少年少女の戦極時代Ⅱ
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禁断の果実編
第106話 舞とヘキサ、ヘルヘイムへ
「……ごめんなさい、舞さん」
ぐす、と軽く鼻をすすりながら、光実は気まずげに口にした。
「いいよ。仲間じゃん、あたしたち」
光実は、はにかんだ。小さくとも、ようやく彼の笑顔を見られて、舞も嬉しかった。
「――ねえミッチ。もうこんなことはやめよう?」
光実は泣き濡れた顔を上げ、舞を見返して来た。
「一人で抱え込まないで。あたしたちにも話してよ。ミッチの助けになりたいの」
「……舞さんはいつだって、目の前のことに一生懸命ですね。役立たずだった僕とは大違いだ」
役立たずなどではなかった。リーダーの裕也が行方不明になってからもチーム鎧武を支え続け、紘汰が抜けた時は自らアーマードライダーに変身までした光実が、役立たずであるわけないのに。舞にはそれをどう言葉にすればいいのかが分からない。
「そんな舞さんが大好きでした。いいんですよ。僕のことは気にしなくて。舞さんが目の前から目を逸らさないから、僕はもっと先のことを見据えようと思った。この世界がどうなるか弁えた上で、今必要なことをやるんです。誰に理解されなくたって」
「あたしじゃ、力になれないの?」
光実は答えず立ち上がった。
「一つだけ、お願いしてもいいですか?」
「なに!? 何でも言って」
「行ってほしい所があるんです。本当は碧沙だけのつもりだったけど。――付いて来てください」
光実がオフィスを出た。
ヘキサにも無言で促され、舞は渋々一歩を踏み出した。
連れて行かれたのは、壁が全て赤く塗られたホールだった。床はヘルヘイムの植物が覆い尽くしていた。
恐る恐る進めば、中には大木の根が据え付けられ、樹肌に大きなクラックが開いていた。
「ヘルヘイムに行くの?」
「ええ。今最も安全な場所へ。オーバーロードにも穏健派っているんですよ。大丈夫。絶対悪いようにはさせませんから」
光実は背中を向けてクラックを跨ぎ、“森”を歩き出した。急いで追わないと見失ってしまう。
「行きましょう、高司さん」
「うん――」
ヘキサの一回り小さな手を握り、舞もまたクラックを越えて歩き出した。
『何の用だ、少年』
辿り着いたのは遺跡。そこには舞が見たこともないインベスがいた。言われずとも分かる。この白いインベスはオーバーロードだ。今まで見て来たインベスとは格が違う。
白いオーバーロードの傍らには、石の棺。そして、それに繋がる無数のコードと装置。
「人間を見極めたい。そうあなたは言ったよね。そのために彼女とこの子を連れてきた」
『ほう?』
「レデュエは僕に人類の支配を任せた。その僕が、価値を認める人間が、この二人だ」
『それを私に委ねると言うのか』
「レデュエは信用できない。そして僕には二人を守るだけの余力がない」
『ジュグロンデョはともかく、私がそちらの少女に守るだけの価値を見出すと思うのか?』
「あなたは誇りを重んじる王だ。罪のない者を殺めたりしない」
王と呼ぶ相手に、光実は不退転のまなざしで語りかけた。チーム鎧武では一度も見たことがない、厳しい表情だった。
『よかろう。一度はレデュエを出し抜いたことに免じて、この少女らは預かろう』
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