の7時過ぎ。
フェリーの始発は、とっくに出てる。
でも、此処の居心地が良くて...
2人と居るのが安心できて...
『ありがとぉ、帰るわ。』って一言が言い出せんくて...
でも、そんな甘えは他人の迷惑にしかならんって解ってる。
そんな零那を見透かしたオッチャンが言う。
『無理して帰らんでええ。別におまえが帰る迄の時間潰ししよったわけちゃうし♪』
兄ちゃんも頷いてた。
泣きそう...
素直に甘えた。
調理器具や冷蔵庫内もカナリ充実してた。
肉や魚も冷凍保存してあるし。
男だけが出入りする家でコレは、一般家庭より素晴らしい。
風呂場や洗面所、トイレも。
綺麗にしてるし揃ってるし、各生活用品の在庫や、新品の歯ブラシやカミソリなども多めに在る。
ポツンと端っこにまとめられたものを見てみる。
女物の歯磨きセットと生理用品、タオル類。
お風呂セット、洗顔セット。
あと、下着や服類。
ドレもコレも新品...
オッチャンが指名で毎日来てくれ出して、1週間くらい経った頃、何気に聞かれた。
零那が使用してる生理用品やシャンプー、洗顔などなど。
下着のサイズも...
一般の女の子は抵抗あるかも知れんけど、聞き方が巧いとゆうか...ほんまに何気なく、軽く聞かれたから。
聞かれたことも忘れてたくらい。
最近の若い子は解らんわぁ~とか言いつつ、服類すごい可愛い系...
オッチャン好みとゆうか、願望とゆうか、白やピンクばっかり...
それとも黒やヒョウ柄ばっかの零那に挑戦状?
零那にとって、白やピンクは汚れを知らん純粋無垢で可憐な乙女が身に纏うものって認識。
白やピンク、更にフリフリふわふわ、其れを不細工やオバサンが身に纏ってたら.........
まぁ、ファッションは自由。
他人にどぉ思われようが信念を貫けるファッションは素晴らしい。
流行り物だけを追いかけるアイデンティティーの欠片も無い虚しい人より優れてるだろうし。
でも...やっぱオッチャンに一言。
『色々して貰っといて悪いんやけど...この色合いやデザインは喧嘩売ってるよな?』
『あほ!似合う思たんじゃ!黒やヒョウ柄だけじゃ勿体ない!まだまだ若いし細いのに!!色々着こなせるんも今だけやぞ!年取ったり太ったりしたら無理なんやぞ!!今のうちに楽しめや!』
あれ?
そんなに本気?
なら尚更怖い。
コレ似合うとか、どんだけフィルターかかっとんよ。
自分が白やピンク着るのは許せん。
似合わん!!!
似合う筈が無い。
汚いドブの中を生きてきた零那には。
兄ちゃんが一言。
『組長、女だらけの下着屋で冷たい視線浴びながらオマエの事考えながら選んでた。着んかったら俺は許さん!』
ビックリ。
女の知り合いに頼んだとか通販とかじゃ無いん?
直接?
オッチャンが?
それはカナリ申し訳無い。
でも...
パジャマはピンクのキティちゃん。
ジャージも白地にピンクの柄。
ワンピースはピンクのヒョウ柄。
ベビードールは白&ピンクでフリフリ。
オッチャンが一言。
『とりあえず風呂入ってきたらエーよ。出たら一旦全部着て貰うから。ファッションショー♪♪♪』
なんかノリノリやし。
白とピンクのオンパレード。
一種の拷問。
怖い...
とりあえずシャワー借りた。
下着とベビードール...
意を決して鏡を見た。
吐きそぉ...
きしょい。
ありえん。
早く全部着て終わらせよ。
リビング行ったら兄ちゃんが急にむせた。
『ちょっ!おまっ!服着ぃや!』
『だって全部着なあかんねやったらベビードールからやろ?』
『今組長出てるからソレはあかんわ!てか俺以外に他の輩居ったらどーすんぞ!』
『汚い、貧乳、女らしく無い。そんな奴に勃たんやろ。あ、穴さえありゃええ言う奴は居るもんなぁ~、でも今は兄ちゃんだけやし安心やん♪』
軽く拳骨された。
『あほ!汚いとか言うな!違うから!!汚く無いし!!』
オッチャン帰宅。
『ほらみぃやぁ♪俺の目に狂いはないやろが!可愛いやんけ♪』
背中バシバシされた。
『いやいや、吐きそうなくらいキショいとしか思えんし。』
聞いてない。
『次コレ!』
ピンクのヒョウ柄ワンピ。
服だけなら可愛い。
似合わん。
『違和感ない!イケる♪』
兄ちゃんも頷く。
キティちゃんパジャマ。
『おーっ!中学生!エーやんけー♪』
『中学生言うな!!ガキに見られるん好かんの知っとるやん!』
『可愛いって意味やんけ♪次ジャージ♪』
『おっ!こっちは高校生♪』
『ほんまムカつく!』
兄ちゃんゲラゲラ笑ってる。
疲れた。
オッチャンは満足そう。
内心ちゃんと感謝はしてる。
でも、遊ばれてるのがチョットなぁ...
『ほら、これ食っとけ。風呂入ってくる。』
ローソンの、おにぎりとサンドイッチ、お茶、水...
殆ど全種類あった。
なんか、いつぞやの光景と...
デジャブ。
組長ってのは変なとこ似るもんなんか?
もしや兄弟...
な、ワケ無いか...
うん、詮索はヤメよ。
ズット飲んでるし、正直おなか空いてる感覚は無いんやけど。
いっぱい在るし。
日持ちせんし。
とりあえず気分悪くなるまで食べた。
オッチャンが、ご機嫌で浴槽で歌ってる。
兄ちゃんも必死で食べてる。
そのまま寝落ちた。
風邪引いたらあかんからタオルケットかけた。
眠気全然無い。
暫くジッとして目瞑ってみたけど無理。
冷蔵庫からドライ出した。
サンドイッチをつまみにした。
『まだ食えるんか!!』
『ビックリした!!兄ちゃん5分位しか寝て無いで!!』
『吐かんのんか?無理すなよ!』
『だってコレすぐ腐るし。棄てるん勿体無いし。』
『まぁそぉやけど、どんだけ食えるんか思てビックリして眠気飛んだわ!』
『いやいやビックリしたんコッチ!』
『ほな俺もチビチビつまむ。悪い、酒ついで~』
『はぁい!』
また色々話しながらサンドイッチつまんで飲んでたら、オッチャン湯上がりサッパリ。
こっち見て暫く固まって一言。
『よぉそんだけ食えたなぁオマエら。オエッ!無理!若いって凄いんやな...』
本気で感心してる。
兄ちゃんが言う。
『いっぱい買うけんっすよ!日持ちせんとか腐らすとか申し訳無いとか、コイツが言うけん必死で食べよったんすよ。』
『なるほど、やっぱおまえらエェやっちゃの~!!そゆとこ好っきゃで♪♪♪』
頭わしゃわしゃされた。
超ごきげん。
酒のせいやろうけど。
可愛い。
デカイ犬みたい。
なでなでしたくなる。
昼過ぎに皆で雑魚寝した。
起きたん夕方。
母さんとユウに何も言ってない。
少し罪悪感。
帰ろうか...
電話にしよか...
でも此処居ったら迷惑よな...
オッチャンが『百面相』って呟いた。
ふと横を見たらオッチャンの目が開いてた。
怖いし。
ページ上へ戻る