ロックマンX~朱の戦士~
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第八十四話 Encounter
前書き
エイリアがとうとうナイトメアソウルの解析に成功する。
エイリアは再びパソコンに向かっていたルナから入手したナイトメアソウルとエックス達が持ち帰ってきたナイトメアソウルを合わせ、ようやく概略が掴めるまで解析出来た。
モニターに映し出されたプログラム言語を読み取りながらエイリアは言う。
エイリア「分かったの…ナイトメアの正体が」
遂にこの時が来たとエックスとルインは思う。
エイリア「ナイトメアは人工的に作り出されたウィルスよ。レプリロイドのDNAデータや思考プログラムなどのメモリーデータを書き換えて狂わせてしまう。場合によってはその強力な力で外見自体を変えてしまうこともあるようね。まだ完全に解析出来た訳じゃないからその辺りは全く分かってないけど。でもここまではイレギュラー化とほぼ変わらないわね」
エックス「ああ…殆ど同じだ」
キーボードを叩く彼女の傍らで、話だけは分かるエックスが相槌を打つ。
エイリアは更に話を続けた。
エイリア「ナイトメアウィルスの本当の恐ろしさはこれからよ。とり憑かれたことによって暴れ出したように見えるナイトメア現象…。実はあるコードを入力すれば自由に操ることが出来るようになるの」
ルイン「…ということはつまりナイトメアの目的は……」
エイリア「そう、ナイトメアの本当の狙いはレプリロイド滅亡ではなく支配することなの」
エックス「…そういえばヒートニックスもそう言っていたな」
ルイン「こんなウィルスを造れるのは…」
エイリア「そう、彼しかいない。ルインも知っているでしょ?昔、私の同僚だった…ゲイト…。」
エックス「(やはりそうか…)」
もしかしたらというエックスの予感は的中した。
エイリア「あの調査員達…8体のレプリロイドは姿形が全く変わってしまったのもいたけど、昔彼が造ったものなの。とても強力なレプリロイドだったので、誰かが利用しているんだって思っていたんだけど…ナイトメアのプログラムのことも考えると彼以外有り得ないわ」
エックス「ゲイトは何故こんなことを?」
エイリアはエックスの問いにしばらく黙考した。
モニターからキーボードに視線を落とし、ややあって口を開く。
エイリア「それは私がゲイトと同じレプリロイド研究チームにいた頃のこと…」
レプリロイド研究用カプセルが並ぶ部屋の中で2人はよく研究の話をした。
お互いに才能があり、レプリロイド開発の未来について論じ合った。
2人は互いの能力を認め、少なくともエイリアはゲイトを羨望の目で見ていた。
エイリア「彼の造ったレプリロイドは全て優秀だったわ。」
実際、ゲイトの造ったレプリロイドの性能は他の研究者が造ったレプリロイドの性能を遥かに凌駕していた。
エイリア「彼以外では解析出来ない程の高度なプログラムが使われて、その働きは想像を超える成果を収めたの。でも、その性能の高さは危険だと考えられ始めた…。そんな中、課題を無視して危険な行動を取るようなレプリロイドも出て来て、彼の評価は下がっていってしまった。それでもゲイトは自分の実力を認めてもらうため、更に高性能なレプリロイドを造り始めたの。勿論、上司の命令を無視してね…」
上司はいつも苦い顔をしていた。
ゲイトのレプリロイドのせいで他のレプリロイドが犠牲になり、責任は上司に行き着く。
損害賠償の書類を見て、上司は酷く不機嫌な表情となった。
エイリア「そしてある日、事故と見せかけて彼の造ったレプリロイドは処分されてしまったの。上司の命令だったわ。その時私も何体か…」
ルイン「ヤンマークやタートロイド、そしてヴォルファングだね?」
エックス「そんなに危険だったのか?ヒートニックスはともかく、ヤンマークやヴォルファングを見る限りあまり危険には見えなかったけど…」
ルインやエックスの問いにエイリアは悲しそうに口を開く。
エイリア「いいえ…そんなことはなかったの。ただ彼の作り出すプログラムが高等過ぎたのよ。解析出来ない部分が多くて使用するのが難しかったの」
ルイン「え?」
エックス「それだけのことで?俺やルインだって未だに解析出来ない部分が多いのに…」
今ここにいないゼロやルナも同じようにブラックボックスの塊だ。
ジャンク屋のルナはいいとして、ハンターとして活動している自分達には何もないというのに何故ゲイトの造ったレプリロイド達は処分されたのだろうか?
エイリアは再び沈黙した。
次の言葉が発せられたのは少し経ってから。
キーボードを叩く音とよく変わるモニターの映像のせいで時間はそれ程長くは感じなかったが…。
エイリア「言いにくいんだけど…」
声を落として、聞かれたくない真実をエックスとルインに告げる。
エイリア「彼は最強のレプリロイドと呼ばれるエックスとゼロ、ルイン。あなた達3人を目指していたの…」
ルイン「ゲイトが私達を?」
エイリア「ええ…前にゲイトがあなたにも言っていたでしょう?簡単に解析出来るようでは偽物だって…」
ルイン「う、うん…でもゲイトはこう言ってたよ?エックスやゼロのような優れたレプリロイドが沢山造られれば、この世界は更に栄えるはず、人間やレプリロイドの犠牲も少なくなり、平和の維持にだって貢献出来るはずだって…」
エイリア「そうね…確かにゲイトも最初はそれを目指していた。彼が作ったプログラムは誰にも解析出来ない程に高度なものになっていった。私なんかより遥かに優秀だったのに…。課題をそつなくこなした私の方が昇進。ゲイトは誰にも認められることはなかった……。それからゲイトは孤立していき、こう言い残して去っていったの。“必ず見返してやる。自分の実力を理解出来ない下等なレプリロイドを全て支配してやる!”って…彼の認める高性能のレプリロイドだけで理想国家を創る。…それが彼の野望なのよ!!」
ルイン「止めるよ。ゲイトは私の友達だから。」
エックス「もうこれ以上、レプリロイドの犠牲を出すわけにはいかない!!そんな時じゃないんだ。人とレプリロイドと地球の未来がかかった、本当に大事な時なんだ。」
度重なる戦乱で地球は荒廃し、人類は生活の場を奪われている。
レプリロイドは減少し、生き残った者が必死になって生活している。
誰かが死ぬのはもう沢山だ。
エイリア「ええ、一刻も早くゲイトの野望を阻止しましょう。彼を止めなければ悪夢は無くならないわ!!」
エイリアは頷き、ナイトメアソウルからゲイトの居場所を割り出す。
すると待っていたかのようにハンターベースの通信が謎のメッセージを受信した。
同時に巨大なモニターにレプリロイドの姿が映し出された。
紫のボディに白衣の青年。
ルイン「…ゲイト!!?」
彼は歪んだ笑みで3人を見つめている。
切れ長の目に知性的な顔立ち。
彼は恐ろしい形相ではなかったが、逆に端正な顔立ちは得体の知れない不気味さを醸し出していた。
ゲイト『流石だね、イレギュラーハンター・エックス。それにルインも…僕の計画を突き止めるとは』
エックス「お前がゲイトか?」
モニターでなければ胸倉を掴んでいたところだ。
エックスは激しい怒りを自覚していた。
当のゲイトは自分達をどう思っているのか…余裕の表情で肯定する。
ゲイト『いかにも。レプリロイドの新たな統率者。レプリロイドだけの理想国家を目指す者。そのために下等なレプリロイドを消しているところだよ』
エックス「お前!!自分が何をしているのか分かってるのか!?」
ルイン「ゲイト!!今の地球はレプリロイドの力がないと駄目なの!!お願いだから止めて!!」
ゲイト『分かっているさ、今ならレプリロイドを支配することもたやすい…僕の理想、レプリロイドによる新たな時代を創る絶好のチャンスなんだ!!もう誰にも何も言わせない。やっと“夢”を実現出来るんだ!!』
エイリア「ゲイト…」
かつての同僚の変貌を見たエイリアは胸を痛める。
ゲイトは邪悪な雰囲気を更に強め、エックスとルインに向けて言う。
ゲイト『エックス。君の実力を特別に認めてあげよう。僕の研究所に招待するよ。ポイントTRUL13…そこが僕の居場所さ。待っているよエックス。それにルインもね』
ハンターベースは緊迫していた。
シグナス「もう全てはゲイトだ!!ゲイトの悪夢を阻止せよ!!」
イレギュラーハンター総監・シグナスがエックスとルインに命じる。
エイリア「ゲイトの研究所発見!!」
エイリアの声と共にゲイトの秘密研究所が示される。
エックス「行くぞ!!」
ルイン「うん!!必ずゲイトを止めて見せる!!」
エックスとルインがゲイトの秘密研究所に向かう。
ルナ「ゼロ、ゲイトの研究所を発見したぜ」
ルナの拠点のモニタールームではゼロの情報を元にルナが秘密研究所の位置を示す。
ルナ「行くかい?」
ゼロ「無論だ。出撃する」
ポイントTRUL13を見据えて宣言するゼロにルナは思い出したように口を開いた。
ルナ「そうそう忘れてた。レーザー研究所のナイトメア現象が無くなって調査員のシールドナー・シェルダンのデータ反応も無くなってる」
ゼロ「そうか…」
シールドナー・シェルダン。
かつてセキュリティーポリスを務めたレプリロイド。
ゼロはシェルダンのことをよく知っている。
何故なら…。
ゼロ「(…昔のことを悔やんでも始まらない…今はゲイトを止めるのが先だ)」
ルナ「よし、いよいよクライマックスだ。今回は俺も行くぜ」
ゼロ「分かった。行くぞ!!」
拠点を出て、ゲイトの秘密研究所に向かうゼロとルナであった。
後書き
ゲイトとの邂逅。
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