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ハイスクールD×D 『存在の消失~ Memory life ~』

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二話『山修行と小さな夢』

【刀矢side】

空に陽が上り、周囲には自然豊かな木々が生い茂り、さらには小鳥が鳴いていた。

そんな中、俺達ーーーオカルト研究部の部員は(正しくは木場、小猫、イッセー、俺は)大量の荷物を背負いながら、登山をしていた。

「ひーひー…………」

俺の隣を歩いているイッセーは、すでにバテかけていた。

(たぶん、この中のメンバーではイッセーが一番軽い方だと思うんだけど…………)

俺はそんなことを考えながらも、イッセーに近づいていく。

「大丈夫か?イッセー」

「ぜぇー。ぜんぜん大丈夫じゃねぇよ!っていうか、何で刀矢は平気なんだよ!?小猫ちゃんの荷物より重いだろ、それ!」

イッセーが今にも倒れそうな勢いで、俺の背負っている荷物を指差してそう言ってくる。

「これくらいなら、俺の師匠の修行に比べたらまだましな方だ」

「どんな師匠だよ、その人は!?」

「最近は会ってないからな。まあ、酒飲んで遊んでるんだろうけど」

「…………お先に」

俺とイッセーが話していると、後ろから俺とあまり変わらない量の荷物を持った小猫ちゃんが通りすぎていく。

「部長。山菜を摘んできました。晩御飯のおかずにでもしましょう」

後ろから木場がそう言ってくるのを聞き、イッセーと離れて、木場の方へ歩いていく。

「山菜なら、天ぷらかおひたしもいいところだな……」

「そういえば、刀矢君は料理が趣味だったね」

「ん?まあ、まともに作れるのが母さんと俺だけだったからな」

「一度、刀矢君の手料理を食べてみたいよ」

木場にそのようなことを言われ、俺は少し考えたうえで結論を出す。

「木場。ちょっと、先にいくな」

俺はそう言って、軽い足取りで俺達よりも随分前の方にいたリアスさんのところへ向かう。

「リアスさん」

「どうしたの、刀矢?」

俺に名前を呼ばれ、振り向いくリアスさん。

「いえ、今日の夕食は俺に作らせてくれないかと思いまして」

「ええ、別にいいわよ」

「ありがとうございます」

「ねぇ、刀矢」

お礼を言い、もう一度木場のところに戻ろうとする俺をリアスさんが呼び止める。

「なんですか?」

「その荷物、私の指示した量よりも多いのによく歩けるわね?」

「まあ、これくらいは慣れてますから」

「うふふ、刀矢君は日頃から鍛えておられるんですか?」

「一応は鍛えてますよ。メニューは、師匠から教わったものとか自己流の物ですけど 」

(多分、師匠も俺の事を覚えていないだろう…………)

そう思っている俺は知らない間に、リアスさんが所有している別荘についていた。

「それじゃあ私達は着替えに行ってくるけど、祐斗と刀矢はどうするの?」

「僕は、イッセー君が到着するのを待ちます」

「俺はこの格好でやるんで、木場と一緒にイッセーを待ちますよ」

俺の今の服装は黒のTシャツにハーフパンツという、動きやすいものだ。

「そう。それじゃあ、全員が着替え終わってから十分後に修行を始めるから、イッセーにも言っておいてちょうだいね?」

「「はい」」

そう返事をした俺達は、別荘前に置いてあったベンチに座ってイッセーを待っていた。

「ぜぇ~……ぜぇ~……。や、やっとついた~」

ドタッ

俺達が待つこと五分。

イッセーがこの別荘に到着し、そのまま倒れ込んだ。

「ほら、イッセー。到着したなら、さっさと着替えにいってこい。リアスさん達はもう着替えにいったぞ」

俺の最後の言葉にイッセーが食い付き、元気が戻る。

「マジか!?」

「もっとも、着替え終わってるだろうがな」

「くそ!なんだよ~!」

イッセーが転げ回ってるうちに、木場が着替えを持って立ち上がる。

「それじゃあ、僕も着替えに行ってくるね。…………イッセー君、覗かないでね?」

「……ふざけんな!木場!?」

そんな茶番もまじえ、イッセーも着替えに行ったあとリアスさん達が、別荘から出てきて木場もイッセーをなだめながら出てきた。

「待たせたわね。刀矢」

「いいえ。それで、修行はいいとして具体的に何をするんですか?」

「ええ、その事だけどまずはイッセーと刀矢の実力を確かめたいから、刀矢から祐斗と戦ってみてくれる?」

「いいですよ」

俺はリアスさんの頼み事を承諾し、リアスさんが指定した周りが少し開けた場所に移動した。

俺は木場に作ってもらった木刀を軽く振って、感覚を確かめる。

「初めは軽くいくよ?刀矢君」

「ああ、わかった」

そう言うと、目の前から一瞬にして消える木場。

(全然、軽めじゃないだろ。これは!)

俺は一度、木刀を下段構えにしてから辺りを全神経を用いて見渡す。

「ここだ!」

ギシッ!

俺は真横から振り下ろされた木刀を受け止める。

木刀を受け止めたすぐあとに、俺は木場の木刀を払いのけて木場に向かって横一線に木刀を振る。

シュッ

その攻撃は簡単に避けられ、木場は体勢を整えてこちらを見てきた。

俺はそこにできたほんの僅かな隙をついて、木場との距離を一気に詰めながら木刀を振るう。

ギシッ!

木場はそれを受け止め、無理やりに鍔迫り合いにもちこんでくる。

ギギギギッ!

互いの木刀が交互に摩れて、周りに木が擦れる音が響く。

俺は木場が力をいれると同時に、木刀を木場の持つ木刀にスライドさせて、そのまま木場の首筋に木刀の切っ先を突きつけた。

「……終わりでいいんだよな?」

俺は突きつけていた木刀を手放し、木場にそう言った。

「うん。僕の負けだよ」

勝負が終わり、リアスさん達を見ると、皆が唖然としていた。

「すごいわね。途中から祐斗は、悪魔の力を使っていたのに…………」

「それほど刀矢君が強いのですね」

「すげーな!刀矢」

「……刀矢先輩は本当に人間ですか?」

「全然みえませんでした~」

上から、リアスさん、朱乃さん、イッセー、小猫ちゃん、アーシアさんが、そう言ってくる。

「俺は本当に人間だよ。小猫ちゃん」

「さて、次はイッセーね。刀矢も勝てたんだから、期待してるわね?」

そしてイッセーと木場が、勝負をしたんだが、結果だけ言うとイッセーが三分ぐらいで負けた。

「今からイッセーとアーシアには、朱乃と魔力の修行をしてもらうわ」

「リアスさん、俺もそれに付き合ってもいいですか?」

「別にいいけど、刀矢は魔力は使えないわよ?」

「それでいいんですよ」

俺がそう言うと、リアスさんは疑問に思いつつも了承してくれた。

そして、俺達は朱乃さんを先頭に別荘の中のキッチンに来ていた。

「まずはこのようにして、手のひらに魔力の塊を出してみてください」

朱乃さんがそう言ってからしばらくすると、アーシアさんはソフトボールサイズの魔力の塊を手のひらに出していた。

それに比べてイッセーは、ピンポン玉ぐらいのサイズだった。

そして俺は頭のなかで焼き鳥が使っていた、炎の塊をイメージしてそれを具現化させる。

「朱乃さん。魔力の感じってこんなものでいいんですか?」

俺は手のひらに炎の塊を出しながら、朱乃さんにそう聞く。

「え!?え、ええ。それであっていますけど、刀矢君はどうやってその炎を?」

「これはあの焼き鳥の炎ですよ。それを俺の神器でコピーして、具現化させただけです」

それを聞いた朱乃さんは、納得したように俺の手のひらの炎を見る。

「刀矢君がこの修行に来たいと言ったのは、これを試すためですか?」

「それもありますけど、一つだけ朱乃さんに頼みたいことがありましたので」

「頼みたいことですか?」

「はい」

俺はそう言って、朱乃さんの耳元でこう言う。

(今、俺がコピーした炎に別の属性の魔力を融合させるっていうことは、可能ですか?)

(はい。それは可能ですが、それを習得するには時間がかかりますわよ?)

(いえ、それでもいいんです。……それでお願いなんですけど、朱乃さんは雷の魔力が得意だと聞きました。できればそれを見せてくれませんか?)

(…………わかりました)

「イッセー君とアーシアさんは、そのまま修行の続きをしておいてください。私達もすぐに戻りますから」

朱乃さんはそう言うと、俺を連れて裏庭の方へと向かった。

その後、俺は朱乃さんに雷の魔力と朱乃さんがついでにと、防御魔法まで見せてくれた。

俺はそれを見ると、朱乃さんと一緒にキッチンにもどったのだが、そこにはイッセーがいなくてアーシアさんだけがいた。

「イッセーはどうしたんだ?アーシアさん」

「部長さんが小猫さんのところにつれていかれました」

「そうか。じゃあ、朱乃さんとアーシアさんはそのまま修行の続きをしておいてください。俺はそろそろ夕食の準備をしますから」

俺は朱乃さんとアーシアさんにそう言うと、木場の採ってきていた山菜を冷蔵庫から取り出す。

「それでは、私達はお言葉に甘えさせてもらいますね」

「何か手伝える事があったらいってくださいね?刀矢さん」

「ありがとうございます。朱乃さん、アーシアさん」

俺はそう言って、夕食の調理を開始した。







作ったものは、山菜の天ぷら、山菜のお浸し、和風ロミロミサーモン、里芋と葱のグラタン、ミルクシャーベットの苺添え、そしてご飯だ。

(念のためにある程度の食材を持ってきておいて、良かったな)

俺はそう思いながら、余った苺を牛乳と砂糖と一緒にミキサーで混ぜてシェイクを作る。

そして完成したシェイクをコップ二つに注ぐと、それを朱乃さんとアーシアさんのところへ持っていく。

「よかったらこれを、飲んでみてください」

俺がそう言うと、二人はなにも言わずにシェイクを飲んだ。

「あらあら、美味しいですわ」

「とても美味しいです」

どうやら、朱乃さんとアーシアさんは好評のようだった。

「さて、そろそろリアスさん達も戻ってくる頃ですし、料理を運ぶのを手伝ってもらっていいですか?」

「もちろん、いいですよ」

「はい。私も手伝います」

そう言って二人は、俺の作った料理を運んでいってくれる。







料理を運んでから数分後。

リアスさん達は(特にイッセー)は疲れた表情で帰ってきた。

「お疲れ様です。夕食の準備はできているんで、座っていってください」

皆が席についていくなか、俺はなぜか朱乃さんとリアスさんの間に座るように言われた。

「さあ、食べましょう」

「「「いただきます」」」

リアスさんに言われ、全員でそう言って料理を食べていく。

「うまい!これ、うまいぞ刀矢!」

「ええ、本当に美味しいわね」

「美味しいですけど、女として負けた気が……」

「私もこんな風に作れたら……」

「うん、美味しいよ。刀矢君」

「…………美味しいです。それと、おかわりください」

上からイッセー、リアスさん、朱乃さん、アーシアさん、木場、小猫ちゃんがそう言って、俺はそれを小猫ちゃんから渡された食器にご飯をよそいながら、聞いていた。

夕食での会話は各自の修行の状況を報告とのことだったが、メインはイッセーの強化ということがわかった。

「さて、修行の話はここまでにして、お風呂に入りましょうか」

「お、お風呂!?」

リアスさんの言葉に一番早く反応したのは、イッセーだった。

「あら?イッセーは私達と一緒に入りたいの?」

「い、いいんですか!?」

興奮ぎみに問いかけるイッセー。

「私はどちらでもいいわ」

「私は刀矢君が入るのならかまいませんわ」

「わ、私は……イッセーさんとなら…………」

あとは小猫ちゃんが許可してくれれば、一緒に入ることのできるイッセー。

「小猫はどう?」

「イッセー先輩は嫌です。…………刀矢先輩なら別にいいですけど」

小猫ちゃんの言葉を聞いた瞬間に、崩れ落ちたイッセー。

「そういうわけだけど、刀矢はどう?」

「俺はやることがあるので、それが終わってから入らせてもらいます」

「そう。じゃあ、女子組はもういきましょう」

その話を聞き、イッセーはグフフッとなぜか笑っていたが、俺は木場と苦笑いになっていた。

「僕達はのぞかないよ?」

「それと、覗こうとすれば後で小猫ちゃんに半殺しにされるんじゃねぇのか?」

「なっ!?」

俺と木場の言葉を聞き、再びその場に崩れ落ちたイッセーだった。

俺は木場、イッセーと別れて、別荘から少し離れた森に来ていた。

(朱乃さんの話ではできるけど、難しいって言ってたな。でも、俺にできることはこれぐらいだからな)

俺はそう考えて昼間のイメージで、右手に炎の塊を出してみる。

そして左手に朱乃さんが見せてくれた、雷の魔力の塊を出す。

「あとは、これを同じ質量で融合させていけば…………」

俺は両手の魔力を少しずつ近づけていく。

バチバチッ!

途中まで安定していた魔力が急に乱れて、その場で小さな爆発を起こした。

「さすがに、そんな早くにはできないか」

俺はそんなことを言いながら体力の続く限り、魔力同士を融合させ続けた。

「はぁ……はぁ……。今日はこれで最後にするか」

俺はそう言って、魔力のコピーを止めて別荘の方へと戻っていった。

「刀矢!?こんなに遅くまで、何をしていたの?」

別荘の前に到着すると、リアスさんが分厚い本を持って俺にそう言ってきた。

「俺はちょっと風に当たっていただけですよ」

俺は咄嗟にそんなことを言ってしまったが、今のボロボロな姿を見ればすぐに嘘だとわかるだろう。

「…………そう」

「それより、リアスさんこそ何をしてたんですか?」

「私はライザー戦の作戦を考えていたのよ」

「あの焼き鳥って、やっぱりフェニックスだから無敵ってことですか?」

俺は一応気になっていたことを聞いてみた。

「いいえ、勝つ方法は二つだけあるわ。一つは神クラスの攻撃で一撃で倒すこと。もう一つは、精神が崩れるまで倒し続けることよ」

(その二つなら、最後の方がやりようはあるな)

「ねぇ、刀矢?あなたは私のことをなぜ、リアスさんって言うの?」

俺がそう考えていると、リアスさんがそんなことを聞いてきた。

「……ん~。俺は嫌いなんですよね。そういう何かの役職で呼ぶのは、その人の存在が消えるみたいで…………」

「そう……なの」

俺の言葉を聞き、リアスさんが少しだけ表情を曇らせる。

「俺も聞いていいですか?」

「ええ、いいわよ」

「リアスさんはこの婚約になぜ、反対なんですか?」

「私は『グレモリー』なのよ」

「はい。知ってますよ」

俺はいきなり自分の名前を言ったリアスさんに、対してそう答える。

「いえ、改めて名を言ったんじゃないの。私はあくまでもグレモリー家の人間で、どこまでいってもその名が付き纏うってこと」

「それが嫌なんですか?」

「誇りに感じているわ。けれど、私個人を殺しているものでもある。誰しも私のことをグレモリーのリアスとしてみるわ。リアス個人として誰も認識してくれないの」

遠い目をしているリアスさん。

だが、その目は少し前の俺とほとんど同じ目だった。

(リアスさんも俺のように苦しみ、そして絶望しかけている。俺にサーゼクスさんがくれた希望のように、俺もリアスさんの希望にならないと!!)

「私はグレモリーを抜きとして、私を、リアスを愛してくれる人と一緒になりたいの。それが私の小さな夢。…………残念だけど、ライザーは私のことをグレモリーのリアスとして見ているわ。そして、グレモリーのリアスとして愛してくれている。それが嫌なの。それでもグレモリーとしの誇りは大切なものよ。矛盾した想いだけど、それでも私はこの小さな夢を持っていたいわ」

「だったら、その夢を諦めないで下さい!俺はリアスさんの事は好きです。だから、リアスさんは夢を諦めずにいてください。絶対に焼き鳥を倒して、リアスさんの夢を守ります。リアスさんの夢はリアスさん自信の大切な心のようなものですから、俺が…………いや皆が守って見せますよ!」

俺は気づけば夢中でそんなことを言っていた。

「…………ありがとう……ありがとう、刀矢」

そう言ったリアスさんは涙を流していた。














【リアスside】

私は部員の皆が寝ている間も、ライザー戦のためにテラスで作戦を考えていた。

その途中にボロボロの刀矢がこちらに来て立ち止まっていた。

私はちょうど誰かと話したいと思っていたから、刀矢と話してみた。

そこからわかった事は刀矢の心の壁と、その優しさ。

だから、私は自分の想いと夢を話した。

刀矢はなにも言わずに話を聞いてくれて、さらには私を元気付けてくれた。

(私の夢は私自身の心…………なぜ、刀矢の言葉がこんなにも心に響くのかしら?それに、刀矢が私のことを好きっていってくれた辺りから、妙にドキドキするわ)

私はそんなことを思っていたけど、本当は自分の気持ちに気づいていたのかもしれない。

私は…………刀矢が好きだって気持ちに………。













【刀矢side】

リアスさんと別れてから、俺は風呂に入って自室に戻ってすぐに寝た。

結構長い間力を使っていたせいか、完全に力が抜けていた。

(また、誰かの記憶から俺がきえたんだろうな…………)

俺はそう思いながら寝ていたのだった。

そしてこの十日間俺達は個人差はあるが、全員がきつい修行をおこなって、それを乗り越えた。

明日はいよいよあの焼き鳥との勝負。

全員、今日は疲れをとってから明日の勝負に望むみたいだ。

「明日のレーティングゲーム。皆で協力して勝ちましょう!」

リアスさんのその一声で今日は解散ということになった。

 
 

 
後書き
次回、三話『レーティングゲーム』 
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