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ロックマンX~朱の戦士~

作者:setuna
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第八十六話 Father<父>

 
前書き
シェルダンを気絶させ、ハンターベースに転送させたゼロとルナ。
二人はナイトメアを停止させるためにメインコントロールルームに向かう。 

 
ゼロとルナは研究所のメインコントロールルームを目指していた。
この研究所を稼動させる核となる部屋である。
恐らくゲイトはそこにいるはずだ。
ナイトメアウィルスの製造も恐らくはそこで行われているはずだ。
プレスマシンの凄まじい圧迫を何とか退けながら進んでいく。
その時…ゼロの通信機が謎のメッセージを受信した。

アイゾック『くくっ…ゼロ、とうとう此処まで来たようじゃな』

ゼロ「アイゾック!?」

ルナ「え!?」

通常、メッセージはハンターベースからしか受信しない。
他に受信出来るのはルナのように一時的に受信を許可しているメッセージだけだ。
送信側は相手の受信コードを入力しない限り繋がらない。
敵が自分に直接語りかけるなど有り得なかった。

ゼロ「何故…」

ルナ「何でてめえがゼロの受信コード知ってんだよ!?」

アイゾック『ふん、騒がしい小娘が。ゼロ、お前のことはこのわしが1番よく知っている。こうして話すのも朝飯前じゃ。お前達を特別室に招待しようと思ってのぉ…。ナイトメアウィルスを製造している…メインコントロールルームにな』

ゼロ、ルナ「「なっ!?」」

アイゾックが告げたのと同時に研究所の壁が1つ消えた。
光を操作して、何もない空間を壁に見せていたのだろう。
壁だった場所の向こうに薄暗い道が見える。

アイゾック『そこから真っすぐ行けばコントロールルームに着く。罠ではないぞ。異常なデータ反応は感じぬじゃろう?尤も、お前達は例え罠でも躊躇なく進んでいくじゃろうな』

ゼロ「(こいつ…見透かしてやがる……)」

ルナ「(くそ…胸糞悪いぜ…)」

2人は不快に思いながらも先に進んだ。
アイゾックの言う通り、罠は全く無かった。


































走り抜けると急に眩しい光が降り注ぐ、機械だらけの部屋に着いた。
2人が部屋に入るとアイゾックがにやりと笑う。

アイゾック「ようこそ、メインコントロールルームへ」

ゼロとルナは警戒を解かずにアイゾックを睨み据える。
思っていた以上に簡単に目的地に着く。
此処までが罠のような気がした。

ゼロ「何故俺達を此処に…俺達が何をしたいのか、分かっているよな?」

アイゾック「勿論。ナイトメアウィルスの製造システムを止めることじゃろう?ついでにゲイトも倒すつもりじゃ」

だったら尚更、合点がいかない。

ゼロ「お前はゲイトの仲間ではないのか?何故奴を不利な状況に追い込む?」

ルナ「爺、てめえは一体何がしてえんだ!?」

アイゾック「なあに…もう用済みじゃからな、ゲイトもハイマックスも。ゲイトに協力する引き換えにお前のDNAを手に入れ、お前に異変がないかどうか調べた。お前に何かあったら一大事じゃからのぉ。ハイマックスはお前の力が衰えていないかをテストするため、ゲイトと共に造り上げた。ちょいと強化し過ぎたかのぉ。じゃがお前はハイマックスを打ち破った。流石としか言いようがない。お前の亡霊…ゼロナイトメアはゲイトの実験…レプリロイド洗脳をテストするモルモットを集める大義名分のために生み出した“玩具”じゃ。ついでにゼロナイトメアを使ってお前をおびき寄せられたら…等と考えた。結果はこの通りじゃ」

アイゾックは思うがままに事を進められた満足感に酔いしれていた。

ルナ「糞野郎…!!」

ゼロ「そうやって他人を利用し、レプリロイド達を傷つけてきたのか!!姑息な真似を!!」

2人のセイバーとバレットを握る手に力が入る。

アイゾック「ククク…わしが許せないかゼロ?だったらそのセイバーで斬り掛かるがいい。尤も…不可能じゃがなあ…」

ゼロ「不可能かどうか…こいつを喰らってからほざけ!!ダブルチャージショット!!」

ルナ「くたばりやがれ!!リフレクトレーザー!!」

接近戦は駄目だと判断したゼロはダブルチャージショットを放ち、ルナはリフレクトレーザーをアイゾックに向けて放つ。
アイゾックはそれを嘲笑うと掌を前に翳し、ダブルチャージショットとリフレクトレーザーを消し飛ばす。

ゼロ「なっ!?」

ルナ「効かない…!?」

アイゾック「さて…わしの実験は成功した。必要なデータは採取出来たことだし、ここにもう用はない。」

自身の最後の作品にゼロの戦闘データと自身が理想とするレプリロイドに近い存在であるルナのデータが僅かばかり取れたのは幸いだろう。
コンピュータにはデータを送った。
後はここを去るのみだ。

アイゾック「また会おうゼロ!!」

ゼロ「待て!!」

バスターを連射するが、アイゾックには届かず消滅してしまう。
アイゾックは空間を歪め、消滅した。

ゼロ「くそっ…」

ルナ「腹の立つ爺だな。とにかくナイトメア製造システムを停止させる。」

ルナはナイトメアソウルから入手したコードを入力する。
するとナイトメアウィルス製造システムはいとも簡単に停止した。

ゼロ「よし…」

残るはゲイトのみ。
闘志を燃やし、2人はゲイトの元に向かう。
ふざけた夢も幻も、ようやく終わりを迎えようとしていた。





































アイゾックは異空間にて笑みを浮かべていた。
ゼロの戦闘データとルナの戦闘データは最後の作品の製造に大きな発展を促すだろう。
ゼロと自身の最後の作品が奴を倒す未来。
自身の最後の作品が奴と役目を放棄したゼロのDNAデータを入手し、最強のレプリロイドとなる未来。
どちらも楽しみでならなかった。

アイゾック「爽快じゃ!!爽快じゃぞ!!その時はわしの長年の溜飲が下がる思いじゃ!!ファーハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!」

「悪いけどそうはさせないんだよね」

アイゾックの身体が光の帯のような物に拘束される。

アイゾック「な…何!?」

アイゾックが背後を見遣ると神々しいオーラを纏う女性と…。

アイゾック「き、貴様あああああ!!ライトかあ!!」

ライト「久しぶりじゃのうワイリー…」

怒りに表情を歪ませるアイゾックにライト博士は悲しげに表情を歪ませる。

アイゾック「よくもぬけぬけとわしの前に顔を出せたものじゃなライト!!」

ライト「わしはお前を止めに来たのじゃワイリー。もう止めるんじゃ…エックスやゼロは互いを必要としている親友同士。わしらの問題を息子達に押し付けてどうすると言うのじゃ?」

アイゾック「黙れ!!ゼロはわしが造った全てを無に帰す最強のロボットじゃ!!お前達を倒すためにわしが生涯をかけて造ったんじゃ!!」

ライト「ワイリー、もうわしらは過去の存在じゃ…わしらはただ息子達の幸せを見守るだけでいいはず…」

アイゾック「だっ…黙れ黙れ黙れ!!偽善者め!!そうやって常に自分が正義である…良心その物であると主張し続けるつもりか!!貴様は何時もそうじゃ!!そうやって聖人君子ヅラして常にワシを見下して来おったんじゃ!!!!」

ライト「違う…違うのじゃワイリー…」

アイゾック「違うものか!!そうやっていつも自分の下にいるワシを哀れんでいたのじゃろう!!?」

もはやアイゾックの目には女神の姿は見えていない。
その背後にいるライト博士の姿以外何も…。
そんなアイゾックの姿を哀しげに見やりながらライト博士は女神に静かに告げる。

ライト「女神殿……もう終らせてやって欲しい。わしには…辛過ぎる…邪悪な野望に取りつかれ、狂ってしまった我が友を見続けるのは…」

「…本当にいいんだね?」

ライト「お願いします…ワイリーを…わしの友を眠らせてあげて下さい」

「分かった…アルバート・W・ワイリー。君は己の野望のためにゼロ君や数多くのレプリロイドを傷つけた。その罪は重い…」

女神が掌に光を燈す。

アイゾック「な、何をするつもりじゃ!?」

「君の魂を完全に滅する。この世界は今を精一杯生きる彼らの物。過去の存在である君の玩具じゃない。」

アイゾック「わ、わしはまだ死ねん!!ゼロがエックスを破壊するまでは…」

「残念、ゼロ君のロボット破壊プログラムと君が夢に介入するプログラムはコピーボディを用意する際に取り外した。だからゼロ君は君の言いなりにはならない」

アイゾック「そ、そんな…馬鹿な」

「さようなら、来世で幸せになるんだね」

光がアイゾックを包み込む。
少しずつアイゾックの身体が消えていく。

アイゾック「(わ、わしがこんなところで…だが、奴らはわしの最後の作品に気づいてはおらん…息子よ…奴らを倒せ…わしの生きがい…)」

最後の息子に一抹の望みをかけてアイゾック…かつて世界を震撼させた悪の天才科学者、アルバート・W・ワイリーは完全に消滅した。



































アイゾックが送ったデータを元に、アイゾックの部下達によりレプリロイドの製造が進められていく。

「アイゾック様から送られたデータによって随分とはかどるようになったな」

「ああ、この調子なら、後2~3ヶ月くらいだろう」

「…エックスとゼロを超える可能性を持つレプリロイド…“Accelerator”。」

純白のレプリロイドが目覚めるのはもう間もなくであった。 
 

 
後書き
アイゾック消滅。 
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