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女らしくある

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第六章

「急所攻撃とかね」
「それでなんだ」
「ええ、あまりね」
「それでもね」
「いや、それでもね」
 裕次郎はその杏にだ、笑顔で言った。
「杏ちゃんらしくてよかったよ」
「私らしく?」
「杏ちゃんも戦ったよね」
 裕次郎に任せるにだ、そうしたこと自体について言う彼だった。
「そのことがね」
「よかったの」
「俺はそう思うよ」
「私らしくてよかったの」
「ああいう時戦わなかったり自分だけ逃げたりしないよね」
「そういうの嫌いだから」 
 性格的にだ、そういうことはしないのが杏だ。それで裕次郎の今の問いにもこう答えたのである。
「だからね」
「それが杏ちゃんらしいよ」
「そうなのね」
「そう、よかったよ」
「ううん、私らしいの」
「とてもね」
「女の子らしくありたいけれど」
 今もそう思っている、だがだった。 
 杏は裕次郎の今の言葉を聞いてだ、考える顔で述べた。
「その前に私らしくなのね」
「杏ちゃんは杏ちゃんじゃないかな」
「そうなるのね」
 自分らしさ、そのことに気付いた杏だった。そうして。
 今のゴスロリも見た、この格好は気に入っている、それで言うのだった。
「私らしく着ていくことも大事ね」
「杏ちゃんらしい女の子だね」
「何でもかんでも雑誌とかにするんじゃなくて」
 そこに加えてだった。
「さらに女の子らしくね」
「そういうやり方でいくんだ」
「そうしようかな」
 こうしたことを話してだ、そしてだった。
 杏は色々と少し変えてみた、女の子らしいままであるが。
 それでもだった、そこに自分自身の個性も出していった、ただ雑誌のコピーをしているだけにしなくなったのだ。
 それでだ、周りに今度はこう言われた。
「何か個性も出て来たわね」
「杏ちゃん自身が」
「うん、これからはね」
 その周りにもだ、杏は笑顔で話した。
「私らしさも出したいから」
「杏ちゃん本来の姿も」
「それも」
「そうしていくから、自分らしさも探してるけれどね」
 そうしならしていくと言うのだった、そうして。
 杏は自分のことも見ていくことにした、その中で。
 以前の男っぽさもだ、見直して家で母に言った。
「多少は男の子みたいでもいいかしら」
「完全に捨てるのも駄目じゃないの?」
 母は娘にこう返した。
「それも」
「そうなのね」
「ええ、完全に否定するのじゃなくて」
「それでもなのね」
「ある程度でもね」
 減らすなり少なくするなりにしても、というのだ。
「完全に、といよりはね」
「残しておくべきなのね」
「完全に別人になりたいなら別だけれど」
「ううん、そこまではね」
 杏にしてもだ、自分の完全否定といったものは考えていなかった。それで母に対してこう答えたのだった。
「考えていないから」
「それじゃあよ」
「そうした男の子みたいなところも」
「残しておくべきよ」
「完全に女の子らしくなるんじゃなくて」
「それも杏ちゃんだからね」
 それでだというのだ。 
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