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続:おおかみこどもの雨と雪

作者:とあーる
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エピソード1 再会

 
前書き
私は雪。お母さんとおおかみおとこの間に生まれたおおかみこどもだ。草平とは小学校で出逢い、いろいろなことがあったが今まで彼との仲を保ってきた。そんな彼と小学校以来初めて会うことになった。 

 
草平とは訳あって違う中学校だった。しかし、中学校に上がるときにやっと与えてもらった携帯電話で連絡は未だとれている。
「こんど久々に会わないか。」
彼からメールが来る。
そういえば小学校の卒業式以来彼とはメールで交わっているものの直接会って話したりしたことはなかった。だから私はそれに賛成した。待ち合わせる場所はいくつか候補があったのだが彼が私の実家にどうしても行きたいと言うので山の麓の駅で待ち合わせをして私の家までバスで行くことにした。


―約束の日―

私が待ち合わせをしている駅に着くと彼はもう待っていたようで私をいち早く見つけて手を降ってくる。
私は彼に駆け足で近づく。
「お待たせ~」
「ちょっと雪待たせ過ぎじゃないのか?」
そう言われ私が顔を赤らめると私は自然に彼の顔を見る。
小学生の時にあった幼さはすっかり消え失せ頼もしい顔になっていた。しかし耳にはまだ私があのときつけた傷痕が残っている。
「草ちゃん…ここの傷…大丈夫?」
私は彼にささやくように語りかけた。
「もうすっかり大丈夫だ。」
彼が続ける。
「それにしても雪は全然変わっちゃいないなぁ…」
彼は私の顔をまじまじと見つめた。私の顔は携帯電話に保存してある中学校入学当時の顔にそっくりだった。
しばらくして彼が言う。
「お前、やっぱり獣の匂いがするな」
私はいつもシャンプー、リンスとボディーソープはやっている。けれど生まれつきのこの匂いはなかなかとれないようだ。
そんな話をしながら歩いているうちに私たちはひとつのバス停の前にたどり着いた。
私の家の近くにあるバス停へ行くバスのバス停だった。一時間に一、二本しか通っておらず私の家まではこのバスに35分くらいで着く終点のバス停まで乗りしばらく歩く。私の記憶の限りでは。
15分くらい彼と雑談をしながら待つ。彼の話は相変わらず面白く興味深い。
彼は私のいない中学校生活のことを包み隠さず話してくれた。
その事が嬉しく、私は彼の肩に頭を乗せるようにもたれかかった。彼は特に驚いた様子もなくただ顔を赤らめていた。
しかしやはり彼も中学生、興奮しているのか少し息が荒くなっていた。
やがてバスが来ると私と彼は乗り込む。やはりあの辺りに住む人は少なくなったのか人は全く乗ってこない。
バスが走り出すとバスのエンジン音で互いの声が聞こえずらくなってしまった。そんなときはボディーランゲージを交わす。肩を組んでみたり手を繋いでみたり顔を近づけて見つめ合ってみたりした。途中で乗車する人も少ないようでバスはすいすいと進んでいく。

やがてバスは終点にたどり着く。山道を上ってきて疲れたのかバスはあえぎ声のようなエンジン音を出している。
「ごくろうさま」
私がバスに向かってささやくように言うと彼が不意に話しかけてきた。
「…お前は小学校の時から変わらないよなぁ。」
と。 
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