とある3人のデート・ア・ライブ
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第四章 炎
第9話 遊園地
前書き
最近忙しくてあんまり書けないです……
一方「(遊園地……か)」
一方通行は士道と琴里の遊ぶ姿をベンチに座りながら見ていた。まるで兄妹を見守る保護者のように。
なぜ、こうなったのか。それは少し前にさかのぼる。
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ーー
ー
一方通行と話終えた後、シドーはトボトボ歩いて、十香達がご飯を食べていた席に戻って行った。
十香「おお、シドー。遅かったな」
士道は何も言わずに席に座る。
十香「シドー?」
四糸乃「どうか……しましたか?」
2人の問いに、応と首肯する。
士道「ん。実は今からプールのジャングルツアー……ボートに乗ってエリア中を流れるプールをぐるりと1周するっていう冒険コースがあるらしい……どうする?」
十香「おおー。行く!行くぞ!……む?シドーは行かないのか?」
十香が首を傾げた。
士道「俺はちょっと琴里と用があるんだ」
十香「そうか……よし、四糸乃!一緒に行くぞ!」
四糸乃「は、はい……!」
と2人+1匹は駆け足で向かった。
その直前に四糸乃がふっと首を回し、「……がんばって、ください」と言った。
琴里「ちょっと時間をとりすぎたわね」
琴里は士道から見えない位置でそう呟いた。
一方「………」
そこには近くの壁にもたれかかり、腕を組む一方通行も一緒だった。
琴里「そんなに睨まなくても大丈夫よ。無理はしないから」
一方「……説得力ゼロだけどな」
琴里は一方通行から視線を外して、小さい声で話しかける。
琴里「ねぇ、一方通行」
一方「……あァ?」
一方通行もそれにあわせて、琴里だけに聞こえるような声で返事をする。
琴里「もし……私のせいで……士道に危険が迫ったら、その時は士道を守ってくれる?」
その言葉は、
本当に士道を心配しているような声だった。
一方「……その言葉は、上条や佐天の前では言うンじゃねェぞ」
それを聞いた琴里はふっと笑い、士道のところへ向かった。
琴里「あの2人は?」
士道のところへ向かった琴里は十香と四糸乃がいないことに気がついた。
士道「琴里。今すぐ着替えて、アミューズエリアに集合だ」
琴里「は?………あぁ。〈フラクシナス〉から指示が出た?こっちじゃ上手くいきそうにないから遊園地に変更ってこと?」
士道「いいや」
そして、右耳に手を当て、そこに装着されていたインカムを外し、テーブルの上に放った。
琴里「……っ、士道?」
意外すぎる行動に眉をひそめる。
士道は、落ち着いた声で続けた。
士道「俺、実はプールより遊園地の方が好きなんだ」
琴里「はぁ?」
士道「遊ぶんだよ。疲れて眠っちまうぐらいまであそびまくってやる。覚悟しとけよ、琴里」
琴里「は、はぁ……」
訳がわからないまま士道に手を引かれていった。
令音『というわけだ、一方通行。君も彼女達に同伴してくれないか?』
プールから出てきた一方通行はどこかのベンチに座り、缶コーヒーを飲みながら、右耳のインカムから聞こえる令音の言葉を聞いていた。
一方「なンで俺に頼む?そもそも、あいつらのデートに俺が一緒にいたら邪魔だろォが」
令音『あくまで君は保護者として動いてくれればいい。適当にベンチに座って2人のデートを見てくれても構わないさ』
令音は一拍間をおいて続けた。
令音『あと、君に頼んだ理由は単純に君がそこに一番近いからだ』
そりゃそうだろう。一方通行が顔を右に振り向けば、そこは遊園地のゲートが見えるのだから。
一方「チッ……」
一方通行は舌打ちしつつも、立ち上がり、缶コーヒーをゴミ箱に捨てて、コツ、コツ、っと杖がつく音を響かせながら遊園地へのゲートへと向かった。
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ーーー
ーー
ー
そんな経路があり、一方通行は士道と琴里の遊ぶ姿を見ているのであった。
一方「………」
楽しんでいる。
心の底から笑っている士道も。
不機嫌な顔をしている琴里も。
この光景を見ると、今が平和だと心の底から感じる。
そして同時に思ってしまう。
学園都市に来る前に、自分にはこんな経験があったのか。
そもそも兄弟がいたかすら分からない。
親の顔も覚えていない。
自分の名前すら分からない。
今更こんなこと、どうでもいいはずなのに……
いや、
自分もどこかで願っているのかもしれない。
もう一度だけ、あんな無邪気に遊びたい……と。
今更もう遅い。
年齢もあるし、何より杖をついている。
だから、
だから……
自分を犠牲にしてまでも、あいつらの笑顔を守りたい。
これが、一方通行自身が出した結論である。
一方「くだらねェ……」
そんなことを呟きながらも2人を見守る一方通行であった。
一方「(そォいや……)」
ふと、一方通行は思ったことがあった。
一方「(佐天はどこにいるンだ?)」
佐天涙子も、士道達と同様にプールの外に出ていた。
佐天「あなたは……?」
そして、『ある人物』と会っていた。
一方通行は遊園地には釣り合わない杖をつきながら歩いていた。
一方「(見失ったと思ったらあンなところにいたのか……)」
ベンチに仲良く座る士道と琴里を見つけた一方通行は、少し離れた位置のベンチに座った。
士道は疑問に思っていた。
5年前、折紙の両親を殺したのは、本当に琴里なのだろうかと。
士道「琴里」
琴里「な、何よ」
士道「琴里。お前は5年前ーー」
と言いかけた瞬間、士道の周りの音が少し遠くなるのを感じた。
自分の周りに目に見えない壁……まるでASTの『随意領域』のような……
士道「え……?」
次いで、上方から目の前、琴里のいる場所に、何かが落ちてくるのが見えた。
次の瞬間、
凄まじい爆発音が響き渡り、目の前は炎で埋め尽くされた。
士道の身体は周囲に展開した壁が爆風を完全に防いでいたのだが、その外側にいた琴里は……
士道「琴里!」
叫ぶ。
そして、外側に出ようとするが、見えない壁は士道の力程度ではビクともしなかった。
士道は上方からの視線に気づいた。
バッと顔を上げるとそこには、
士道「っ、折紙……」
空には、ワイヤリングスーツにCR-ユニットを纏った鳶一折紙が浮遊していた。
折紙「士道。ここは危険。離れていて」
まるで折紙の身体を包み込むような形をした巨大ユニット。
間違いない。今琴里を撃ったのはこの少女だった。
『う……わぁぁぁぁッ!?』
一拍おいて周囲の客たちも異常事態に気づいたらしい。
だが、士道は動かず、空に浮いてる折紙を睨み付ける。
士道「折紙!おまえ、今何をしたのか分かってるのか……ッ!?」
士道が叫ぶと、折紙は静かに首を前に倒してきた。
折紙「……五河琴里を殺した」
そのあまりに簡素な物言いに、士道は全身を震わせた。が、
一方「ったくよォ……勝手に人を殺すなよなァ……まあ、死んだって言われたのは俺じゃねェけどよォ……」
琴里「そうね。殺した、ね。随分とお手軽に言ってくれるじゃあないの」
琴里のいた方から不適な声が2つ聞こえると同時に、そこにあった煙が巻かれるように霧散する。
その中心には、チョーカーのスイッチをONにして、琴里を守るように前に立っている一方通行と、その後ろで焔の壁を展開している琴里の姿があった。
琴里「ふう……って、一方通行。前に言ったと思うけど、私は焔の壁があるから守らなくても大丈夫だって……」
琴里の言葉を遮るように、一方通行は口を開いた。
一方「俺もさっき言ったはずだぜ。説得力がねェとな……」
琴里「でも、私のせいで士道が危険になったら士道を守ってって言ったでしょ?」
一方「俺はその言葉に肯定はしてねェからな」
琴里「……ま、いいわ。向こうの彼女は士道を守ってくれたみたいだし」
と言って2人はほぼ同時に空を見上げる。
そして、
琴里「〈灼爛殲鬼〉」
そう言うと、琴里の身体が霊装に包まれた。
その姿を見た折紙は、
折紙「見つけた……ようやく!」
凄まじい形相になったかと思うと、我を忘れたかのように琴里に向けて砲撃を放った。
だが、相手が悪かった。
凄まじい風の渦が折紙に向かっていく。
随意領域を展開して、攻撃自体は防いだが、それでも数メートル後ろに吹き飛ばされた。
一方「ほォ……その防御結果みてェなヤツ、なかなか硬ェな」
風の渦を出したのは一方通行だ。
折紙が繰り出した砲撃も一方通行と琴里には効かなかった。
折紙「はぁ、はぁ……」
折紙が武装している『ホワイト・リコリス』は威力は強いが、その分体力の消耗が激しい。
折紙は既に肩を揺らして息をしている。
琴里「くっ……」
その一方で、琴里も左手で頭を抑えて苦しそうにしている。
先ほど、プールの片隅で目撃してしまった光景。それと同じ症状だ。
一方「力を使いすぎだ」
それを見た一方通行が少し呆れたように言った。
琴里「うるさいわね。こっちだってこんなに早く『コレ』がくるとは思わなかったのよ……」
琴里も反論するが、自分自身も少し驚いていた。
一方「テメェはここで休ンでろ。適当にヤツを倒してくる」
と言うと、背中から左右に数メートルの天使の翼を生やし、折紙の方へ飛んで行った。
折紙「くっ……私の狙いはその女。邪魔するなら排除する!」
折紙は再びユニットから砲撃を繰り出す。
しかし、反射の前ではそんなもの意味がない。
折紙「……!」
すぐさま随意領域を展開しようとするが、
それより早く、一方通行が折紙のふところまで来ていた。
飛んできた勢いを殺さず、折紙の腹を殴った。
武装しているとはいえ、手のベクトルを変えられたパンチの威力は凄まじいものだ。
折紙は後ろに吹き飛ばされ、そのまま落下していった。
そこには丁度、琴里がいた。
琴里「戦えないのならあなたはもういらない」
琴里は『砲』を折紙に向けて構えた。
その筒に、炎がどんどん吸い込まれていく。
と、
折紙「そうやって殺したの?5年前のお父さんとお母さんを!」
折紙が最後の抵抗をするように言ってきた。
琴里「な、何を……?」
だがそのことの記憶がない琴里は同様して、『砲』を撃つのを躊躇ってしまった。
確かに、琴里には5年前に誰かを殺してしまったのかという疑念があった。
だが、その疑念が本当だったのか……
琴里「そん、な……私、は……」
その事実に気づいてしまった琴里は砲の筒をダランと落とし、地面に力が抜けたようにペタッと座ってしまった。
その隙に折紙の『ホワイト・リコリス』が再起動を開始していた。
折紙「今度は外さない!」
すると、琴里の周りを結界が取り囲む。
対象を守るためではなく、閉じ込め、致命的な攻撃を加えるための殺意の檻。
そのまま折紙が琴里に狙いを定める。
だが、
その前に立ちはだかる1人の男。
折紙「なんであなたが邪魔をする?……一方通行!」
彼は、琴里を守るようにして立っていた。先ほどと同じように。
一方「悪ィが、俺は一度守ると決めたヤツは何が何でも守るって誓ってンだ」
自分自身の罪。
それを少しでも償うために。
彼なりの決意である。
士道「折紙!やめてくれ!」
その様子を見ていた士道もたまらず、琴里の前に出て来て琴里を守るように立った。
折紙「……っ、士道。邪魔をしないで」
士道「そんなわけにいくかッ!」
2人は睨み合っている。
どちらも譲れない戦い。
復讐とそれを防ぐ者の戦い。
一方「くっだらねェ……」
その言葉を聞いた士道と折紙が過剰に反応した。
士道「くだらない……?どういうことだ!?」
士道は完全に怒っている。折紙も顔には出していないが恐らく怒っているだろう。
だが、一方通行はごく当たり前のような口調で話し始めた。
一方「テメェらが何にキレたかは知らねェが、テメェらの争い自体がくだらねェって言ったンだよ」
士道「……だから、どういう意味だよ」
一方「そのまんまの意味だ。復讐ごときで、こんなくだらねェ争いをすンなってことだ」
折紙「……ふざけないで!私の気持ちも知らないくせに!」
一方「かもな。でもよォ……それであンたの両親が本当に喜ぶと思ってンのか?」
折紙「……っ」
折紙の顔が少し歪んだ。何を考えているのかは分からないが、動揺していることは分かる。
一方「テメェがそう思ってンのなら俺は止めはしねェよ。ただこれだけは言っとく」
少し間を開けて、一方通行は言った。
一方「テメェが復讐のために五河琴里を殺したなら、テメェは一生一人だ。誰にも頼られず、周りから避けられ、一生後悔する人生を送ることになるぜ」
折紙は黙って聞いていた。さっきまで争っていたのが嘘のように。
一方「テメェみてェな、光の人間は普通の人生を送ってりゃそれでいい。俺みてェな……闇の人間のよォなクソッタレな人生を送るンじゃねェぞ!」
昔の一方通行ならこんなことは言わなかっただろう。
だが、これは彼の成長であり、本来の心である。
折紙「ふざけ、ないで……ッ!」
一方通行の説得も虚しく、折紙は琴里に攻撃を開始した。
一方「士道!テメェは琴里を安全な場所に避難させとけ!」
士道「!……分かった!」
士道が琴里を担いで一方通行と折紙から見えない位置に行く。
その間にも『ホワイト・リコリス』の左右の手からミサイルが飛んでくる。
一方通行が反撃しようとした、その時、
折紙と一方通行の間に、凄まじいスピードの突風が起こった。
ミサイルは突風により、全て左方へと吹き飛ばされ、そのまま地面に落下していった。
こんなことができるヤツは一方通行を除いたらただ1人だけ。
佐天「大丈夫ですか!?」
佐天涙子だ。
彼女は自分の周りの気流を操作して飛んでいる。
そのまま一方通行の隣に立った。
一方「……どこへ行ってたンだ?」
佐天「えっと……ちょっと知り合いに会ってて、そのままみんなを見失ってしまって……」
明らかに言い訳っぽい言い方だったが、今はそんなことを追求している暇はない。
折紙はこの間にも反撃のチャンスを狙っている。
すると、
自分の周りに結界が展開された。
さっき琴里にやってみせたような、薄緑色の膜を。
それは佐天にもやられていた。
一方「(この程度の膜なら普通に壊せれるが……)」
上を見上げると、折紙は肩で息をしていて疲労があるのが見える。
だが、彼女はこの程度では止まらない。
折紙「くっ……」
苦しそうな表情だったが、それでも前に進む。
そのまま右手に緑色に光る剣らしきものを出した。
それで攻撃してくると思ったその時、
十香「はぁぁぁぁ!!」
その剣を切り、折紙も吹き飛ばした。
十香だ。
隣を見ると四糸乃とよしのんもいる。
一方「……ハッ!ヒーローは遅れてくるってか!」
一方通行は自分の周りに展開されている膜をベクトル操作を使い、それを一瞬で破った。
上方を見ると、十香と四糸乃とよしのん、そしていつの間にか膜から抜け出した佐天が折紙を引きつけている。
一方「……俺の出る幕はもうナシって訳か……なら、あいつらの様子でも見に行くか」
彼は自分が杖を置いていたベンチに向かって歩いていった。
折紙「くっ……」
折紙は苦戦をしていた。
相手は3人。
主に攻撃しているのは十香だったが。
十香「忘れたのか!貴様がシドーにしたことを!」
十香が叫ぶように言う。
それは、十香が精霊の力を封印される前のこと。
十香「私はあの時とても嫌な気持ちだった……今度はシドーに同じ気持ちを味あわせる気か!!」
それは、十香の怒りでもあり、折紙を思いやる気持ちだと、佐天は素直に思っていた。
士道は琴里と一緒に砲撃の来ない場所に避難していた。
琴里を座らせ、両肩を掴んで真剣な眼差しで言う。
士道「琴里」
琴里「は、はい」
士道「琴里、お前は俺の自慢の妹だ。もうどうしようもないぐらい大好きだ。愛してる!……琴里、お前は俺のことが好きか?」
琴里「そんなこと急に言われても……」
士道「琴里!」
琴里「っ!好き!私も好きよ!お兄ちゃん大好き!世界で1番愛してる!」
と琴里が叫ぶと、士道は意を決して琴里の唇に自分の唇を触れさせた。
一方「(どォやら封印は成功したよォだな……)」
それを壁越しに聞いていた一方通行がそこにいた。
折紙の方を見ると、『ホワイト・リコリス』とともに、地面に落ちていた。
どうやら折紙の暴走を止めることに成功したようだ。
一方「(……ン?何であいつがあそこにいるンだ……?)」
彼は、遠くのビルの屋上に知り合いを見つけた。
そして、チョーカーのスイッチをONにして、飛んでいった。
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