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小さくとも

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第四章

 ここで港に停泊しているタンカーも爆発した、轟音が再び港を襲った。
「今度はタゴナだ!」
「爆発したぞ!」
「何だ!?立て続けに事故か!?」
「馬鹿、続いて起こるか事故が!」
「敵だ、敵が来たんだ!」
「ドイツ軍のユーボードか!?」
 真っ先に彼等が疑われた。
「港まで来たのか!?」
「奴等ならやるぞ」
「あの連中なら」
「そうだな、ドイツ軍ならな」
「あいつ等は無茶するからな」
「それもやるぞ」
「やりかねないな」
 セーラー服の兵士達も血相を変えていた、彼等もドイツ軍だと思っていた。
 タンカーの横に停泊していた駆逐艦も巻き添えを受けていた、尚且つ。
「クイーン=エリザベスもだぞ!」
「爆発した!」
「何だ!?どうなってるんだ!」
「戦艦が二隻もか!」
 最早アレクサンドリアは混乱の巷に陥った、何がどうなったのかわからず将兵達は右に左におおあらわだった。 
 空には敵機は見えない、しかも。
 海もだ、調べてもだった。
「敵艦はいないぞ」
「水上艦は」
「じゃあ潜水艦か」
「潜水艦が来たのか」
「しかしどの艦にも魚雷は届かないぞ」
 そうした場所にはなかった、爆発したどの艦も。
「魔法か?奴等魔法を使ったのか」
「まさか、そんな」
「そんなことが」
「ドイツ軍はどんな魔法を使ったんだ」
「魔術師の力でも借りたんじゃないのか」
 こんなことを言い出す水兵もいた、何しろイギリスはそうした話題にはこと欠かない国だからだ。マクベスにも出て来る位だ。
「まさかとは思うが」
「いや、この状況だとな」
「有り得るな」
「あいつ等ならな」
「何をするかわからないぞ」
 誰もがドイツ軍だと思っていた、混乱の中で。 
 そうして何とか事態を収めてだ、落ち着いて調査をすると。
 戦死者は八人、それにだった。
 ヴァリアントとクイーン=エリザベスの二隻の戦艦は大破、駆逐艦もだった。タンカーも大きな損害を受けた。
 どの艦も修復は可能だ、しかし二隻の戦艦の大破は大きかった。
 地中海のイタリア軍の制海権は大きく退いた、それで枢軸軍の行動はかなりおおっぴらになった。
「基幹戦力の戦艦が二隻暫く使えないか」
「痛いな、おい」
「ただでさえ地中海でもやられてるのにな」
「ドイツ軍が好き勝手に北アフリカに補給してるよ」
「只でさえ強い奴等が」
「全く、頭が痛いぜ」
「本当にな」
 水兵達もこう言う、アレクサンドリアで難しい顔をしていた。
 しかもだ、彼等はその二隻の戦艦の大破した真相を聞いてだ、さらに困った顔になった。
「やってきたのはイタリアかよ」
「ドイツじゃないのかよ」
「俺達イタリアにやられたのかよ」
「よりによって」
 このことにだ、余計に情けなさを感じたのだった。
「あんな弱い連中に」
「変な兵器ばかりでな」
「しかもすぐに投降してきてな」
「ちょっと脅したら泣いて命乞いをする連中なのに」
「あの連中にやられたのか」
「しかもな」
 そのやられ方もだ、彼等にとっては情けないことだった。
「潜水艦から潜水艇、小さいのを出してか」
「工作員が機雷を艦艇につけてか」
「それで爆発させてか」
「戦艦二隻もやられたのか」
「タンカーもな」
「駆逐艦も」
 駆逐艦は巻き添えだがこちらも暫く使えなくなった。
「こっちが駆逐艦港に入れている間に入ってきて」
「それで仕掛けられたのか」
 出入港こそ艦艇にとって最も難しい、そして危険な行動だ。これは送り迎えをする港側にとっても同じだ。 
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