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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第一話 僕が大家!?しかも何このお屋敷!その七

「それではです」
「はい、それで何時引越しですか?」
「五日後となっていますが」
「五日後ですか、じゃあそれまでの間に引越しも」
「いえ、そのことにあたってもです」
 執事さんはここでまた黒スーツにサングラスの人達を左手で指し示してきてそのうえで僕にこう教えてくれた。
「この方々が」
「ひょっとして引越し作業を」
「そのひょっとしてです、今すぐに」
「五日後でもですか」
「はい、何でしたら」
「ええと、テレビとか冷蔵庫とか洗濯機もありますけれど」
「ご安心下さい、無料で全て運んでくれます」
 その新居にまでというのだ。
「今すぐにでも」
「そうですか、影の実行部隊の人達が」
「如何でしょうか」
「じゃあ僕すぐにですか」
「義和様がお望みなら」
 引越し作業をしてくれるとのことだ、僕はそう聞いてかなり有り難かったが執事さんの言葉はさらに続いた。
「そして申し遅れましたがこの影の実行部隊はです」
「はい、引越し作業をしてくれるんですよね」
「義和様は八条家の方なので」
 それでだというのだ。
「お言葉とあらばどの様な命令も聞いて動いてくれます」
「どの様なって」
「邪魔な人を」
「あっ、そういうことは言わないですから」
 そこから先は聞かないことにした、あえて。
「とにかくですね」
「左様です、そして私もです」
「執事さんも?」
「義和様にこれからお仕えしますので」
「僕お金ないですよ」
「お給料は八条家から出ています」
 つまり家自体でお抱えの執事さんらしい、流石世界屈指の富豪だ。家自体で執事さんをお抱えしているなんてまさにお金持ちの世界だ。
「私の他にもそうした執事の者は大勢います」
「それで貴方はですか」
「義和様お付きの執事となりました」
「ううん、いきなり豪邸に住んで執事付きの生活ですか」
「何かお嫌でしょうか」
「嫌じゃないですけれど」
 何しろこれまで糞親父と二人暮らしだった、正直八条家で除け者一家だと思っていた、それなりにいい暮らしだったと思うけれど執事さんなんかとてもだった。
 僕にとってはだ、それはとてもだった。
「急に変わったんで」
「それでなのですか」
「というか一族の人はですか」
「はい、ご本家からお家と執事が用意されるのですが」
「うちの家そんなのなかったですよ」
「止様はあまりにも問題の多い方だったので」
 どう問題があるのかは言うまでもなかった、僕が一番知っていることだ。
「ですから」
「執事さんとかもですか」
「あの方はご本家の当主様からどうにかならないのかといつも言われていました」
「よく義絶されませんでしたね」
 太宰治の様に。
「あれで」
「それは何とか踏み止まれていました、ご当主様も」
「そうだったんですか」
「かなりご立腹ですが」
「まああんな奴何時義絶されても文句言えないですからね」
 一体どれだけの女性問題を起こしたやら、そうしたゲームの主人公みたいに。
「正直言って」
「ですから執事もお屋敷も」
「用意されなかったんですね」
「はい、ペナルティとして」
 つまりそれでだ、親父は一族の中で冷遇されていたのだ。自業自得で。
「そうなっていました」
「それでその親父がイタリアに行って」
「義和様には何の落ち度もないのでご当主様もです」
 僕にはというのだ、ご本家の当主さんも。 
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