八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二話 腹違いの妹!?有り得るから怖い!その九
「あそこで」
「あのお部屋ですね」
「はい、あのお部屋でお茶でも飲みながら」
「そうですね、じゃあそれでお願いします」
「お茶は何が宜しいですか?」
「あっ、別にいいです」
そこまで気を使ってくれなくてもだった、それで僕はお茶はいいとした。けれど畑中さんはこう僕に言った。
「私の好意ということで」
「そうですか」
「何なりと」
「夜ですしね」
今カフェインが多いものを飲むと寝れなくなりそうだった、それでそういったものは避けようと心の中で考えてから。
そのうえでだ、僕は畑中さんに答えた。
「麦茶みたいな軽いものをお願いします」
「わかりました、それでは」
こうお話してだった、そのうえで。
僕は高い本棚が幾つもあってその全ての段が本で占められているその書斎に入った。そうして僕達は書斎のソファーに向かい合って座って。
畑中さんが出してくれた麦茶を飲みながらだった、僕から話を切り出した。
「詩織さんのことですが」
「お父上のことですか」
「本当にうちの親父なんですか?」
このことを心から危惧しながら尋ねた。
「あの人のお父さんは」
「その可能性はあります」
畑中さんはこの時もこう答えた。
「止様が詩織様のお母上と交際しておられたことは事実ですし」
「それもですね」
「はい、義和様がお産まれになった頃にです」
「じゃあ本当にあの人は」
僕の腹違いの妹かとだ、言葉の中にこの言葉も含ませて言った。
「そうかも知れないんですね」
「左様です。ですが」
「ですがとは」
「止様とのご交際は少しの間だけだったのです」
「そうなんですか」
「そしてその直後に別の方と」
交際していたというのだ。
「どうも止様のあまりもの浮気に驚かれ去られたそうです」
「まああの親父ですからね」
このことは僕も納得出来た、それも大いに。
「普通引きますから」
「そしてすぐに失恋して嘆いておられた詩織様のお母上を」
「別の男の人が慰めて」
「そうしてその中で」
詩織さんがこの世に宿ったというのだ。
「そしてこのことはです」
「詩織さんが、ですね」
「はい、止様がお父様かどうかは」
「DNA鑑定をすれば」
「すぐにわかります」
便利な世の中になったと言えるだろう、科学的に親がわかる様になったのだから。だがそれでもだった。
「しかし」
「それでもですね」
「詩織様もこのことは」
「怖いですよね、やっぱり」
「若しもです」
畑中さんはここで言葉の調子を変えてきた、それは詩織さんのことについて話したことではなくなってだった。
僕に向けてだ、こう言って来た。
「義和様のお父様が止様でなければ」
「ううん、あんな親父ですけれど」
それでもだった、僕もそう言われるとだった。
「それでも父親でないとかは」
「お嫌ですね」
「正直ですよ」
ここで僕は本音を言った、自分の偽らざるそれを。
「僕親父は嫌いじゃないんですよ」
「そうですね」
「はい、確かに女好きで浪費家で破天荒で」
最低と言っていい人間だ、確かに。
だがそれでもだった、そんな親父でも。
「あれでいいところもあるんですよ」
「そうした方ですね、止様は」
「暴力は振るわないです」
これはなかった、決して。
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