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死人使い

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第二章

 二人にだ、こう言った。
「さて、これからその村に案内しよう」
「あれっ、貴方がですか」
「そうしてくれるんですか」
「私が君達の今回の仕事のパートナーだからな」
 それは当然だというのだ、その浅黒い口髭のある顔でだ。身体は太っているが背は二人よりもまだ高い。
「あと私のことも話していなかったな」
「そういえばそうでしたね」
「お名前は最初にお聞きしましたが」
「詳しくは話していなかった」
 それで今話すというのだ。
「だから話させてもらう、いいか」
「はい、それで」
「お願いします」
「私の名前はハラーイム=ザッハラーム。パキスタン陸軍の大佐だ」
「あっ、軍の方だったんですか」
「そうでしたか」
「そうだ、参謀本部所属だ」
 所属場所もだ、ザッハラームは二人に話した。
「これだけ言えばわかるな」
「はい、参謀ですね」
「それが貴方の役職ですね」
「そうなる、そしてだ」
 ここでだ、もう一人出て来た。やはり口髭で浅黒い肌であ。だがザッハラームより十センチ程小柄で痩せている。そして軍服を着ている。
「車の運転等をしてくれるメフメット=アジュラーン伍長だ」
「宜しくお願いします」
 伍長と階級を呼ばれた彼が敬礼して来た。
「身の回りことはお任せ下さい」
「いや、自分のことは自分でやりますから」
「私もです」
 二人はこうアジュラーンに返した。
「車の運転も」
「そちらもやらせてもらいます」
「それならサポート役になるな」
 ザッハラームは二人の言葉を受けてこうアジュラーンに言った。
「では伍長、そういうことでだ」
「わかりました」
 アジュラーンはきびきびとした動作で敬礼しザッハラームに応えた、そうして本郷が運転する軍用の車でだった。
 一行はその村に向かった、その道中でだった。
 ザッハラームがだ、二人にこう話した。
「その村だが」
「はい、どうして死人ばかりになったのか」
「そのことですね」
 運転する本郷と助手席にいる役が二人に応えてきた、アジュラーンはザッハラームの横に背筋を立てて座っている。
「病気ですか?」
「それとも何か他に原因が」
「原因はもうわかっている」
 それは既にとだ、ザッハラームは答えた。
「村に一人の老婆が来てだ」
「ああ、その老婆が」
「死人使いですね」
「そうだ、ただその老婆の素性は全くわかっていない」
 このこともだ、ザッハラームは言うのだたt。
「何もな」
「何も、ですか」
「その老婆のことは」
「そうだ、しかしその老婆が来てからだ」
「村がですね」
「変わったのですね」
「君達には村の死人達を土に戻してだ」
 イスラムは土葬だ、それで死んでもその肉体が残るのだ。言うまでもなくパキスタンはイスラムの国である。
「そしてその老婆もだ」
「老婆もですね」
「倒せと」
「それでだ」
 そうしてもらいたいからこそ、というのだ。
「君達に仕事を依頼したのだ」
「その婆さんが只者ではないから」
「死人使いだからこそ」
「軍は通常の仕事は出来る」 
 戦争や災害救助、そうしたことはだ。
「しかし妖怪だの悪霊だのはな」
「軍の仕事ではない」
「そういうことですね」
「本来なら我が国の呪術師なりに頼むのだが」
 それが、というのだ。 
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