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ロックマンX~朱の戦士~

作者:setuna
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第六十八話 Sigma Virus Maze-Cyber Maze Core-

 
前書き
エックス達がシグマと対峙する。 

 
エイリア「これは!!?」

ハンターベースにてエイリアが顔色を変え、立ち上がる。

アイリス「ポイント11F5646、更に強力なエネルギー反応!!エネルギーが強すぎて正確なデータが取れません…これはシグマ…きっとシグマです…最初から全てシグマの仕組んだ罠だったんです!!」

アイリスが叫んだ正にその時、エックス達がシグマが対峙していた。


































シグマ「ククク…流石最強のレプリロイド達だ……。予想以上に来るのが早かったな…」

エックス「シグマ…」

ルイン「……」

エックスは憎悪で胸が熱くなるのを感じた。
ウィルスで同胞達を狂わせ、地球滅亡を企てた男。
憎悪が胸の中で膨れ上がった。

ルイン「何のために…何のためにこんなことをしたの…!!?」

シグマ「ゼロだ…ゼロの目を覚ますためだ…」

エックス「何だと!!?」

シグマは含み笑いをし、邪な心で濁った瞳でかつての部下であり、宿敵を見据えた。
彼の瞳にはエックスとルイン…そして微かに動揺したゼロが映っていた。

シグマ「あれからお前達を少々研究してな。素晴らしい事実が分かったのだよ。特にゼロ…お前にはお前の真の姿を教えてやりたかった…」

ゼロ「真の姿…だと?」

僅かに鼓動が早くなる。

シグマ「お前のことにやたら詳しい老人がいてな、今のゼロは本物のゼロではない…そんなことを言うのだよ」

ゼロ「下らん、何を言って…」

反論しつつ、ゼロは背筋が冷たくなるのを感じた。
この男は自分の何を知っているのだろう?
自分に詳しい老人とは誰なのか…。

シグマ「どうしてもお前の真の姿が見たくてな…ウィルスを地上にばらまき、お前の身体を清めようとした。感じただろう?ウィルスで力が漲るのを…」

ゼロ「黙れ…」

脳裏にあの声が蘇る。

“ゼロ…目を覚ますのじゃ…”

ゼロ「黙れええええ!!!!」

ルイン「ゼロ!!しっかりして!!シグマ、これ以上ゼロを惑わさないで!!」

OXアーマーに切り換え、バスターショットをシグマに向けるルイン。
しかしシグマは構わず淡々と語り続ける。

シグマ「だがウィルスの量が足りなかった。そこであのオンボロのコロニーをウィルスコロニーとして地球にドッキングさせ、ゼロウィルスを生み出させた。結果はこの通り…いくらウィルスを浴びせても、ゼロは本来の姿を取り戻さなかった。まあ、多少の損害は与えられたようだがな…何体かのレプリロイドはイレギュラー化し、お前達に倒された…ククッ」

エックス「許せない!!お前のせいでどれだけの仲間が…!絶対に許さない!!」

死んでいった同胞達の顔が脳裏を過ぎった。
気高く誇り高かった彼らがこの男のせいで死んだのだから…。

シグマ「唯一予想外だったのはルインがウィルスを取り込んでゼロ同様にパワーアップしたことだ」

ゼロ「何だと…?」

シグマの言葉にゼロはルインの方を見遣る。

シグマ「ルイン、お前は一体何者なのだ?あの時のお前のエネルギー反応はゼロに近い…いや、ゼロそのものだった。あの老人も不思議がっていた…」

ルイン「………」

エックス「ルインはもうあんな風にはならない!!戯れ言を言うのは止めろシグマ!!」

黙り込むルインに代わってエックスが叫んだ。
シグマもルインにあまり興味がゼロほどないためか、再びゼロを見遣る。

シグマ「ゼロ、もう1度聞く。真の姿を、真のパワーを手に入れたくはないか?」

シグマはそう言ってゼロに手を差し延べた。
悪魔の手を。
よもやゼロがシグマの手を取ることはあるまいが、ゼロウィルスや先程のゼロの反応がエックスやルインに疑念を抱かせた。

ルイン「(ゼロ…惑わされないで…君は君なんだよ…?)」

ゼロ「…俺は俺だ。今の俺に…イレギュラーハンターとしての俺に何の偽りもない」

エックス「ゼロ…」

親友の言葉にエックスとルインは笑みを浮かべるとそれぞれが武器を構えた。

エックス「ルイン、ゼロ。この戦いを終わらせる!!」

ルイン「うん!!」

ゼロ「今度こそシグマを倒す!!」

シグマ「愚かな…」

シグマは嘲笑うとマントを脱ぎ捨てた。
現れたのは白と黒を基調とした精巧なボディ。
今までな防御力と攻撃力を追求した物とは違い、機動性を重視した細身のボディ。
ただどんなに姿が変わっても邪悪な気配だけは絶対に変わらない。

シグマ「喰らえ!!ヘルスパーク!!」

青い光弾を放つ。
上下する軌道を描いてやって来た。
エックスは咄嗟にガイアアーマーを身に纏い、ゼロとルインの前に出ると、防御フィールドを展開し、両腕を交差させ防御する。
ゼロとルインはダブルジャンプとエアダッシュを駆使して回避した。
シグマが次に行った攻撃は体当たりだ。

ルイン「喰らうもんか!!三日月斬!!」

単純な軌道。
そのようなもの簡単に回避出来る。
ルインはシグマの体当たりをかわすと回転斬りで背中に傷をつける。

ゼロ「電刃!!」

怯んだシグマにゼロは間髪入れずに電撃を纏った斬撃を繰り出す。

エックス「この程度で済むと思うな!!ガイアチャージショット!!」

零距離で放たれたガイアチャージショットを受けてシグマが吹き飛んだ。

ゼロ「やるぞエックス!!ルイン!!」

エックス「ああ」

ルイン「うん!!エネルギー、フルチャージ!!」

エックス「トリプル!!」

ゼロ、ルイン、エックス「「「クロスチャージショット!!」」」

エックスはガイアアーマーからレプリカフォースアーマーに切り換えた状態で放った。
巨大な砲撃は例えシグマと言えどもまともに受ければただではすまない。
シグマはそれを回避すると光弾を放つ。
そしてエックス達が回避したのを見てシグマは掌に凄まじいエネルギーを纏わせた。

シグマ「ヘルブレイド!!」

凄まじい破壊力を秘めた衝撃波を繰り出すシグマ。

エックス「がはあ!!?」

咄嗟にレプリカフォースアーマーからガイアアーマーに切り換え、防御フィールドを展開したガイアアーマーの防御力ですら、ものともせずエックスを吹き飛ばす。

ルイン「エックス!!」

ゼロ「断地炎!!」

炎を纏ったセイバーを下に構えて急降下するゼロ。
それはシグマの左腕を切断し、傷口まで焼け焦がす。

シグマ「ぐっ…小賢しい真似を…!!」

ルイン「滅閃光!!」

拳を床に叩きつけ、滅閃光をシグマに喰らわせる。
しかし、シグマもやられるだけではない。
片腕だけでエックス、ルイン、ゼロを相手取る。
ウィルスを身に纏い、更に攻撃は激しさを増していく。

エックス「くっ!!」

シグマのヘルブレイドの衝撃波をかわしながら、ファルコンアーマーに切り換える。
そしてチャージを終えたバスターを向ける。

エックス「スピアチャージショット!!」

高い貫通力を誇るスピアチャージショットはシグマのヘルブレイドすら貫き、シグマの腹部を貫いた。

ルイン「これで…」

ゼロ「終わりだ!!」

ルインとゼロが一気に駆け、シグマに斬撃を浴びせた。
剥き出しとなった回路が火花を立て、引火する。
瞬く間に炎が広がり、シグマの巨体を焼き尽くした。
シグマは燃え盛る炎の中で立ち尽くし、一瞬ニヤリと哂った。
直後轟音とまばゆい閃光を伴って爆発した。
残骸はない。
爆発はシグマの全てのパーツを破壊し尽くしたようだ。

ルイン「やったの…?」

ゼロ「いや…まだだ…」

冷静なゼロがいち早くシグマの殺気を感知した。
モニターが停止し、辺りが闇に染まる。
漆黒の闇の中から不気味な笑い声がした。

シグマ「クククッ…やはり強いな…流石は最強のレプリロイド達……それだけ強いとどうしても倒したくなる……」

ルイン「シグマ…」

ゼロ「まだくたばってないか…」

エックス「何処だ?何処にいるシグマ!!」

3人が辺りを見回しながら言う。

シグマ「ここだよ。逃げも隠れもせん…」

光源が徐々に光を増し、巨大な姿を映し出した。

シグマ「実はな、今回よきパートナーがいてな…色々とサポートをしてくれたのだよ。コロニー衝突の計画もあの男の勧めだった。過去に数え切れない程のロボットを造ったらしく、今から見せる最強のボディも与えてくれた。お前達が来るのが早かったので未完成だがな…まあ、これで充分だ。頼もしいパートナー、いや、同士だった。誰よりもお前達に対する執着心…頼もしかったよ…そしてエックス…私以外にいたのだよ…お前を憎む人物が…」

エックス「何だと…?」

シグマ「ゼロが良く知っているはずだ…。夢で会っただろう?100年分の憎しみを喰らうがいい!!死ね、エックス!!」

シグマの巨大な拳がエックスに迫る。

エックス「ここでお前にやられる訳にはいかないんだ!!プラズマチャージショット!!」

エックスは拳を避け、逆に利用してシグマの弱点を狙う。
レプリカフォースアーマーをアルティメットアーマーに変化させ、プラズマチャージショットをシグマの額にある球体に喰らわせる。
球体がシグマのアキレス腱だ。

シグマ「流石だな!!即座に弱点を見抜くとは!!」

ゼロ「お前のやることなどお見通しなんだよ!!ダブルチャージショット!!」

距離が離れているゼロはダブルチャージショットで球体を狙う。

ルイン「喰らえシグマ!!」

ルインもゼロに合わせるようにチャージセイバーを喰らわせる。

エックス「喰らえ…ガイアショットブレイカー!!」

アルティメットアーマーからガイアアーマーに切り換えたエックスは零距離で球体に強烈なエネルギー弾を放つガイアショットブレイカーを喰らわせる。
エネルギー弾を受けてシグマの球体が痛々しい音を立てる。

シグマ「ぐっ…だが、この程度で私を倒せると思うな!!」

シグマが拳をエックスに繰り出すが、エックスはガイアアーマーからファルコンアーマーに切り換えて空中へ回避する。

シグマ「喰らえ!!」

額から電流の球体が放たれ、ルインに直撃する。

ルイン「ぐっ!!」

エックス「ルイン!!ぐあっ!!?」

直撃を受けたルインに気を取られたエックスは巨大な掌から放たれたウィルスショットをまともに喰らい、ファルコンアーマーが大破する。

エックス「しまった…」

シグマ「隼の翼はもう羽ばたかん。これで貴様自慢の機動力は失われた。」

エックス「チッ!!」

ファルコンアーマーは機動力に特化したアーマーであるために非常に軽い。
防御力も通常時よりも少々上程度だ。
こうなったら防御性能に劣るアーマーでしかない。
エックスは大破したファルコンアーマーからアルティメットアーマーに切り換える。

エックス「(……危険だが何とかシグマに接近して俺の全エネルギーを叩き込むしかないか)」

バスターブレードを発現させ、シグマを睨み据える。

シグマ「ほう…まだ動けるか……我がウィルスを受けて…そうでなくては面白くない」

ルイン「(ルナから貰ったウィルスバリアがなかったらとっくにやられてた…)」

ウィルスダメージを半減させるウィルスバリアのおかげでエックスとルインのウィルスダメージは微々たるものだ。

ゼロ「(奴は攻撃力こそ凄まじいが奴自体は動けない、なら…)」

エックス達がシグマに対してそれぞれ武器を構えた。

エックス「行くぞ!!」

バスターブレードを構え、ゼロと共に弱点を狙う。
だが…。
ブレードとセイバーが空を切る。

ゼロ「消えた…!!?」

シグマはボディをプログラム化することで攻撃をかわした。

ルイン「そんな…これじゃあ攻撃が出来ない!!」

シグマ「終わりだ!!」

エックス達の周囲にシグマの邪悪な思念が具現化する如く紫色の立方体が現れ、彼らに向かって襲い掛かってくる。
エックスは咄嗟にガイアアーマーに切り換え、前に出た。
防御フィールドを展開し、両腕を交差させたが…。

バガアッ!!

粉々に粉砕される特殊合金の鎧。
途轍もない威力を全身に浴び錐揉み状態にエックスは硬い床面に強かに叩き付けられる。

エックス「ば、馬鹿な…ガイアアーマーまで…」

もし…この時、ガイアアーマーへの換装が遅れていたらと思うと背筋が凍る。
エックスはファルコンアーマーの翼とガイアアーマーの盾を失う。
ゼロとルインも粉々となったガイアアーマーを見遣り、その威力に戦慄した。
砕け散ったガイアアーマーを捨て、アルティメットアーマーを再び身に纏うエックス。

エックス「(何としてもまたあれが放たれる前にケリをつけなければ…)」

ルイン「くっ…ダブルチャージウェーブ!!」

弱点に向けて繰り出される連続攻撃。
しかし再びプログラム化され、回避された。

シグマ「甘いわ!!」

拳がルインに炸裂し、吹き飛ぶ。

ルイン「くっ!!」

両腕を交差させて防御するが、あまりの破壊力に防御したにも関わらず両腕が粉砕された。
シグマは両手を天に昇らせ、激しい電流を放った。
エックス、ゼロ、ルインは電流をまともに浴び、地に伏した。

ルイン「う…ううっ…」

エックス「ぐ…っ…」

電流を浴びたことで身体が麻痺し、まともに動けない。

ゼロ「エックス…ルイン…」

苦しみ、悶える友を前に自分は何も出来なかった。
腕は震え、身体はまるで言うことを聞かない。
自分の電子頭脳と身体が切り離されてしまった感覚すら覚える。

ゼロ「(こいつらをこんな所で死なせる訳には…俺の命を捨ててでもいい…こいつらだけは……)」

その時だった。
鼓動が高まり、力が漲ってきた。

ゼロ「(この感覚は…)」

“ゼロ…”

同時に老人の声が耳に響き、自分に語りかける声は優しげだった。
例えそれが自身を破滅に導くとしても。

“忘れたのか?…何をすべきか?”

ゼロ「(俺のするべきこと…)」

“…お前ならやれる…”

ゼロ「(俺は…)」

“目を覚ますのじゃ…”

ゼロ「俺は…!!」

再びゼロが立ち上がった。

ルイン「ゼ…ロ…?」

エックスとルインは朦朧とした意識の中、ゼロの異変を感じた。
強い闘気…。
だが禍々しさはない。
純粋に力のみが高まり、闘気がオーラとなってゼロを取り巻いていた。
目を覚ました自分達の知らないゼロ。
初めて見るゼロ。

シグマ「ゼロ…遂に覚醒したか!!そうだ、それでいい!!私は知っているぞ、お前が何のために造られたのか!!何をすべきか!!私とお前の目的は1つとなった!!さあ、一緒に…」

ゼロ「何を言っているシグマ。俺のすべきことはただ1つ…。エックス達を守ることだ!!そのためにお前を倒す!!」

シグマ「な、何だと!!?」

ゼロ「全てをゼロにするために与えられた“本当”の俺のイレギュラーとしての力…こいつらのためにならその力を使ってやってもいい。」

エックス「ゼロ…」

ルイン「………」

最初は頼りなかったのに今では自分と肩を並べられるくらい強くなった親友のエックス。
一度失い、そして自分達の元に帰って来てくれたゼロにとって大事な目の離せない妹のような後輩のルイン。
この2人がイレギュラーである本来の自分に負けない心をくれた。
何よりも大事で譲れない物。

ゼロ「そしてこいつらの帰りを待っている…懐かしい未来のためになら俺は…その未来に俺がいなくても構わない…だから、例え創造主がどんな目的で俺を造ったとしても、俺はこいつらを守る!!行け、真月輪!!」

バスターショットから2つの光輪が放たれ、シグマの頑強なボディを削る。

ゼロ「電刃零!!」

続いて放たれるセイバーの衝撃波。
シグマのボディに裂傷を刻む。
シグマも反撃するが、ゼロはそれをものともせず、真滅閃光を繰り出す。
イレギュラーとしての本来の全ての力を解放したゼロの力は凄まじかった。

ゼロ「喰らえ!!」

ゼロが放ったのは真月輪ではなくフルチャージショット。
ただし、ただのフルチャージショットではない。
フルチャージショットがシグマに迫るのと同時に分裂を繰り返し、単発から弾膜へとその規模を変える。
分裂したにも関わらず1発1発の威力が全く衰えてはいない。
それだけではなく再び電刃零が繰り出された。
バスターとセイバーの威力は通常時とは比較にならないくらいに飛躍的に上がり、覚醒によりボディ強度も上がったのかシグマの攻撃をものともしない防御力だ。

シグマ「ゼ、ゼロぉ…」

本来のゼロの力を絶え間なくまともに受け続けた瀕死のシグマが呻く。

ゼロ「一刀両断!!幻夢…」

ゼロが最後の一撃を繰り出そうとした瞬間、不意に攻撃が止まった。

ルイン「え…?」

鼓動が高鳴り、ゼロの身体がくの字に折れ曲がった。

ゼロ「(な、何が起こった…?)」

身体から力が抜け、目の前が真っ暗になった。

ゼロ「(意識が…こんな時に…)」

次の瞬間、ゼロは力無く倒れ伏した。

エックス「ゼロ…ゼローーーッ!!」

エックスは痺れる身体で絶叫した。
まだ動ける身体ではないのに関わらず必死に震える腕を伸ばした。

シグマ「ははは…愚かなものだ!!ウィルスに身を任せて覚醒すればよかったものを!!己の限界も顧みずに力を解放した。もう目を覚ますことはないだろう!!」

エックス「何!!?」

ルイン「嘘…ゼロが死ぬ…?」

シグマ「フハハハ…ゼロは死んだ!!次はお前達だエックス、ルイン!!」

シグマがエックスとルインに向けて電撃を放とうとするが…。

エックス「うおおおおお!!!!」

凄まじいエネルギーを身に纏いながら立ち上がる。
そのエネルギーは先程のゼロに匹敵するほど。
エックス最大の秘技、レイジングエクスチャージを発動したのだ。

シグマ「エックス…貴様…!!?」

エックス「ゼロは死なせない…お前を倒して…一緒に帰るんだ!!」

アルティメットアーマーのバーニアを展開し、エックスは全エネルギーを身に纏いながら突進する。

エックス「ノヴァストラーーーイクッ!!!!」

シグマ「ぐわああああああ!!!!!!」

レイジングエクスチャージで強化され、更に全エネルギーを込めたノヴァストライクの閃光に包まれ、絶叫するシグマ。
光の果てに現れたのは激しく破壊されたシグマの身体だった。
ルインは痺れる身体を叱咤し、落下するエックスの下敷きになることでエックスが床に激突するのを回避した。
アルティメットアーマーは先程のレイジングエクスチャージとノヴァストライクの反動に耐え切れず原形を留めないほど大破していた。
シグマは拳の片方を失い、顔は金属が所々剥き出しになり、苦悶の表情を浮かべていた。

シグマ「ぐっ…くそ…1人では…1人では死なんぞ!!ゼ、ゼロと…ゼロを道連れにしてやる!!」

ゼロを掴もうとボロボロの片手を動かした。

ルイン「止めて!!これ以上ゼロに手を出さないで!!」

両腕を失った彼女に戦闘能力はない。

エックス「止めろ…もうゼロには…」

エックスも負担が凄まじいアルティメットアーマーを装着した状態でのレイジングエクスチャージとノヴァストライクの反動で内部機関が深刻なダメージを負っていたために動けない。

シグマ「フハハハ…人が傷つくのは耐えられないだろう?お前達に与えられる苦しみは耐えられても…親友を傷つけられたら苦しいだろう?お前達の最も大事な親友を貰うぞ…共に地獄に堕ちる!!さらばだエックス、ルイン!!」

エックス「止めろおおおおっっっ!!」

爆発の轟音が木霊する。




































光源の大半が破壊され、薄暗い闇の中にゼロが横たわっている。
上半身のみ形を残して。
瞳は閉ざされていた。
半身を失い、意識のないゼロ。
閉ざされた瞳はもう2度と開かないのではとエックスとルインにそう思わせた…。

ルイン「ゼロ!!」

エックス「しっかりするんだゼロ!!まだ死んではいけない!!聞こえるかゼロ!!?」

悲痛な叫びが響く中、微かに機械が稼動する音がした。

「シ、シネェーー…」

ルイン「っ!!」

それに気づいたルインは咄嗟にエックスに体当たりした。

エックス「ルイン!!?」

体当たりを受けたエックスがルインを見遣ると彼女はゾンビと化したシグマに動力炉を貫かれ、ゼロに覆いかぶさる格好で勢いよく倒れた。
ゼロはルインが倒れたことによるショックで目を覚まし、目を見開いた。

ゼロ「ル…ルイン…」

エックスがビームの放たれた方向を見遣り、バスターをシグマに向けた。

エックス「シグマーーーッ!!!!」

怒りに満ちた最後のフルチャージショットの一撃はシグマを完全に破壊した。
同時に空間が揺れ始めた。

エックス「シグマと一緒にこの空間も崩れるのか…?」

ゼロ「エックス…聞こえ…るか?さ、最後まで…あ、甘さが出たな…」

エックス「ゼロ…俺にもっと力があれば…ルインもこんなことに…」

優しさ。
それはエックスの強さでもあり弱さでもある。
ルインを1度失い、次に再会した時には甘さが大分抜けていたが、それでも最後まで優しさを失わなかった。

エックス「ゼロ…早くここを脱出しなければ…」

ゼロ「いや…俺はここで消えないと駄目みたいだ……俺がいる限り…血塗られた歴史は繰り返される……」

意識を失った時、かつての記憶を見た。
自分の創造主。
自分のこと。
そして自身の体内にある悪魔の種の存在を…。

エックス「そんな…何を言ってるんだゼロ!!?」

ゼロ「エックス…ルインを連れて早く脱出するんだ…そして生き延びろ……」

エックス「ゼロ、君も一緒に…」

ゼロ「もう、いいんだ…エックス。後は…頼んだ…」

次の瞬間、空間が崩れ、瓦礫がエックス達に降り懸かる。

エックス「うわああああーーーっ!!!!」

金属の塊が頭を打っても、瓦礫が周りに散乱しても、エックスは決してゼロとルインを手放したりしなかった。

エックス「ゼロ…ルイン…帰ろう…3人で一緒に……」

零空間の爆発はその凄まじさを強め、エックスの意識は刈り取られた。



































朝焼けの空が広がっている。
まだ高度のない太陽が静かに照らしている。
美しい空と打って変わって、地上は零空間の建物の無残な残骸が散乱していた。
エックスとルインは零空間があった場所から少し離れた場所で寄り添うように倒れていた。
ゼロはいない。
2人だけが日の光を浴びていた。
その2人もまた残骸と呼ぶに等しい状態であった。
下半身を失い、ボロボロになって倒れ、瞳を閉ざしている。
もう目覚めることはない。
レプリロイドの修理を行う者ならば、皆さじを投げそうな状態。
2人の表情はとても穏やかだった。
戦いに疲れた彼等はまるで眠っているかのようだった…。

「まだじゃ…」

2人の傍らに青白い光が浮かび、ライト博士の姿を作り上げた。
ライト博士は慈父の眼差しで穏やかに眠るエックスとルインを見下ろす。

ライト「もうゆっくり休ませてあげたいが…後少しだけ…頑張っておくれ…エックス…そしてルイン…君の記憶を少しだけ呼び覚まそう…」

ライト博士が触れると、エックス達の身体が元通りになっていく。



































太陽が天に昇り、柔らかな日差しを受けた2人が目を覚ました。

エックス「ん…俺は…」

ルイン「あれ…?私は…」

起き上がり、2人は両手を見つめた。
手も、足も、ルインに至ってはシグマに貫かれたはずの胸部も無傷。
最初から戦いなどしなかったかのような、煌めくボディ。
確かに戦いはあった。
現に目の前には夥しい残骸が転がって、白日にさらされていた。
あの爆発から2人は奇跡的に生き残ったのだった。

エックス「ゼロは…ゼロは何処だ!!?ゼローーーッ!!」

ルイン「ゼローーーッ!!」

ゼロの姿はどこにもいなかったが…。 
 

 
後書き
シグマ撃破。 
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