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少年少女の戦極時代Ⅱ

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運命の決着編
  第124話 “ビートライダーズ” ③

 ペコはチャッキーと肯き合うと、診察室のデスクからくねて来たロックシードを開錠した。

 ――凌馬が一度、手術用具を取りに行くために診察室を外した時、ペコは有事に役に立つ物がないか、室内を物色したのだ。手癖が悪い自覚はあったが、あの状況で何もせず座っていられなかった。

 ペコは、チャッキーは、アーマードライダーではない。ビートライダーズだ。だからこそ彼らは思いついた、否、思い出した。ロックシードは変身用だけの道具ではない。インベスを召喚するための道具でもあったことを。

 自分たちにも、戦う力があることを。

 クラックが開く。だが、それはいつものものとは異なり、チャックが見えないほどに黒煙を放っていた。


 ずるり。ずるり。ずどん!


 インベスが落ちてきた。
 天井よりも高いであろう巨体。脚は枯れ木の根、背中はハリネズミ、頭部は剣山。肩は大きな貝殻らしき物で覆われ、手だけが細すぎる骨。

 最近、修羅場慣れしてきたチャッキーが、ペコの後ろに隠れるほどに、おぞましいインベスだった。

「なるほど。そういえばこいつでインベスを呼び出したことはなかったっけ。なかなか斬新なデザインだ。あえて名を付けるとしたら、そうだな……ヨモツヘグリに因んで、イザナミインベス、かな」

 こんな時まで呑気な凌馬だが、今はその呑気さこそがペコたちに活路を開く。ここでこの男に変身されたら、脱走どころではない。

「舞は返してもらうんだから!」

 チャッキーが診察台まで行って、舞の上体を起こして抱き締める。ペコはロックシードを握り、イザナミインベスに、彼女たちを肩に乗せるように命令した。イザナミインベスはその通りにした。

「いいのかい? 黄金の果実はまだ舞君の中だ。摘出できるのは私だけ。放っておいたら彼女はバケモノになってしまうよ」
「それでも、あんたみたいな奴に任せるよりマシだ!」
「コドモだからって、そのくらいの判断ができないなんて思わないで!」

 ペコもまたイザナミインベスの背中のトゲを足掛かりに、肩当ての貝殻に乗った。

「ここから逃げろ!」

 イザナミインベスが手近な壁を、剣山の頭部で頭突きした。壁に穴が開いた。

 イザナミインベスは、ペコたちを乗せて壁の穴から外へと進み始めた。篠突く雨の、人のいない街を。





 チャッキーたちはどうにか無事に舞をガレージに連れ帰ることに成功した。

 ペコがヨモツヘグリロックシードを開錠し、施錠すると、イザナミインベスは黒い煙を拭き出すクラックへと入って行って、消えた。

「はぁ~~! しんどかったぁ」

 錠前を施錠してから、ペコはその場に尻餅を突いた。
 チャッキーは微笑ましさと感謝を込めて、ペコの背中を軽く叩いた。

「何だよアイツ、インベスゲームの時のと大違いじゃん。リミッターカットなしで実体化とかそもそも反則だし。あー、いつ暴れ出すかと思ったぁ」
「お疲れ様」
「ん。舞は?」
「まだ寝てる。早く起きてくれたらいいんだけど」
「とにかく中に入らねえと。濡れたのも乾かさないとまずいかもだし」
「今度はあたしが運ぶよ」

 ペコは「あの」イザナミインベスを操って帰ってくれた。ここからはチャッキーの番だ。

 チャッキーはどうにか舞をおぶさった。ペコが代わると申し出たが、これ以上、彼の傷に響くことはさせたくなかった。
 それに、舞は意外と重くなかった。 
 

 
後書き
 この状況で舞が「重くない」というのも不吉だと思いません?
 この後、ガレージに舞を担ぎ込んだペコチャキは、手当て中の戒斗・湊に会って事情説明して、戒斗・湊が凌馬討つべしな流れになって飛び出していくと想定しています。
 そうしないと原作の戒斗オバロ化がなくなってしまいますので。 
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