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ハイスクールD×D~魔王様は神殺しの使徒~

作者:剣の舞姫
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プロローグ

 
前書き
需要あるだろうか 

 
ハイスクールD×D
~魔王様は神殺しの使徒~

プロローグ

 冥界、そこは悪魔や堕天使が住む世界の名称である。
 冥界の、それも悪魔の領地は広大で、主に貴族と呼ばれる上級悪魔や最上級悪魔の家計が領地を切り盛りして、発展しているのだが、その中の一つ……ソロモン72柱の一柱であるシトリー家の領地にて、一人の少女が自宅の庭で遊んでいた。

「~♪」

 少女の名はセラフォルー。このシトリー家の長女、セラフォルー・シトリーと言う。
 年の頃は15歳くらいだろうか、まだまだ長寿の悪魔の中では赤子も同然の幼さだが、彼女は生まれつきその身に宿す膨大な魔力から、将来を期待されている才女なのだ。

「ふんふふ~ん♪ これで鳥の氷像の出来上がり~」

 セラフォルーが現在行っているのは、得意としている氷の魔法の練習兼遊びだった。
 氷の魔法を使って好きな形の氷を作り出すという、初歩的なものだが、セラフォルーが作った鳥の氷像は中々に造詣が細かく、初歩の魔法ではあるが難易度の高い事をやっている。
 幼少の頃からセラフォルーには氷属性の魔法に適正があり、10歳になる頃には同年代の幼少悪魔達と比べても氷魔法に限っては、ずば抜けていた。
 だからこそ、15歳と成長した今の彼女であれば初歩の魔法などお手の物であり、それを極めていると言っても過言ではないので、細かな細工は何ら苦ではないのだ。

「う~ん……飽きちゃった。なんか面白いこと無いかなぁ~」

 彼女から見ればお手軽過ぎる遊びに飽きてしまったようで、まだまだ好奇心の塊である10代の少女の関心は他に向いてしまったらしい。
 キョロキョロと屋敷の庭を見渡していると、ふと何かが光ったような気がした。

「? 何だろう……?」

 その場所に行ってみると、屋敷から少し離れた藪の中に空間の裂け目が出来ていた。
 危険かもしれないと、直感したセラフォルーは急ぎ父に知らせようとその場を離れようとしたのだが、彼女の体が突然何かに引き寄せられるように動かなくなる。

「え? な、何? 何なの~!?」

 身体の自由が利かない。それどろか、セラフォルーの身体はどんどん空間の裂け目に引っ張られている。
 身の危険を感じて涙目になり、大声で助けを呼ぼうとしたセラフォルーだったが、まるで喉が引き攣ったように声も出なくなってしまった。
 必死にもがこうとしても身体は動かず、助けを呼ぼうにも声が出ない。そんな状況でついに泣き出してしまったセラフォルーの身体は、無常にも空間の裂け目に飲み込まれてしまい、その後、その空間の裂け目は消えて無くなるのだった。


 二つの回廊の終わり(ディル=リフィーナ)と呼ばれる世界にある2番目に広大な大地を持つ大陸、ラウルバーシュ大陸中原東部にあるアヴァタール地方五大国、そのひとつであるレウィニア神権国。
 そこは水の巫女と呼ばれる神を崇める国であり、アヴァタール五大国随一の神権国家と呼ばれている。
 そんな神権国家であるレウィニアには、神権国家らしからぬ人物が住んでいるのは、今はまだ知る者は少ない。

「……これは」

 そして、その神権国家らしからぬ人物こと、世に悪名として知られる男こそが彼、セリカ・シルフィルだ。
 神殺し、彼を指し示す通り名として数百年前から現在に至るまで世の中の誰もが知っている存在。
 場所によってはなまはげのような扱いもされている彼が神殺しと呼ばれるようになった所以は彼の容姿にある。
 絶世の美女と呼んでも差し支えない美貌を持った女性と見紛うばかりの容姿だが、彼は間違いなく男である。しかし、そもそもその美貌を持つ肉体は彼の生来のものではないのだ。
 彼が神殺しと呼ばれるようになった理由がそれであり、彼はかつて女神アストライアと呼ばれる古神を殺し、その肉体を奪ったことから神殺しと呼ばれるようになった。
 つまり、彼は女神の身体を持つ男という事で、魔術を用いて肉体こそ男性体にしているが、その顔はそのまま女神の顔なので美女、と間違われるのが常なのだ。
 そんな彼がレウィニアの王都プレイアにある自宅……というか屋敷の庭にあるテラスに来た時、庭の片隅に転がっている“あるもの”を見つけた。

「……女?」

 そう、セリカが見つけたのは庭の片隅に倒れている少女の姿だった。
 珍しい黒髪をツインテールにした美少女とも言うべきその少女は、セリカの記憶を辿っても見覚えの無い人物であり、そもそもこんな近隣住民からは幽霊屋敷とまで言われているセリカの屋敷に、歴戦の戦士であるセリカに気づかれる事も無く侵入している事自体が異常だ。

「……エクリアを呼ぶか」

 結局、セリカ自身があれこれ考えても仕方が無いので、気絶している少女を抱かかえると、屋敷の中に入り、掃除をしているメイド……神殺しセリカ・シルフィルの使徒でもあるエクリア・フェミリンスの所まで運んだ。

「セリカ様、そちらの少女は?」
「庭の片隅に転がっていた。気絶しているようだから、空いてる部屋に寝かせたい」
「危険は、ございませんか?」
「俺とお前が居る時点で何とでもなる」
「かしこまりました……それでは2階の空き部屋を用意致しますので、申し訳ございませんが、セリカ様、そちらの少女をそのまま運んで頂いてもよろしいでしょうか?」
「わかった」

 エクリアが2階に上がるのに続くようにセリカも少女を抱えたまま2階へ上がり、エクリアが手早く用意した空き部屋のベッドに少女を寝かせると、用心の為に自室へ戻ってベッドサイドに置いてあった短剣を持って少女を寝かせた部屋に戻る。

『何事だの?』
「庭で侵入者が気絶していた」
『侵入者? おぬしやエクリア嬢ちゃんにも気づかれずに屋敷に侵入したというのか?』
「見た目は14~5くらいの少女だが、魔力の質から人間ではない」
『ふむ……なるほどの。確かにこやつは人間ではないようだの』

 セリカが持ってきた短剣は、元々は短剣ではなく長剣だった。しかも、魔剣と呼ばれる代物で、この剣の中にはセリカの盟友にして戦友であり、長き時を共に過ごしてきた友人でもある魔神ハイシェラと呼ばれる女性が封印されている。
 現在は戦う事も無いので短剣に姿を変えているが、いざ戦いとなれば元の長剣に戻り、セリカによって絶大な力を振るうセリカの愛剣とも言うべきものだ。

「魔族だな」
『それも魔神級の存在だの……膨大な魔力、おぬしの糧にするのもアリではないか?』
「侵入目的を聞いてからだ。返答次第ではそうする」

 結局のところ、少女は夕食時になっても目を覚ますことは無く、この日はセリカとエクリアが交代で警戒しつつ一日を終える事となった。


 件の少女が目を覚ましたのは少女を発見した翌日の昼頃の事だった。
 目を覚ました時、丁度見張りをセリカからエクリアに交代する所だったので、二人が揃って目を覚ました少女に気がつき、ベッドサイドに並んで立って事情聴取という形になったのだ。

「まず、お名前をお聞かせ願いますか?」
「せ、セラフォルー・シトリーです……えっと、ここは何処ですか?」
『シトリー? ソロモン72柱の魔神シトリーのことかの?』

 シトリーという名にハイシェラが反応した。

「ここはレウィニア神権国王都プレイアにあるセリカ・シルフィル様のお屋敷です。貴女は屋敷の庭に倒れていたのをセリカ様に見つかり、ここに運ばれたのです」
「レウィニア? それってどこの国なの? 冥界にも人間界や天界にもそんな国の名前は存在しないよ?」
「冥界……?」
『どういう事だの? レウィニアはアヴァタール五大国の一つとしてそれなりに有名な国の筈だの。知らぬわけがない』
「本当に、レウィニア神権国を知らないのですか?」
「うん」

 ならばセラフォルーは何処から来たのか、という問いには冥界にあるシトリー領にある屋敷の庭に居た筈が、気がつけばこのベッドで寝ていたという答えが返ってきた。

「冥界は、死者の世界だ。冥き途の先にある世界……生者では行く事の出来ない世界のはず」
「えっと、冥界は私たち悪魔の住む世界で、死者の世界は冥府や天界の奥にある天国と呼ばれる場所なんじゃ……」

 どうにも意見が食い違う。
 そもそも彼女は魔神シトリーなのかという疑問もあった。今までであった魔神が名前と家名を分けている者はおらず、なのに彼女はシトリーという魔神としての名をまるで家名のように扱っているのが不思議なのだ。

「この世界の名を言ってみろ」
「?」
「……二つの回廊の終わり(ディル=リフィーナ)、それがこの世界の名だ」
「でぃる……え、ええ!?」
『この嬢ちゃん、まさかとは思うが』
「この世界の住人じゃ、ないようだな」

 どうやら話が長引きそうだと、元々口数の少ないセリカは溜息を零し、傍らに立つエクリアは不器用な主に代わり説明する準備をするのであった。 
 

 
後書き
セラフォルーがヒロインの作品が少ないと思うこの頃です。 
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